「LINEミニアプリ」で店舗のアプリ運用は変わる?公式アカウントやネイティブアプリとの役割の違いとは?
2019 年の「LINE CONFERENCE 2019」にて、LINE 社は自社プラットフォーム内の新たな基盤となる「LINE Mini app」を発表しました。
企業からのお知らせを LINE のプッシュ通知で配信できる「LINE 公式アカウント(旧・LINE@)は広く普及している中、同じプラットフォーム内で「予約」「決済」など iOS/Android アプリに近い機能を展開できるというシステムは注目を集めました。
そして OMO やオムニチャネル戦略の重要性が高まっている現在では、小売企業を中心に注目が高まっています。
そこで、今回は LINE ミニアプリでできることや注意点、iOS/Android アプリとの使い分けなどをまとめました。
LINE ミニアプリとは?
「LINE ミニアプリ(LINE Mini app)」は、LINE の中でネイティブアプリに近い機能を提供できる Web アプリです。
LINE 上で動くため、顧客は新しくアプリをインストールすることなく、対象の企業・店舗の
- ポイントカード・デジタル会員証
- クーポン発行・管理
- 来店予約・事前注文
- ショッピング・決済
- LINE のメッセージ上でのレシート・明細・予約票などの受け取り
といった機能を使うことができます。
同じプラットフォーム内のサービスである「LINE 公式アカウント」では、顧客に LINE で友だち登録をしてもらうだけでメッセージ=iOS/Android アプリのプッシュ通知を配信することができます。メルマガや紙の DM の効果が薄くなっている現代では、顧客と継続的につながるツールとして既に多くの店舗で活用されています。
参考:自社アプリをやる前の“お試し”に最適? LINE公式アカウントのメリット・役割の違いとは
「LINE 公式アカウント」からプッシュ配信をしてリピート集客を狙い、「LINE ミニアプリ」で予約を受け付けるというように 2 つを組み合わせることで、企業公式アプリのような機能を提供することができます。
「PUSH 配信」「クーポン」「会員証」「事前予約」などはまさに小売企業の iOS/Android アプリのベースとなる機能 であり、開発や普及のコストをかけずに LINE 内で同じサービスを提供できるのは特に中小企業・店舗にとってメリットが大きいといえます。
LINE アプリ開発と公開〜運用の流れ
開発のためには「LINE ミニアプリ開発プログラム」に登録する必要があり、公開する上では審査も行われます。iOS/Android アプリを開発し、Apple・Google の審査を受ける流れとほぼ同様といえます。
LINE ミニアプリは Web アプリとして開発するので、iOS/Android それぞれ独自の言語での開発が必要な企業独自のネイティブアプリに比べて開発費用〜保守運用費用は安く見積もることができます。
とはいえ、現状は LINE ミニアプリの開発経験がある人材・制作会社が多くないため、内製やテストの工数は余裕を持ってスケジュールを組むことが重要です。
LINE ミニアプリの開発事例
LINE for Business のページで「提供中のLINEミニアプリ」が紹介されています。
店舗経営における空き具合の調整〜事前予約・決済のほか、アパレル企業ではショッピング機能も利用されています。
https://www.linebiz.com/jp/service/line-mini-app/company/
ネイティブアプリと LINE ミニアプリの役割の違い
アパレルや雑貨店など数十ブランドを展開する PAL グループでは、LINE ミニアプリと iOS/Android アプリの両方を展開しています。
ただ、その使い分けについて聞かれたウェビナーでは、「我々が使い分けているというよりは『お客様が選んでいる』」 と答えています。
参考:パルのLINEミニアプリとネイティブアプリの使い分け方を公開!”新しい生活様式”に対応した最新のCRMとは?(株式会社インプレス「ネットショップ担当者フォーラム」編集部主催ウェビナー
たとえば会員証をデジタル化するという行動でも、ブランドのイメージや業態によっては「専用の iOS/Android アプリをダウンロードするほどでは…」と感じられることもあります。
セルフレジ(店員がバーコードの読み込みだけを行う)形態のブランド店舗であれば、店頭のスタッフからしても
- 新規アプリのダウンロードは必要ありません
- QR コードを読むだけで瞬時に会員証ができます
- そのまま LINE 公式アカウントの友だち登録もできるので、お得な情報など PUSH メッセージを受け取れます
と、気軽さを売りにおすすめしやすいという事情があるのではと説明されています。
圧倒的な普及率を誇る LINE のミニアプリであることも強み
LINE 社がソリューションである強みは、圧倒的な認知度(アプリのインストール率)とメッセージの開封率です。
自社の iOS/Android アプリからプッシュ通知を配信する場合、メールマガジンや紙の DM よりは開封率が高くなりやすいです。しかし、LINE のプッシュ通知は自社アプリよりもさらに高い開封率を狙えます。
PUSH メッセージの配信は LINE ミニアプリというよりも LINE 公式アカウントが主な役割を担っていますが、LINE というプラットフォームを利用するメリットとして宣伝効果の高さは見逃せません。
ネイティブアプリと比較した際のデメリットやリスク
LINE ミニアプリ(LINE 公式アカウント)はあくまで LINE 上で動作する簡易的なもので、できること・拡張性には限りがあります。
プッシュ通知はあくまで「LINE を起動するもの」になるので、自社アプリのように直接自社の EC サイトなどに誘導することはできません。ですので、アプリ経由で売上を伸ばすという視点では、LINE 内で回遊するミニアプリよりも自社の iOS/Android アプリのほうがより高い効果が狙えます。
また、LINE 公式アカウントは、「プッシュ通知を配信する顧客の数と頻度が増えるほど利用料金が上がる」という従量課金制です。
顧客数がまだあまり多くない中小企業なら自社の iOS/Android アプリを開発するよりも遥かに安価・ローリスクで使えるものの、顧客数が増えると「LINE = 安価に運用できるツール」ではなくなってきます。
参考:LINEと自社アプリではどちらの費用が安い?事業フェーズごとの最適なアプローチと運用体制の考え方
どのツールが自社に合うか、費用対効果も考えて最適なものを選ぶ
LINE という年代を問わずほとんどの人がインストールしているツール上で、「プッシュ通知での再訪促進」「事前予約〜決済」など企業アプリに近い機能が提供できるのは大きなインパクトがあります。
特に iOS/Android 両 OS でのネイティブアプリ開発にはある程度の予算がかかるため、中小企業においては有力な選択肢になることは間違いありません。
とはいえ、自社専用 iOS/Android アプリの開発も、最近では SaaS 利用などパッケージ型の契約で初期費用の負担を下げる手段が出てきました。
企画〜運用する企業の費用対効果という目線では、「LINE ミニアプリかネイティブアプリか」というよりは、「LINE、パッケージ型アプリ、オーダーメイドのアプリで何が最適か」という考え方が重要になります。
参考:格安で自社アプリ開発も可能?テンプレート・パッケージサービスを使うメリットとリスク
また、上記ウェビナーでも語られたように、「そのブランドの顧客にとってはどちらが使いやすいか」 という視点も重要です。LINE ミニアプリにしろ、ネイティブアプリにしろ、顧客に使われなければ開発する意味がありません。
顧客に使われるタイミングや機能は共通する部分も多いため、自社の業態や目的に合わせて最適なツールを選ぶことが重要になります。

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