「それ、事業として成立しますか?」アプリ事業の計画で重要な“ビジネスモデル”と“売上・利益の出し方”

(2020 年 9 月更新)

ディレクターの高橋です。

「先行する同業が伸びているから市場自体は大きいはず」「経営陣からせっつかれている」——そんな雰囲気のままでアプリを開発しても、投資分すら回収できずに終わってしまう事例が多々あります。

アプリが失敗する原因は大きく分けてもいくつか種類がありますが、「そもそも事業計画書の時点で事業として成立していない」という場合もあるように感じています。

私は Web 業界で新規事業をいくつか経験してきましたが、アプリ事業はやっぱり難しいと実感することが多かったです。

そこで、今回は Web サイトのアプリ化というよりは事業としてのネイティブアプリを想定し、「そもそも今検討しているアプリ事業は、ビジネスとして実現可能なのか」という視点で最初に整理すべきポイントをご紹介します。

新規事業を何度も経験されている方であれば当たり前の内容ですし、「いやいや、こういう知識よりも本質的に大事なのは〜」という話で盛り上がることもできると思いますが、まず最初は基本から整理しておきましょう。

ビジネスモデル別・アプリ事業において売上を出すパターン

iOS/Android アプリから生み出される売上は

  1. 広告(バナー・動画)
  2. アプリ内のアイテム・コンテンツに対する都度の課金
  3. 月額・年額の有料会員(サブスクリプション)
  4. プラットフォームとしての利用・仲介手数料
  5. 自社製品・サービスの直販(間接的な売上)
  6. データ販売・マーケティング調査費

に分かれます。キャッシュポイントは複数もつことができ、たとえばゲームアプリでは

  • 大規模ソーシャルゲーム = ガチャやアバターを中心としたアプリ内課金 + 再生してもらえばちょっとした特典を付与する 30 秒程度の動画広告
  • カジュアルゲーム = 強制的に表示するバナー&動画広告 + 一定金額を支払うと永久に広告を非常時にできる「買い切り(≒無期限の有料会員)」パス

という使い分けが主流です。

アプリ内の取引・ユーザーのデータの統計を取り、マーケティングデータとして販売する形のみ特殊な形となりますが、基本的なアプリの売上の考え方は

  • 売上 = アクティブユーザー(AU) × 平均単価

という計算式になります。アクティブユーザーとは、「アプリをインストールした上で、継続的に起動してくれる」状態にある顧客、すなわちファンになってくれた優良顧客ということです。

そして、さらに分解していくと、

  • 広告モデルの売上 = AU 数 × 訪問頻度 × ページビュー数(≒ 滞在時間)
  • アプリ内課金モデルの売上 = AU 数 × 課金ユーザーの割合 × 購入単価
  • 直販・EC 型の売上 = AU 数 × 購入頻度 × 平均単価
  • 仲介手数料モデル型の売上 = 取扱総額(AU 数 × 取引頻度 × 取引単価) × 利率
  • 有料会員型モデルの売上 = 有料会員数 × 会員料金

という風に考えることができます。アプリ事業を設計する際は、まずこれらのパターンの中からキャッシュポイントを考えます。

アプリ内課金はストアに手数料が引かれる?

小売店がEC ショッピングモールに出店する際、飲食店が出前サービスに出店する際と同様に、iOS アプリは App Store、Android アプリは Google Play に対して、アプリ内課金で得た売上の約 3 割を収めることになります。

この 3 割前後の手数料は UberEats など他業種でも同等なので、Apple・Google 両社が「ぼったくり」といえるわけではありません。また、現在は iOS/Android ともにアプリをストアに公開する際には審査を必須にしており、プラットフォーマーとして検品のコストをかけてユーザーの安全性を担保するという大義もあります。

とはいえ、事業者にとってはかなり苦しい経費となるため、有名ゲームアプリ「フォートナイト」を開発する Epic Games は、この方針に抵抗して Apple と抗争をはじめました(複雑なので詳細は割愛します)。

参考:https://www.gizmodo.jp/2020/08/bye-bye-apple-tax.html

また、よく混同されますが、手数料の対象はアプリ内で利用するデジタルコンテンツです。最もわかりやすい例は、フォートナイトのようなゲームアプリ内で自身を強化するアイテムです。対して、マクドナルドやスターバックスの事前決済(モバイルオーダー)は、現在アプリ内で手数料なしに使われています。

さらに 2020 年 9 月、iOS 14 のリリースにともなってガイドラインが更新され、「1 対 1 のリアルタイムの体験(レッスン・相談)は Apple のアプリ内課金を使わなくてよい=手数料がかからないことになりました。 この例ではオンライン家庭教師・医療相談・不動産の内見・フィットネス講習が挙げられています。

3.1.3(d): Person-to-Person Experiences: If your app enables the purchase of realtime person-to-person experiences between two individuals (for example tutoring students, medical consultations, real estate tours, or fitness training), you may use purchase methods other than in-app purchase to collect those payments. One-to-few and one-to-many realtime experiences must use in-app purchase.

出典:App Store Review Guideline updates now available (September 11, 2020)

このあたりは今後海外の事例も見ながら、(UberEats の各店舗の値決めのように)手数料を見越した金額を設定しておく、あるいは別の課金アプローチを考えることも必要になりそうです。

広告収入モデルの再評価をするにあたって問題となる IDFA(iOS 14 アップデート後)の扱い

アプリ事業はソーシャルゲーム業界を筆頭にハイリスク・ハイリターンのイメージが強いですが、ちょっとした便利ツールやカジュアルなゲームなど、小規模な事業として広告収入を中心に運営する企業および個人開発者も多いです。

iOS/Android アプリの広告収入モデルは、Web よりもユーザーのターゲティングが細かくでき、一人あたりの広告単価向上が見込めるとされてきました。

しかし、2020 年秋から一斉に iOS が 14 にアップデートされていくと(※追記:アップデートが延期され、2021 年から実施になりました)、アプリのユーザーを識別するデバイス固有の IDFA を使って広告を配信するためには、各自の許諾が必要になります。

また、この端末 ID 自体の扱いがセンシティブになることで、複数の広告配信事業者をまたいだセグメント配信自体が難しくなります。少し乱暴な言い方ですが、事業主にとっては iOS アプリ事業で広告収入を柱にするのはかなりリスキーな時代になったといえます。

参考:iOS14の衝撃。モバイルマーケターはこの激変を今すぐキャッチアップせよ

iOS14 以降でも広告収入をある程度得る場合は

  • プッシュ通知・IDFA の許諾を得るための UX 設計・オンボーディング
  • あるいは広告効果をあげられる独自での手法

に注力する必要があります。

アプリが “まわる” ようになるまでにかかる初期投資+運用コストを把握しておく

当然ながら事業の利益は売上からコストを差し引いたものになるため、毎月かかるコストを想定して事業計画を立てることも大切です。

開発コスト

まずは iOS/Android 両面の開発費です。スクラッチ(オーダーメイド)で開発する場合は数百万〜数千万円の投資が必要なので、まず小規模にスタートするならテンプレート・パッケージサービスを使うほうが安全です。

制作会社に発注する際は外注費用として考えやすいですが、社内のスタッフが稼働する際も同様に見積もりましょう。「自社の社員を使えばタダだから」という考えで毎月の状況を計算するようになると、後に苦労することがあります。

参考:【開発費用の相場・目安とは】iOS/Androidアプリの見積もり金額の考え方と、外注・委託時に意識していただきたいこと

運用コスト

アプリ事業で重要な運用コストは

  1. インストール促進 = 広告・実店舗での誘導
  2. リテンション(再訪〜定着)促進 =初回訪問者へのチュートリアルなどのオンボーディング、および広告・プッシュ通知など定期的な運用施策
  3. ゲストユーザーの課金ユーザー化(決済手段の登録・連携含む) = UX 改善・アプリ内メッセージなどの運用施策
  4. 不具合の修正や、毎年ある iOS/Android のアップデート対応

にかかる実費と人手です。

まず事業が最低限成立するよう、数万人にアプリをダウンロードしてもらうためには、ある程度の広告費や社内スタッフの人件費がかかります。

また、インストールしてくれた新規ユーザーのうち、一週間以内に再訪してくれる割合は数割程度です。 アプリの売上を伸ばすために重要な指標はあくまで “アクティブなユーザー数” ですので、「○ 万人がダウンロードしてくれたから、ひとまず大丈夫」というわけではなく、その初回ビジターに定着してもらうためのチュートリアルやリテンションのための施策が重要です。

また、ゲームアプリに限らず、定着した無料ユーザーに有料会員登録や初めての購入(事業としての目的)まで到達してもらうまでにも壁があります。

専業でユーザーのエンゲージメントを担当するマーケター・運用担当者を起用するのが難しくても、リソースはできる限り割くようにしましょう。iOS/Android 事業はコスト負荷が高いだけでなく、一度「見限られた」休眠ユーザーに再度アプローチして使ってもらうことも簡単ではないからです。

参考:

単月黒字化・初期投資の回収までに “耐えられる” だけのキャッシュフローや社内の理解が必要

開発費用+運用コストを考えると、iOS/Android アプリの開発〜リリース直後には何かと出費がかさむことは想像できるかと思います。

そして、アプリを公開し、宣伝をして、ある程度のユーザー数がついたとしても、すぐに売上が立つわけではありません。

ですので、アプリ事業を継続させるためには、細かく雑多になりますが

  • まずはスモールスタートをして、マーケットがあるかを確認しつつ PMF を狙う
  • アプリ経由の売上・利益だけを評価軸にせず、既存事業への影響など別の評価軸もレポーティングし、赤字でも継続する意義を社内に理解してもらう(社内政治に近い話ですが…)
  • 成長フェーズを区切り、撤退戦略を明確にしておく
  • 借り入れ先を増やす・受託事業をまわすなどキャッシュ・フローを改善する体制をつくり、資金ショートのリスクを減らす(急成長を求められているエクイティファイナンスのスタートアップなどでなければ)

といったところもポイントになります。

これらのバランスを考えたとき、アプリ事業は「ハイリスク・ハイリターン」になるのか?

アプリはインストールという壁があるため、Web や SNS に比べるとユーザー数は低くなります。ですので、一般的にはいかにして “頻度” や “単価”、あるいは “課金率” を高めるかが重視されます。

実際に、一見すると「これで利益が出ているの?」と思うようなユーザー数でも、事業として十分な売上が立っていることもあります。

参考:4万ダウンロードでも事業は黒字に。ゴミ拾いアプリ「ピリカ」が語る1,700万のポイ捨てデータを集めてわかったこと。

ただし、そもそも訪問数が少なすぎると、コンテンツがいくら優れていても収益額は伸びません。ユーザー数を第一に考えるとまではいかずとも、事業として成立するラインを見極めてまず目標人数を集めることが重要です。

事業計画書を書き始める前に、ビジネスとしてまず考えるべきポイント

アプリに限らず、新規事業を生み出す際にまず考えるべきこと、調査すべきことは

  • そのアプリを開発したとして、使いたがる顧客がいるのか
  • 使いたがる顧客がいたとして、十分な数なのか
  • 十分な顧客がいたとして、売上につながるのか
  • 十分な売上が出るとして、運用・維持費を上回るのか
  • 初期投資分を回収するまでのキャッシュ・フローは十分にあるか
  • 何を競争力として差別化し、この計画を実現させるのか

という点です。

ただ、近年では、急成長したサービスの舞台裏の「企画の段階ではほとんどの人に反対された(一部の人だけが賛同・投資してくれた)」というエピソードや、「良いアイデアが多数決から生まれることはない」といったロジックも共有されてきました。

ということで、市場やニーズがあるかどうかはスモールスタートをしてみてリアルなデータ・ユーザーの声から探るのも一つの手です。

市場の現況(3C)は把握しておく

最低限知っておくべきは、どれだけの人や金額が動いている市場に向けて公開するアプリなのかということです。会社・事業として目指したい売上規模があると思いますが、目標がそもそも達成できる数字なのかは市場規模に大きく影響されます。

アプリの場合ですと、App Store と Google Play を見れば競合となるすべてのアプリの「おおまかなダウンロード数」「ユーザーからの評価」を見ることができます。さらにユーザーのレビューを細かく見ていくと、顧客が何を求めているのかを想像することもできます。

参考:同業他社のアプリってどうなの?まずは App Store と Google Play から競合調査をしておこう

そして既にある程度の結果を出している上場企業や成長企業であれば数字を公開していることが多いので、事業計画を考える際には必ずチェックしておきましょう。

どちらも必ず正確な数値とはいえませんが、競合のシェア、DL 数、レビューから売上を推定することで、事業計画書を書く際にある程度は具体的な目標を立てられるようになります。また、3C 分析などマーケティングのフレームワークを使うことで、自社の戦略が整理しやすくなります。

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引用:https://dyzo.consulting/2249/

ユーザーの声と自社の中での「雰囲気」の乖離

新規事業・アプリ事業がスタートすると、想像していなかったような層のユーザーがついてくれたり、時には想定されていない使い方・気に入られ方をすることも出てきます。

そこからより良いアプリにしていくため、既存の問題を改善するためにユーザーの声を聞くことはもちろん大事なのですが、その手法や「聞きすぎる」ことにはリスクがあります。

たとえば対面でインタビューをするとリアルな意見がわかりそうではありますが、課題解決のためのヒントを得るのは意外と難しいとされています。

1, ユーザーは自分自信では問題や不都合に気づいていない
2, インタビューという形式の中でユーザーは「頑張って答えよう」とする為、普段の考え、思いとは異なる事を答えてしまう事がある
3, ユーザーは平気で嘘をつく
参考:https://note.com/kenmochitakashi/n/nbde1f5a1b77b

もちろん、数字はすべてを物語るわけではなく、データに現れないニーズや問題を探るためにはユーザーの声が欠かせません。

ですので、「データをもとに客観的な改善案をまとめる」アプローチと、「ユーザーの声からヒントを見つけていく」アプローチをバランスよく組み合わせることが重要になります。

スマホアプリ事業を始める前に計画的に考えるべきことまとめ

  • Web とは全く異なるため、まずはアプリ業界のルール(収入モデルやコスト)を把握する
  • アプリストアと公式発表を見て、先行企業のユーザー数と評価を “おおよそ” でも把握しておく
  • アプリ事業の売上を左右するのは「優良顧客(自社のファン)の数」「起動頻度」「単価」
  • 公開後にかかるコストを把握し、予算に組み込んでおくことで予期せぬ出費を防ぐ
  • ネイティブアプリは「ある程度投資して、それ以上に稼ぐ」モデルになる
  • 事業スタート後は客観的なデータとユーザーの声の両軸から PMF を模索していく

iPhone/Android アプリの話というよりは新規事業の話になりましたが、アプリビジネスを成功させるためには地に足をつけた戦略設計が重要です。

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