本記事では、LINE ミニアプリではどのようなことができるのか? また、LINE ミニアプリと LINE 公式アカウント・ネイティブアプリとできることや役割の違いについて、メリット・デメリット触れながら、活用事例をご紹介いたします。
1.LINE ミニアプリとは
LINE ミニアプリはLINE の中で、ネイティブアプリに近い機能を提供できる Web アプリです。 「LINE」と「LINE ミニアプリ」は、親と子の関係にあり、親である「LINE」の中で動くことから「LINE ミニアプリ」と呼ばれています。 LINE ミニアプリは、「App Store」や「Google Play ストア」などからDL 不要であり、スマートフォンの容量を気にせず利用できることが特徴です。
1-1. LINE 公式アカウントとの違い
LINE のサービスで一番に思い浮かぶのが、公式アカウントかと思われます。しかし、LINE ミニアプリとLINE 公式アカウントでは役割やできることが異なるため、違いを認識する必要があります。
LINE 公式アカウント
お友だち登録したユーザーに対して、メッセージを送信できるサービスです。ユーザーに対して情報発信し、継続的に接点を作ることを役割とします。 新商品やセールのお知らせなどを情報発信することで、顧客のリピート率向上に期待が持てます。
公式アカウントを開設し、リッチメニューを追加することで、ワンタッチで外部 EC サイトに遷移させたり、すぐに会員証を表示させたりといったことも可能です。
LINE ミニアプリ
第 2 章で詳しく説明いたしますが、LINE ミニアプリは、「店内オーダー」、「デジタル会員証」、「順番待ちシステム」などといった、店舗や企業のサービスを利用するために必要なツールとして利用します。 上記のサービスを利用した際に、リマインダー通知・予約確認・発送連絡などユーザーのアクションに応じたメッセージを発信することができます。
LINE 公式アカウントとLINE ミニアプリは、できることと役割が異なるため、LINE 公式アカウントからLINE ミニアプリへ登録できるように、またその反対からも登録できるようにし、顧客離れを防ぐ施策をしている企業は多いです。
1-2. LINEミニアプリとLIFFアプリ?
LIFF (LINE Front-end Framework)とは、LINE ヤフー株式会社が提供する Web アプリのプラットフォームです。
LINE ミニアプリと LIFF アプリで共通する点は、アプリのインストールが不要であることが挙げられます。
LIFF アプリ
スマートフォンや一般的なブラウザ(Googleや Safariなど)で動作します。LINE ヤフー社によるリリース審査はありませんので、いつでもリリースができます。
しかし、Service Message(リマインドメールなど定型文を送信)機能が利用できないことがデメリットです。
LINE ミニアプリ
LINE ミニアプリは、スマートフォン版 LINE 上のみで動作します。また、LINE ヤフー社によるリリース審査が必要です。
LINE ミニアプリは、QR コードや URL リンク、LINE サービス一覧経由などさまざまな方法でアクセスができ、ユーザーが利用する面でも手軽なのですが、リリース審査があるため、審査期間を想定してリリースのスケジュールを組むことをおすすめいたします。
1-3. LINE ミニアプリとネイティブアプリの違い
LINE ミニアプリとネイティブアプリでは、できることと開発費用など異なる点があります。詳しくは、第 3章でメリット・デメリットを交えてまとめます。
LINE ミニアプリ
例えば、「デジタル会員証だけを利用するためにアプリの DL は必要ないかも...」といったライトユーザーに対し、実店舗で QR コードを読み取ってもらうだけで瞬時にデジタル会員証を作ってもらうことができます。 LINE ミニアプリの初回起動時に LINE 公式アカウントも登録してもらうことで、プッシュ配信を通じて継続的に顧客とつながることが可能です。
コスト・開発面ですが、LINE ミニアプリは Web アプリなので、開発すると iOS/Android どちらのスマートフォンでも利用できます。 主要機能を搭載したパッケージもあるため、パッケージを利用して開発をした場合、ネイティブアプリと比較すると、比較的安価に構築可能です。
ただし、様々な機能を盛り込むためにパッケージを利用せずスクラッチ開発した場合、ネイティブアプリと同等の開発費用が発生する場合もあります。
ネイティブアプリ
カメラや GPS 機能など、スマホの特徴をアプリ開発に活かしながら、自社独自のアプリを提供することができます。
DL をしてもらえるような施策が必要ではありますが、スマホのホーム画面からすぐに起動することができます。 開発の自由度は高く、外部システム連携なども可能です。しかしながら、iOS / Androidに対応したアプリ開発が必要になるので、開発コストがかかります。
2. LINEミニアプリでできること
LINEミニアプリは、主に3つの機能がありさまざまな業種に対応しています。LINE 公式アカウントのお友だち登録をしていなくても機能を利用することができます。
2-1. 店内オーダー
店内においてある QR コードを読み取ることで、注文ページが立ち上がり、オーダーすることができます。主に飲食業で利用されています。 スタッフが注文を取りに行く必要がなくなることで、以下のメリットがあります。
- 配膳の合間にオーダーを取ることがなくなるため、オーダーミスを減らすことができる
- スタッフをオーダー以外の業務に充てることができるので、店頭オペレーションを最適化し、人件費を削減できる
- オーダー時、スタッフと顧客の会話がなくなるので、感染対策にも効果的
2-2. デジタル会員証
店内においてある QR コードを読み取ることで、会員証の発行ができます。ポイントやクーポンの発行も可能なのでリピーター獲得が見込めます。 紙の会員証と比較した場合、会員情報の紛失時の手続きや再発行の手間やコストを削減することができます。 主に飲食や美容・小売などの業界で活用されています。
2-3. 順番待ちシステム
ユーザーが QR コードを読み込むことで、混雑状況を把握することができます。 「呼び出し」機能を導入することで、「お呼び出しの時間が近づいています」というリマインドを通知することにより、顧客は待ち時間を有効に活用できます。 もしキャンセルしたい場合は、キャンセルボタンもあるため、無断でキャンセルされることを防ぐことも可能です。 飲食や小売、医療業界などでよく活用されています。
3. ネイティブアプリと比較した際の LINE ミニアプリのメリット・デメリット
LINE ミニアプリを導入することによる企業のメリット・デメリットについて、ネイティブアプリと比較しながら以下にまとめていきます。
3-1. LINEミニアプリならではのメリット
LINE の月間利用者数は、日本の人口の約 70% と普及率が高いため、専用のアプリをダウンロードすることなく、LINE を通して幅広いユーザーに対してアプローチできることが最大のメリットとして挙げられます。
LINE ミニアプリとLINE 公式アカウントを相互補完し、デジタルマーケティングの基盤に
例えば、初回来店時に LINE ミニアプリの順番待ちシステムを使ってもらい、待ち時間を有効に過ごせる等、顧客にミニアプリの便利さを体感していただきます。 加えて、ユーザーが LINE ミニアプリを使用する際、LINE 公式アカウントをお友だち追加してもらえるよう訴求できます。
「LINE 公式アカウント」からプッシュ配信をしてリピート集客を狙い、「LINE ミニアプリ」で予約を受け付けるというように 2 つを組み合わせることで、企業公式アプリのような機能を提供することができます。
「プッシュ配信」「クーポン」「会員証」「事前予約」などはまさに小売企業の iOS/Android アプリのベースとなる機能であり、開発や普及のコストをかけずに LINE 内で同じサービスを提供できるのは特に中小企業・店舗にとってメリットが大きいといえます。
会員情報を利活用できる
LINE ミニアプリを通じて、顧客データ(氏名・性別・誕生日・住所・電話番号・商品購入履歴など)を取得することができます。 例えば、LINE ミニアプリで抽選販売申し込みをした顧客に対し、電話番号をキーとして「抽選結果が発表されました」と、通知を送ることができます。
しかしながら、セールスアピール(セールや新商品などの販促目的)のためのメッセージ配信は禁止されているため、注意が必要です。
開発費を抑えることができる
ネイティブアプリのように、iOS / Android と2 つのプラットフォームに対応する開発の必要がないため、費用を抑えることができます。また、アプリ開発(iOS / Android とも)に必要な、開発者登録料を支払う必要もありません。
LINE ミニアプリは、企業の業種に合わせて必要な機能(デジタル会員証・来店受付・ポイントカード・キャッシュレス決済など)のみ導入されている認定パッケージがあります。初期費用や月額利用が 0 円のパッケージもあるので、最小限の機能のみ利用して費用を抑えたい中小企業において有力な選択肢となります。
3-2. ネイティブアプリと比較した際のデメリット
カスタムできる範囲が限られる
LINE 公式アカウント含め、LINE ミニアプリは、あくまで LINE 上で動作する簡易的なもので、できること・拡張性には限りがあります。
特定の機能を有したパッケージを利用した場合、LINE の一部としての印象になりがちで、ユーザーの印象に残りづらいという問題があります。 独創性や付加価値がないと、他企業とも競合してしまい差別化が難しくなります。
LINE 公式アカウントと併用することでコスト面に弊害が生じる
LINE ミニアプリと LINE 公式アカウントを併用することで、ネイティブアプリを作るよりも安価にデジタルマーケティングの基盤を作ることができます。
しかし、LINE 公式アカウントは、「プッシュ通知を配信する顧客の数と頻度が増えるほど利用料金が上がる」という従量課金制です。LINE ミニアプリを使ってもらうために LINE 公式アカウントを活用すると、公式アカウントからのプッシュ配信が増えるにつれコストが上がる点がデメリットとして挙げられます。
LINE ヤフー株式会社の審査を通過する必要がある
LINE ミニアプリは、LINE ヤフー株式会社の審査が必要です。審査には、ガイドラインやルールに則ったものを提出しなければならないので、知識が必要です。LINE というプラットフォームに依存しているため、審査基準が大幅に変更されると導入企業としても対応が必要になります。
総じて、デジタルマーケティングをこれから強化していきたいという企業には向いていますが、事業規模が拡大すると LINE ミニアプリや公式アカウントで完結しづらく、ネイティブアプリとの併用が前提となってきます。
4. LINE ミニアプリの導入事例
LINE ミニアプリを効果的に活用している事例をご紹介します。
参考:
【小売】株式会社マキヤ
株式会社マキヤは、静岡県を中心に食品スーパーやディスカウントストアを運営する企業です。 2022 年 8 月に LINE ミニアプリを導入したことにより、1 カ月あたりの新規登録会員数を 2,000 人増加させることに成功しました。
LINE ミニアプリの主な機能は、「デジタル会員証」と「電子マネー決済」です。 LINE ミニアプリ導入以前は、会員証を紙やプラスチックで発行しており、プラスチックの会員証発行手数料が 1 枚につき 100 円かかっていました。 デジタル会員証に移行することで、会員カードを新規発行する従業員の手間がなくなり、顧客は会員証発行手数料を支払うことがなくなりました。
また、「電子マネー決済」導入前は、決済用のカードとポイント付与用のカードのバーコードを 2 箇所を読み込む必要がありましたが、ミニアプリ導入後は、バーコードを 1 つ読み取るだけでポイント付与と決済が済ませられます。
毎月プリペイド残高をプレゼントするキャンペーンを実施することで、顧客にプリペイドチャージをするための再来店を促すことができました。
【小売・アパレル】株式会社中川政七商店
株式会社中川政七商店は、日本の工芸をベースにした生活雑貨の企画・製造・販売を手掛けている企業です。
2022 年 6 月に「デジタル会員証」機能を持つ LINE ミニアプリを導入しました。 LINE ミニアプリを導入前は、 Web ブラウザから EC サイトにログインしてマイページからデジタル会員証を提示する仕様になっており、顧客から「手間がかかる」との意見がありました。
LINE ミニアプリの「デジタル会員証」を導入することにより、ワンタップで会員証を提示できるよう顧客体験の改善を図りました。
株式会社中川政七商店は、店舗商品購入時にLINE ミニアプリの利用をお勧めし、会員数を増やすことを目的にしています。
「未会員」→ 「LINE ミニアプリ登録」→「LINE 公式アカウント登録」→「EC サイトの会員登録」という誘導の方法で、LINE ミニアプリの導入から 3ヵ月でLINE 公式アカウント登録数が 3 万人弱になりました。公式アカウントからの配信メッセージの開封率は約 20 %アップし、ブロック率は 18 %もダウンしています。
【医療】アイセイ薬局 おくすりPASS FAST
LINE ミニアプリ「おくすりPASS FAST」の主な機能は、処方箋を写真撮影してミニアプリから送信し、「調剤予約」をすることで薬を受け取ることができます。
予約時間が近づくと「お薬の準備が整いました」と、メッセージを受信することができます。
直接、処方箋を持って薬局の受付に行くことや、薬局内で待つ必要がなくなったため、コロナ渦では薬局内の混雑回避につながりました。また、感染症の二次感染リスク低減にも役立ちます。
薬局を利用する多くの中高年層は、企業ごとのネイティブアプリを DL することに抵抗を感じる傾向にあります。しかし「普段利用している LINE から予約できる」となるとメリットが大きくなり、5 か⽉弱で 1 万⼈以上が会員登録し、 WEB サービスの 8 倍のスピードで会員数が増加しました。
【飲食】四十八漁場(よんぱちぎょじょう)
魚貝専門居酒屋「四十八漁場」は、首都圏に 14 店舗を展開する魚貝専門居酒屋です。「モバイルオーダー」機能を持つLINE ミニアプリを 2021 年 12月より導入しました。 顧客全体のうち、 7 割がモバイルオーダーを利用して店内注文しています。これにより、スタッフが注文を取りに行く割合が減り、繫忙期のスタッフを 1~2 人減らしても、お店が回るようになりました。
店舗で QR コードを読み取り、認証画面にて LINE 公式アカウントのお友だち登録を「許可」してもらうことで、スムーズに公式アカウントと連携できます。LINE ミニアプリ導入後は、約 1年で公式アカウントのお友だち登録者数が 10 万人を突破しました。
5. LINE ミニアプリのおすすめの使い方と、向いている企業
ここまで、LINE ミニアプリの機能やメリット・デメリットに触れてきましたが、実際に企業はどのように活用すれば効果を発揮するのでしょうか。
LINE ミニアプリと LINE 公式アカウントを併用する
LINE ミニアプリの初回利用時、LINE 公式アカウントのお友だち追加を許諾してもらうことで、メッセージやクーポンなどを配信できます。
例えば、LINE ミニアプリで来店予約をしたデータを活用し、公式アカウントから来店回数に応じたクーポンを配信することも可能です。
企業規模・予算・向いている業種から選ぶ
LINE ミニアプリの機能自体は、飲食店や小売、または医療業界で活用できます。 企業規模がそれほど大きくなく扱う商材の単価も低い場合、ネイティブアプリを導入するまでの予算や熱烈なファンや顧客が獲得できていない場合があります。
予算や企業の成長過程に合わせて LINE ミニアプリと LINE 公式アカウントを導入してリピート顧客の獲得を目指し、成果がでてきたところでネイティブアプリの導入を目指すことをお勧めします。
インテリアメーカーニトリの例
ニトリは今まで LINE 公式アカウント上で「仮会員証」を作ってもらい、会員証登録の普及を進めていました。しかし、LINE による会員証サービスは、2024年 2 月 29 日(木)をもって終了し、ネイティブアプリで会員証サービスを利用するようお願いしています。
これはなにを意味するかというと、ネイティブアプリを DL するほどの熱量がない顧客を LINE でつなぎ止め、最新のチラシやアウトレット情報などを LINE でも発信しつつファンになってもらえるよう育成していき、アプリ会員(本会員)へ誘導するという戦略です。このように事業のフェーズに応じて LINE とネイティブアプリを使い分ける事例が近年では増えています。
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6. LINE ミニアプリの導入方法と開発費用相場
LINE ミニアプリを導入する場合は、開発会社が提供するパッケージを利用する方法と、オーダーメイドでスクラッチ開発する(または外注する)方法があります。
6-1. 比較的安いパッケージサービスを探す
現在は、「モバイルオーダー」「順番待ち」など提供する機能を絞り、初期費用 100 万円以下・月額 10 万円以下でパッケージを提供する企業が増えています。
LINE ミニアプリを試してみる場合は、まずパッケージから試してみると効果やメリット・デメリットを実感しやすいです。
6-2. スクラッチ開発(内製または外注)
開発のためには「LINE ミニアプリ開発プログラム」に登録する必要があり、公開する上では審査も行われます。iOS/Android アプリを開発し、Apple・Google の審査を受ける流れとほぼ同様といえます。
LINE ミニアプリは Web アプリとして開発するので、iOS/Android それぞれ独自の言語での開発が必要な企業独自のネイティブアプリに比べて開発費用〜保守運用費用は安く見積もることができます。ですが、自社専用で大きくカスタマイズを加えていくと 1,000 万円を超えることもあります。
また、LINE ミニアプリの開発経験がある制作会社があまり多くないため、外注する場合は余裕を持ってスケジュールを組むことも重要です。
7. まとめ
LINE ミニアプリは、DL 不要で端末の容量を気にせず利用することができます。LINEは世代を問わず広く普及しているプラットフォームであり、ミニアプリを使用するハードルは低くなっています。さらに開発費用を抑えつつ顧客とつながることができるので、大きなメリットがあります。
しかしながら、ミニアプリだけでは独自性が薄く他企業に顧客が流れてしまう懸念や、公式 LINE アカウントと併用した場合は従量制システムにより顧客数が増えるほどコストが高くつくというデメリットもあります。
一方で、ネイティブアプリをすぐ導入すれば良いというわけでもなく、iOS/Android それぞれの OS での開発が必要でありコストもかかります。
企業は顧客にとってどの媒体が使いやすいかを判断し、限られた費用の中から適したツールを選ぶ必要があります。当社としては、まずは LINE ミニアプリや LINE 公式アカウントを活用し、一定のリピーターを獲得した後にネイティブアプリとの併用、そしてアプリへの移行という流れをおすすめします。
合同会社バックアップでは、iOS/Android アプリだけでなく LINE ミニアプリの開発も手掛けています。
事業規模やフェーズに応じてパッケージ提供からスクラッチ開発まで幅広くご相談を承りますので、LINEミニアプリやネイティブアプリをご検討の企業様はぜひ一度お気軽にご相談ください。
- 「自社アプリを考えているが、初期投資を抑えてまずは試してみたい」
- 「LINE からの PUSH 配信で顧客と継続的に接点は作れているが、費用対効果が見合わなくなってきた」
- 「安すぎるシステムだと動作速度や拡張性などが不安」
といったお悩みを抱えている企業様に向けて、ノーコードでアプリを開発するサービス「PASTA」を展開しています。