合同会社バックアップ
Blog

ブログ

スクラッチ開発・パッケージ開発(SaaS)の違い比較表と、導入の決め手をご紹介

アプリで失敗しないためのポイント
2024.06.21
Contents
目次を非表示

    BackApp では、クライアントが新規アプリ事業でやりたいこと・予算などに応じてさまざまな開発手法をご提案および採用しています。

    近年では「パッケージか、フルスクラッチ(完全オーダーメイド)か」という二択ではなく、さまざまな開発手法が普及しています。ですので、パッケージを扱う開発手法の中でも 「ローコードとノーコード、スクラッチとフルスクラッチって何が違うの?」などといったお問い合わせをいただくことも多くなってきました。

    そこで、本記事ではすべての開発手法・契約パターンでアプリ開発を行っている制作会社の視点で、それぞれの開発方法のメリットやリスクの違いを比較していきます。

    1. iOS/Android アプリ開発で用いられる手法

    本記事では、下記の4つの開発手法を比較していきます。

    開発手法 概要 開発期間
    ノーコードサービス 他社のパッケージを契約し、プログラミング不要でアプリを構築 短期間でリリース
    ローコード開発
    ※ハーフスクラッチ
    基本パッケージを初期にカスタムし、独自アプリとしてリリースして追加開発もしていく 基本的には短い
    フルスクラッチ開発 パッケージなどの既存のものを使わず、ゼロからアプリを構築する 基本的に長い
    アジャイル型開発 最低限の機能でリリースし、公開後に追加開発していく トータルでは長いが、アプリのリリース自体は早い

    それぞれの手法に関する詳しい記事はこちら

    1-1. パッケージ(SaaS)を利用するノーコード開発とは?(作り方の話)

    導入企業がプログラミングをすることなく Web サイトや iOS/Android アプリを構築できるサービスを「ノーコードサービス」と呼びます。

    一般的には「ペライチ」「WIX」など、基本は無料かつ簡単な操作でホームページを作れるサービスが有名です。iOS/Android アプリ開発においては SaaS としてサービスを提供する企業と契約するケースがほとんどで、初期の構築作業も代行してもらうケースも多いです。

    ノーコード「開発」と呼ばれることもあるため、「結局はページの作成や更新で最低限のプログラミングが必要なの?」とご相談を受けることもありますが、作業としては GUI(ドラッグ&ドロップで要素を選択するなど)での操作で完結するツールが多いです。

    ですので、エンジニア・プログラマーや社内の情シス部門の助けを借りることなく事業部門や店舗・施設の拠点スタッフだけで画面を作成することが可能です。

    1-2. フルスクラッチ開発とは?(作り方の話)

    対して、フルスクラッチ開発とは既存のベースアプリ(パッケージ)を利用したりせず、完全にゼロからアプリ・システムを構築する手法です。技術力と資金さえあれば、やりたいことをほぼ実現することが可能といえます。

    また、フルスクラッチ開発の中でも

    • ウォーターフォール型:最初に仕様や開発計画を細かく決めておき、計画にしたがって順序だてて進めていく
    • アジャイル型:最初に厳密に決めきらず、走りながら作っていく
    • ハイブリッド型:セキュリティが重要な基幹部分はウォーターフォールでしっかりと作り込み、ユーザーを満足させるための機能はアジャイルで作っていく

    という 3 種類の手法があります。

    大規模なシステム開発では依然としてウォーターフォール型が主流です。しかし、近年ではアジャイル型やハイブリッド型も着実に増えているため、少し紛らわしいですが「アジャイル開発」という手法も比較対象になりつつあります。

    1-3. ローコード開発(ハーフスクラッチ開発)とは?

    ローコード(ハーフスクラッチ)開発とは、ベースとなるアプリ(手を加えられていない=ノーコードテンプレート)を顧客ごとにカスタムし、要望に応じて追加機能・デザイン変更をスクラッチ開発していく開発手法です。

    「ハーフ」という名称が使われることもありますが、50% である必要はなく、案件によってパッケージ部分とオーダーメイド部分の割合は変わります。

    フルスクラッチに比べてエンジニアの開発量が少なく、「ノー」でもないため、「ローコード開発」という呼称が一般的になっています。

    2. スクラッチとパッケージ(SaaS)のメリット・デメリット比較表

    開発手法 長所 短所
    ノーコードサービス ・初期費用の負担が低い
    ・業界のトレンドを押さえやすい
    ・カスタム性が低く、運用開始後の軌道修正がしづらい
    ・大規模になると運用コストが割高になる場合も
    ローコード開発
    ※ハーフスクラッチ
    (ノーコードとフルスクラッチの中間) (ノーコードとフルスクラッチの中間)
    フルスクラッチ開発 ・自社の事情に合わせて細部まで作り込める
    ・アプリの動作速度を改善しやすい
    ・開発チームやベンダーの設計・技術力に左右される
    ・初期費用の負担が大きい
    アジャイル開発 ・アプリをリリースし、運用を始めてから柔軟に追加開発できる
    ・予算をコントロールしやすい
    ・全体の舵取りが非常に重要
    ・トータルでは費用が低いわけではない

    2-1. 一般的なフルスクラッチ開発の強みとデメリット

    昔であれば、iOS/Android アプリに限らず IT システムは、ゼロからオーダーメイドで開発する「フルスクラッチ開発」が主流でした。

    古くからのフルスクラッチ開発(ウォーターフォール型)は、総予算やスケジュールを組みやすく、大規模なシステム開発やパッケージを利用したアプリの大規模なリニューアルなどでは今も一般的に採用されています。

    自社の基幹システムと連携したり、独自のセキュリティ・ポリシーを満たしたりと、他社製品の仕様に左右されずにシステムを設計できることがメリットです。

    一方で、

    • 事業部門の担当者が技術を理解していないと適切な仕様を決められない
    • 仕様に抜け・漏れ・曖昧があると品質低下の原因に
    • 途中で軌道修正したくても難しい

    というデメリットもあります。

    そこで、時代とともに「アジャイル型開発」「ノーコード開発」「ハーフスクラッチ開発」という新たな選択肢が台頭するようになったのです。

    2-2. アジャイル型開発の強みとデメリット

    フルスクラッチの弱点を解消するためにまず台頭したのがアジャイル型開発です。大枠ではゼロイチでアプリを開発するフルスクラッチですが、最低限の機能が実装できた時点でアプリを公開してしまうのが特徴です。

    アジャイル型の考えを取り入れることで、新規アプリの企画時点で厳密に仕様や計画を決め切る必要がなくなります。

    さらに、毎月の開発予算をあらかじめ確保しておくので、開発が始まってから「この機能が必要なことを忘れていた」「急きょ現場や経営陣から要望があった」と差し込みがあっても、事前に用意した予算ですぐに着手することができます。

    このような特徴から、アプリ事業は初めてという事業部門の方にはメリットが大きいです。一方で、毎月のように突発的な開発・カスタマイズを繰り返していると、最終的にどんな価値を提供するアプリなのかが定まらず、“迷走” してしまうリスクがあることには注意が必要です。

    2-3. パッケージ(SaaS)を使ったノーコード開発の強みとデメリット

    2010 年代は、「iOS/Android アプリを作りたいが、試しにトライするにはアプリは開発費用が高すぎる」と敬遠されることが少なくありませんでした。シンプルなネイティブアプリの開発費用を 1,000 万円以上から数百万円へと引き下げ、自社アプリ運用に挑戦する企業を増やしたのがノーコードパッケージです。

    とにかく「安価に、スピーディに、さまざまな機能を持つ自社アプリを運用することができる」という点がメリットで、プログラミングなどの知識・スキルがなくてもアプリ内の画面を簡単に編集できる UI も備えているサービスが多いです。また、導入事例が多かったり、開発実績が豊富な会社であれば、業界ごとの “型” を熟知したパッケージで必要な機能を網羅しているというメリットもあります。

    一方で、アプリの機能・品質面で言えば、ノーコード開発の場合は運用開始後の細かいカスタマイズを想定していないため、運用する中で欲しくなった機能やデザイン修正が実装・実現できないことが多いという点が最大のデメリットです。

    スモールスタートで自社アプリを運用し始めて、顧客からある程度の高評価を得たものの、「もっとこうしたい」「こうしてほしいといわれている」というカスタムを実現できない場合、諦めるか作り直すかの二択になってしまいます。

    2-4. ローコード開発(ハーフスクラッチ開発)の強みとデメリット

    「フルスクラッチ(アジャイル含む)で自社アプリを作る予算はないが、ノーコードパッケージはかゆいところに手が届かないという話を聞いている」という要望に応える形で近年増えているのがローコード(ハーフスクラッチ)開発です。

    飛び抜けたメリットはありませんが、ノーコードよりもカスタム性は高く、フルスクラッチよりも初期費用が抑えられるというバランスによって採用されるケースも増えてきています。

    ノーコード/ローコードとアジャイル型開発の違いもわかりづらいという声を聴きますが、

    • アジャイル型開発:ゼロイチで作るため、作っていない機能は何も使えないが、パッケージの制限は受けずに自由で作っていくことができる
    • ローコード開発:パッケージを利用した時点で標準搭載されている機能はすべて使えるが、カスタム開発においてはパッケージでどこまでカスタムできるかという制限を受ける
    • ノーコードパッケージ:パッケージに搭載されている機能と、定められたカスタム範囲でやりくりするものであり、契約した企業独自のカスタムは想定されていない

    という特徴になります。

    img

    3. パッケージ(SaaS)とスクラッチの開発費用・ランニングコスト比較表

    価格面の違いを比較すると、アプリ・サービスの事業規模に応じて最適な手法が変わることがわかります。

    開発手法 初期費用 ランニング 価格を決める要素
    ノーコードサービス 低い 高い DL数やユーザー数
    ローコード開発
    ※ハーフスクラッチ
    中程度 中程度 ベンダーによる
    フルスクラッチ開発 高い 低め 開発の作業量
    アジャイル開発 高め (自由) 自社の戦略

    運用コストに関してはこちらも参考にしてください:

    3-1. フルスクラッチ開発の初期費用とランニングコスト

    フルスクラッチ開発では、「どんなアプリをゼロから構築するのか」という企画を整理したのち、作業量に応じて初期費用が算出されます。

    「シンプルなアプリだから安くなるだろう」と考えていても、開発の知識がない場合は作業量を想像しづらいため、意外に高く感じられるという声も少なくありません。

    運用コストに関しては、ユーザー数や保守・運用をどこまでやるか/やってもらうかによって左右されます。またリリース後に「こんな機能が欲しい」と追加開発の要望が出た場合は、別途予算が必要になります。

    総じて、フルスクラッチ開発の運用コストはノーコード開発に比べると安くはなりがちですが、初期費用の金額の差と比較すると企業の負担は大きいといえます。

    3-2. アジャイル開発の初期費用とコスト

    アジャイル開発もフルスクラッチ開発の一種なので、iOS/Android アプリの開発の総予算という意味では変化はありません。

    ですが、毎月の運用コスト+追加開発費用の上限を設定しておくのが一般的なので、予算は管理しやすいです。

    3-3. パッケージ(SaaS)を使ったノーコード開発の開発費用・ランニングコスト

    ノーコード開発の場合、アプリをゼロから構築する作業がないため、初期費用はスクラッチ開発より安くなります。

    DXの第一歩やスモールスタートの新規事業など、あまり予算が取れないという場合には予算感が合いやすいといえます。

    合見積もりを取るとランニングコストはやや高めに感じられることが多くなりますが、iOS/Android の OS アップデート対応など、保守運用費用も含まれています。また、スクラッチ開発で構築したアプリが「資産」となって減価償却の対象になる一方で、パッケージ(SaaS)でアプリを構築した場合は法人税などの面でもメリットがあります。

    参考:スマホアプリ開発の予算組みは五年計画? 減価償却・法人税など、長期的な事業計画に影響を与えるポイント

    注意点としては、基本的にパッケージアプリは「ユーザー数やダウンロード数に応じてランニングコストが上昇する」ということです。小規模に始める上では最適といえますが、事業が成長していくにつれて「運用コストがかさむ割に、カスタム性に限界があってかゆいところに手が届かない」という悩みを抱えるケースも出てきます。

    3-4. ローコード開発(ハーフスクラッチ開発)の初期費用とコスト

    ノーコードとは異なり、基本となるベースアプリをクライアントごとにカスタムするので、開発時もリリース後も柔軟にカスタムできます。その分、ノーコードで済ませる場合よりも初期費用は高くなります。

    4. スクラッチ開発 or パッケージ(SaaS)、結局どっちがいい?選択の決め手とは

    アプリを開発する際、スクラッチ開発とパッケージ(ノーコード)開発のどちらを選択すべきか悩んでいる方々に向けて、決め手となる重要な2つのポイントを紹介します。

    判断基準 1. パッケージで実現できない機能がある or 決まっていないのか

    アプリを開発する際、まず考慮すべきポイントは、アプリに求められる機能です。ノーコードパッケージ(Saas)は、各業界の一般的なアプリとして設計されており、個社ごとに細かくカスタマイズすることを想定していません。独自の機能や要件がある場合は、フルスクラッチ開発またはローコード開発を前提で考えましょう。

    また、アプリ事業に初めて挑戦される企業様の場合、「最終的にどんなアプリになるかというイメージはまだ浮かんでいない」「予算があればやりたいことはたくさんあるが、最初はミニマムで始めたい」というケースも少なくありません。その場合は個社ごとにカスタム開発ができるタイプのパッケージ(SaaS)でのローコード開発をおすすめします。

    判断基準 2. アプリの導入時期

    アプリを導入するタイミングも重要な要因です。ノーコードパッケージ導入やローコード開発であれば、1~3 カ月で迅速にアプリを構築できます。

    一方、フルスクラッチ開発(特にウォーターフォール型)は開発に時間がかかる傾向があります。アプリ導入のスケジュールに応じて、どのアプローチが適しているかを考慮しましょう。

    判断基準3. 設計時のコンサルティング~運用サポートの伴走体制

    はじめて自社アプリを運用する場合、ベンダーが運用をどれだけサポートしてくれるかも重要です。一般的な傾向としては、フルスクラッチ開発に重きを置いている企業よりは SaaS を展開している企業のほうがサポートプランが豊富です。

    アプリ事業は運用のフローから KPI まで、Web とは全く異なる世界といえます。困ったことがある際にはすぐに相談できるパートナー企業を選ぶことで、スムーズに PDCA サイクルを回していけます。

    関連記事

    【アプリ事業を始める前に】失敗事例のパターンを学び、想定外のトラブルを防ぐ
    事前にアプリの役割・構築方法の違い・KPI・運用イメージなどについて知識をつけておくことで、よくある失敗パターンの多くを防ぐことができます。そこで、本記事ではアプリ事業で失敗しないために知っておきたい基礎知識を 3 つのポイントでまとめます。
    続きを読む

    さいごに

    すべての開発手法・契約パターンにはそれぞれメリットもデメリットもあるため、一概に「迷ったらこうすれば上手くいく」とは言い難いのが実情です。

    バックアップでは、お客様が検討しているアプリの企画やご予算に応じて最適な手段およびリリースするアプリのイメージをご提案いたします。

    さらに当社では、アプリ事業の立ち上げ時にはテンプレートで安価にアプリを構築し、事業の成長後には受託に近い形で作りこめるノーコード兼ローコード開発プラットフォーム「Pasta」を開発しました。

    「Pasta」ではスクラッチ開発・パッケージ両方でのアプリ開発に対応しながらプログラミング不要でカスタマイズや幅広いアプリマーケティング施策も可能になりますので、お困りの際は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

    お手頃価格で簡単に自社アプリを開発~運用するなら
    img
    • 「自社アプリを考えているが、初期投資を抑えてまずは試してみたい」
    • 「LINE からの PUSH 配信で顧客と継続的に接点は作れているが、費用対効果が見合わなくなってきた」
    • 「安すぎるシステムだと動作速度や拡張性などが不安」

    といったお悩みを抱えている企業様に向けて、ノーコードでアプリを開発するサービス「PASTA」を展開しています。