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Webメディアをアプリ化する意味とは?「iOS/Android 版オウンドメディア」にメリットはある?

アプリのメリット/できること
2021.06.21
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    ディレクターの高橋です。
    一昔前に比べるとかなり落ち着きましたが、今やどんな業種でもオウンドメディアを活用している企業が増えています。私自身もキュレーションメディアの編集やオウンドメディアの編集長の経験がありますが、当時は軌道に乗せるまで社内での理解を得ることに苦労した思い出があります。

    Web メディアの目的は、大きく分けて

    • 単体でのマネタイズ(人を集め、広告を出稿。事業型)
    • 自社のサービスや製品への誘導(お役立ち記事→我が社の○○ならこのようなとき便利に〜という流れ。一般的なオウンドメディア)
    • 顕在化していない潜在的な、あるいはまだ世の中にないニーズを開拓、新規顧客の “創造”(スタートアップ的)

    という三種類に分かれます。

    ※ 膨大な情報をまとめるポータルサイトは除外し、ある程度のボリュームがあるテキストや動画コンテンツが並ぶメディアを想定しています。

    iOS/Android アプリを開発しようという話になるのはおそらく一番目、つまり事業として成立させたいメディアが大多数だと思います。そこで、今回はある程度のグロースを目指している事業型 Web メディアのアプリ化、その意味やメリットについて考えます。

    メディアとアプリの相性自体はいいが、まずは事業の成長ありき

    Web とアプリの役割の違いは、ざっくりと言えば下記の通り、カスタマージャーニーのどこで機能するかということです。メディアの場合、ゴールは=広告記事の閲覧や記事広告の CV(サイトへの遷移、アプリのインストール、何かの登録など)です。

    広告によって運営されるものであれば、記事広告を公開した際にプッシュ通知で届けることができるのは大きなメリットとなります。Twitter や Facebook よりも流れてしまう確率が低いだけでなく、ユーザーがある程度余裕がある、記事をしっかり読めるタイミングで開いてくれることも大きいです。

    また、普段からアプリで自社メディアの記事を読んでくれるユーザーはエンゲージメント(セッションあたりの記事閲覧数=滞在時間、記事のブックマーク数など)が高い状態なので、普段の運営を頑張ってアプリのアクティブユーザーを増やしておくと、記事広告で設定した CV に到達しやすくもなるでしょう。

    ただ、Web メディアをアプリ化した際のメリットを享受できるのは、あくまで「Web の時点で十分なトラフィック(=広告収入)と、高いエンゲージメントがあること」が条件です。

    ユーザーにとっては「SNS アカウントをフォローし、SNS 利用中に新着記事を発見する」関係性が気楽

    プッシュ通知があるとはいえ、毎日使うような SNS アプリなどに比べると一企業のメディアアプリを起動してもらうハードルは高いといえます。

    読者目線でも、気になるメディアを見つけた場合のアクションとしてはまず「公式 SNS アカウントをフォローする」ことが一番目に来ると思います。Facebook/Twitter/Instagram などの中から、普段よく使っているものを選ぶことができるのもメリットです。

    iOS/Android アプリをインストールしてもらうという行為は、カスタマージャーニーでいえばこの先に位置します。つまり再訪ユーザー数、具体的には SNS からの流入や検索エンジンからの指名検索(メディア名での検索)が少ない場合は、そもそもアプリをインストールしてもらうことが大変になります。

    「アプリを開いて情報収集」の時間は、大手ニュースアプリとの戦い

    最新情報・お役立ち情報を入手するためのメディアアプリというくくりでは、Gunosy、スマートニュース、Newspicks など、プラットフォーマーも多く存在します。

    そして、ユーザーが通勤電車の中やランチタイムの待ち時間、眠る前の休憩中にスマホで「情報収集」をする際には、あなたの運営するメディアのアプリよりも、キュレーション(まとめ)してくれている大手アプリのほうが便利なのです。

    とはいえ、古くから「ヤフトピ砲」などと並んで「グノシー砲」などと言われてその圧倒的な効果が注目されてきたように、「ウチの記事はウチのサイト・アプリでしか読めません」と鎖国するわけにもいかない時代です。そうなると、「大手アプリと並んで、スマホのホーム画面にアイコンを置き、定期的に開いてくれるブランド」が必要になることがなんとなく想像できるのではないでしょうか。

    つまり、グループ会社などが iOS/Android のシステムを所持しており「低コストのグロース戦略として」アプリを開発できるといった特殊なケースをのぞき、Web メディアのアプリ化が検討されるのはかなり後のフェーズになると考えられます。

    iOS/Android の開発・運用予算を回収できるほど効果が出るか?

    メディアアプリの場合、市場の中のシェアを広げてグロースさせるための施策かと言われると微妙なラインです。iOS/Android アプリが好調でシェアが拡大する例はありますが、Facebook からのロングテール流入で稼げた前時代に比べると検索流入(SEO 施策)の重みが増していますし、UU 数自体は Web 施策やオフライン施策なども等しく重要となり、負荷が分散しているのではないかと思います。

    重要なことは、アプリ化によって増える広告収入が、運用のコスト(投資)を上回れるかです。 アドセンスを貼るようなステルス運営のゆるいアプリならまだしも、“ちゃんとした” メディアアプリは PV さえ増えれば収入も増えるというわけではありません。

    キュレーションメディアの運営企業で働いていた際、黒字化を目指す中で iOS/Android アプリの開発を検討したこともあります。ただ、そのときはアプリの相場を知らなかったので、見積もり金額を聞いて衝撃を受けました(苦笑)。

    安易にアプリ化して App Store / Google Play のレビュー欄が悲惨なことになっている事例も共有されていたので、それでは意味がないという話になりました。そして実績のある企業に依頼しようと思うと “そこそこ” のお値段がします。BackApp で仕事をするようになり、代表に当時の話をしても「ちゃんとつくるとそれくらいはかかる」とのことで、アプリは難しいものだなぁと思いました。

    ※参考:メディアアプリが簡単につくれます!という格安パッケージにはリスクがあったりもします

    もちろんイニシャルのコストだけでなく保守運用の費用もかさむことはわかっていましたし(Web の運用経験はあるメンバーでしたし)、ちょっとこれは相当なトラフィック=広告収入の見込みを立てないと難しいねぇという結論に至りました。

    「バーティカルメディアなら UU よりもエンゲージ重視で見れるのでは?」

    もちろん、「不動産投資に興味がある方向けに、専門家監修の読み応えある記事を配信するメディア」のように、ニッチなジャンルでリテラシーの高い読者を集める場合は別です。しかし多くの場合、広告ビジネスとしてメディアを運営する際はむしろジャンルを “広げる” ことが圧倒的に多くなります(新卒就活のメディアが中途採用にも広げる、フィギュア・模型の販売者がサブカルチャーグッズ全般に広げるなど)。

    また、たとえば妊娠後の時期に応じて細かく記事をストックしているママリでは、Web メディア上に情報を網羅しているものの、アプリでは “相談できる” という機能を押し出しており、メディアではなく相談アプリになっています(※リリースは相談ベースのアプリ/Web が先で、メディアとしての Web はもともとオウンドメディアとして企画されています)。

    つまり、専門性の高いバーティカルメディアであるほど、Web メディアで獲得したユーザーをそのまま「メディアアプリ」に流すべきかどうか、いっそ別の事業形態に転換するのはどうか…という視点も重要になるのです。

    「これからのメディアは物販モデルで収益化だ!」という論調の衰退

    いろんな事件などもあってバイラルメディア・キュレーションメディアのブームが終わった頃、というよりはもっと前から、メディアコマースに対する期待度はかなり高い状態でした。

    しかし、考えてみればシンプルな話で、オシャレなインテリアのカタログなどそれ自体が読んでいて楽しいジャンルをのぞき、"買い物をするために本(アプリ)を開く" タイミングと、"情報を収集するために本(アプリ)を開く" タイミングはシームレスではありません。新しい商品・サービスの情報を入手した記事の末尾に “気になる(ブックマーク)” ボタンがあれば押す人は多いですが、“購入(決済)” ボタンがあっても押す人は多くありません。

    2019 年では巡り巡って原点回帰、つまり「メディアは広告枠を売って収益化するものだ」という論調が再び強まっています。ネイティブアドも PR 表記に関する云々が話題になったようにグレーな部分はありますが、どの時代も安定して収益が上がってきたと考えれば軽視すべきでないことは確かです。

    国内では日経電子版が対応。PWA という選択肢は普及するか?

    Web メディアにとって、読み込みの高速化は至上命題です。Google の AMP(あらかじめ用意されたキャッシュを読ませるため超高速)はもともと記事ページの高速化のために提供されましたし、そもそも Google 自体が、「Web は低速通信時でもすぐに読み込めなければならない」という理念を持っています。

    Google が AMP とともに普及を進めている「PWA (Progressive Web Apps)」は、表面だけを見ればメディアとはかなり相性が良いです。「PWAMP (サイトを PWA として開発し、article ページを AMP に)」まで Google のビジョンをフォローしきるのは開発コストがかかりますが、やりたいことは伝わってきます。

    PWA はアプリとは言いながらも Web アプリなので、「モバイル端末で開くとアプリのように感じられる Web」と考えるとしっくりくるかと思います。iOS/Android(WebView のハイブリッドアプリ)を開発するまでのつなぎであり、Web サイト自体の改善にもなります。

    ハイブリッドアプリを開発すると毎年の iOS/Android のアップデート対応など保守・運用のコストがかかりますが、PWA であれば Web のバックエンド中心の部隊で保守することができます。

    Googleが推すPWAにiOSもそれなりの対応?メリット・できないことを改めて整理
    PWA の発表自体から実は 7 年ほど経っていますが、このニュースによって日本国内でも PWA が再注目され始めています。そこで、今回は iOS/Android アプリ開発案件が多い会社の立場から、PWA の定義・役割・メリットなどまず知っておきたい情報をまとめました。
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    現状最大の問題は iOS でネイティブのプッシュ通知が使えないことだと言われていますが、セールの通知が収益の柱である EC などとは異なり、致命傷とはなりません。

    ただ、日経電子版の事例でも開発の苦労が語られるなど、今後どれだけ PWA の開発・運用に精通した開発者が増えるかが注視すべきポイントだと思います。

    僕らはSPA構成ではないので、ページをキャッシュするためにService Workerを使ってキャッシュの処理をゴリゴリと書きますが、ネイティブアプリの開発では手元にJSONを置いておいてロードするだけで済みます。日経では、開発の手間を考えるとやはりまだネイティブアプリの方が上だと思います。
    引用:PWAで表示速度が2倍に! スピード改善を妥協しない日経電子版に学ぶ、PWAのメリット&デメリット

    メディアアプリのメリット・Web をアプリ化する意味についてのまとめ

    • メディアの収益モデルは広告枠の販売に回帰している傾向
    • 滞在時間の長い・記事広告へのアクションが期待できる “濃い” ユーザーを増やすにはアプリ化は有効だが…
    • アプリを使ってくれるユーザーの母集団は「SNS から定期的に来訪してくれるリピーター」にある
    • Web でリピーターを獲得した次のフェーズとして、投資的に検討されるもの
    • 専門性が高いメディアの場合、そもそも単純に「メディアアプリ」にする意味があるのかという発想も重要
    • Web のカイゼンとして PWA (あるいは PWAMP) 化も一考の価値はあり

    どんな企業もとりあえずオウンドメディアに挑戦していたような時期は過ぎ、アフィリエイトも年々苦しくなってきています。数年前に比べると、Web メディアのブームは一段落という雰囲気もあります。

    ただ、メディアの大型バイアウトのニュースは経営層の間で定期的に話題になってきたように、新規メディアの立ち上げ自体が激減しているわけではありません。iOS/Android アプリ制作会社としては「絶対にやるべきです」と言える領域ではないですが、お悩みのことがありましたら一度ご相談ください。

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