かつて、iOS/Android アプリ開発といえば「パッケージかフルスクラッチか」で語られてきました。
「フルスクラッチ開発だと初期費用が高すぎるし、毎年の OS アップデートにも対応しないといけないから今の自社では難しい…」
「ノーコードだと予算面はクリアできるけど、かゆいところに手が届かないという話を聞く…」
そんな中で、この中間を取る手段として近年広まっているのが、ローコード開発(別名:ハーフスクラッチ開発)です。
本記事ではハーフスクラッチの作り方・メリット・リスクなどを解説していきます。
ノーコード・フルスクラッチとの比較記事はこちら
前提. 世界的なトレンド「ローコード開発」の定義とは?
アプリに限らず、IT 開発全般において世界的に「ローコード」という名称が広まっています。
具体的な定義を聞かれることもあるのですが、「(ツールを使って)コードをなるべく書かずに IT システムを迅速に構築する手法」という開発スタンスを幅広く指しています。
独自の仕組みでモノづくりをするプラットフォーム(ツール)で自分が作業をする場合も、社外ベンダーが提供するパッケージをカスタム開発してもらう場合も「ローコード開発」の範囲に当てはまります。
重要なことは、世界的にローコード開発が注目されている背景には、従来のフルスクラッチ開発やノーコード開発のデメリットを補えることが大きく影響しています。
特に iOS/Android アプリ開発の場合、フルスクラッチ開発では「初期費用が高い」「開発期間が長い」というデメリットが、ノーコード開発では「アプリは Web 以上に細やかなサービスを提供すべきなのに、かゆいところに手が届かない」というデメリットが指摘されてきました。
ローコード開発では中間をとることで従来のデメリットを解消できるので、近年ではスマホアプリ開発において注目が高まっています。
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1. ローコード(ハーフスクラッチ)でのアプリ開発の流れとは?
iOS/Android アプリ開発における一般的な「ローコード」は、その業界/業態のアプリの基本部分をパッケージ化したサービスを利用しつつ、導入企業ごとに要望に応じてスクラッチで(ゼロから)開発する部分もあるという開発スタイルです。
スマホアプリ開発では、自分で作業できるプラットフォームの実現が難しく、多くのケースでは社外のベンダーに開発してもらうことから、Web などのローコードとは少し毛色が異なり「ハーフスクラッチ開発(で発注する)」という形で浸透しています。
「ハーフ」とは言いますが、カスタム部分が 50% である必要はなく、案件によってパッケージ部分とオーダーメイド部分の割合は変わります。
1-1. ノーコード製アプリとローコード製アプリの違い
ノーコード「開発」と呼ばれることもあるため、「結局はページの作成や更新で最低限のプログラミングが必要なの?」とご相談を受けることもありますが、作業としては GUI(ドラッグ&ドロップで要素を選択するなど)での操作で完結します。
ですので、エンジニア・プログラマーや社内の情シス部門の助けを借りることなく事業部門や店舗・施設の拠点スタッフだけで画面を作成することが可能です。ただし、パッケージの導入企業が想定している(機能として既に実装されている)カスタマイズしか行うことはできません。
一方、ローコード製のアプリも基本部分はパッケージなので、ドラッグ&ドロップなどでコンテンツの追加/更新などは可能です。さらに、カスタム開発をする前提でアプリを初期構築するので、顧客の要望や経営戦略に応じて柔軟に拡張していけます。
ただし、追加開発には別途費用や社外のベンダーに発注する業務負荷がかかるため、コスト面ではノーコードより高くなります。
つまり、アプリのリリース後で比較すると
- ノーコード製のアプリはパッケージとして決められた範囲でしか修正・変更できないが、ローコード製のアプリはある程度カスタマイズの幅が広い(制限が全くないわけではない)
- ノーコード製アプリでは事業部門/アプリの運用担当者だけで完結するが、ローコード製のアプリは追加開発をする際にパッケージ・ツールを提供している社外ベンダーに発注したり、社内の開発部門の力を借りたりする必要がある
という違いが出てきます。
2. ローコード(ハーフスクラッチ)でのアプリ開発の事例
実は、これまでパッケージを利用して開発されてきた既存の iOS/Android アプリにも、ローコードやハーフスクラッチといえるアプリは存在します。
- 一つのパッケージでアプリの画面からシステムまで構築できるわけではない場合(裏側のシステムのみを効率化するパッケージなど)
- クライアントの要望で、パッケージの範囲を超えてカスタムする場合
などは、「ローコード(ハーフスクラッチ)で構築されているアプリ」といえます。
ローコード(ハーフスクラッチ)開発でもコアとなるシステムはすべての導入企業で共通なので、サービス自体に名前がついていてノーコードパッケージと同じように見えるものもあります。一方、企業によっては「オーダーメイド」色を打ち出し、あまりパッケージのように見せないケースもあります。
このように企業によって見せ方も異なるため、事例を探す際は企業ごとのスタンスも見ながらチェックする必要があります。
3. ローコード(ハーフスクラッチ)でアプリを開発するメリット/デメリット
3-1. 予算を抑えながらカスタマイズが可能
ローコード/ハーフスクラッチという呼称が広まる前から需要があったように、最大のメリットは「初期費用を抑えながら、自社の事情に合わせてある程度カスタムできる」ということです。
もちろん、ノーコード(パッケージ)部分も、レイアウトのパターンを選んだり画像を差し替えたりといったカスタムは可能です。
しかし、「この画面は WebView ではなくネイティブで作り、サクサク動くようにしたい」「特定のファイルからデータをインポートできるようにしたい」といった要望が上がってきた場合、パッケージ側が対応していなければ実現はできません。
ノーコードではなくローコードで開発することで、(費用面では若干高くなりますが)上記のような「かゆいところに手が届く」カスタム開発を行うことができます。
WebViewって何?メリット・デメリットは?という方はこちら
3-2. ローコード(ハーフスクラッチ)でのアプリ開発のデメリットとは?
ローコード開発ではノーコードとフルスクラッチの「いいとこどり」をしているため、「これ」という大きなデメリットはありません。
しかし、
- 完全にノーコードで構築するよりも初期費用はかさむ(※ランニングコストはベンダーごとに違うので一概には言えない)
- フルスクラッチ開発と違って、カスタムする際の制約が全くないわけではない
という二つの視点を踏まえると、欠点がないわけではなく、どんな企業にとっても常に最適な開発手段であるとは言えません。
ですので、「新規事業でアプリを始めるならノーコードツールでお手軽に」「競合を差別化するためにはローコード(ハーフスクラッチ)で」と開発手段を先行して考えるのではなく、自社の事情・予算・やりたいことを踏まえ、共に考えながらアプリの企画と構築手法を提案してくれる企業を選ぶのがベストといえます。
開発手法 | メリット | デメリットやリスク |
ノーコードサービス | ・初期費用の負担が低い ・業界のトレンドを押さえやすい |
・カスタム性が低い ・大規模になると運用コストが割高になる場合も |
ローコード開発 ※ハーフスクラッチ |
(ノーコードとフルスクラッチの中間) | (ノーコードとフルスクラッチの中間) |
フルスクラッチ開発 | ・自社の事情に合わせて細部まで作り込める ・アプリの動作速度を改善しやすい |
・開発チームやベンダーの設計・技術力に左右される ・初期費用の負担が大きい ・開発期間が長い |
アジャイル開発 | ・アプリをリリースし、運用を始めてから柔軟に追加開発できる ・予算をコントロールしやすい |
・全体の舵取りが非常に重要 ・トータルでは費用が低いわけではない |
比較記事はこちら
4. 「いいとこどり」ができるローコードでのアプリ開発なら
BackAPp では創業以来おそよ 200 社のクライアントに対してフルスクラッチでの iOS/Android 開発を手がけてきました。
一方で、フルスクラッチでのアプリ開発が必ずしもすべてのお客様に適切ではないと考えており、開発経験をパッケージに落とし込んで安価に構築するというサービスも提供し始めました。
とはいえ、フルスクラッチ開発の経験と技術力があるので、ただパッケージとしてノーコードで提供するだけではなく、お客様の「かゆいところに手が届く」アプリを作るため、一定の追加開発・カスタマイズを想定したローコードという方針をとっています。
「ノーコードとフルスクラッチ以外のプランを提案してほしい」「予算を抑えつつある程度はカスタマイズもしたい」という場合はぜひ一度お気軽にご相談ください。
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