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「それ、事業として成立しますか?」アプリ事業の計画で重要な“ビジネスモデル”と“売上・利益の出し方”

アプリにかかる費用について
2022.03.25
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    (2022 年 3 月更新)

    「先行する同業が伸びているから市場自体は大きいはず」「経営陣からせっつかれている」——そんな雰囲気のままでアプリを開発しても、投資分すら回収できずに終わってしまう事例が多々あります。

    アプリ事業は初期費用+ランニングコストに加え、運用の手間もかかるため、事業計画書を書く段階でしっかりと準備しておくことが重要です。

    そこで、今回は Web サイトのアプリ化というよりは事業としてのネイティブアプリ開発を想定し、最初に整理すべきポイントをご紹介します。

    1. iOS/Android アプリの事業計画を立てる流れとステップ

    • 3〜5 年間の売上目標を立てる
    • 必要なユーザー数を想定する
    • 初期費用とランニングコストの目安を想定する
    • アクティブ率・定着率を上げる施策および運用体制を考えておく

    アプリ事業を立ち上げる際によくある失敗パターンは、「ユーザーが定着してくれない」「運用の手が回らず、ユーザーを定着させるための十分な施策や分析ができていない」というものです。

    事前に年度ごとのユーザー数の目標を立てておき、施策や広告・PR 手段を検討しておくことで、社内で事業計画を固める際に運用のリソースも中に盛り込んでおくのがおすすめです。

    2. ビジネスモデル別・アプリ事業において売上を出すパターン

    iOS/Android アプリから生み出される売上は

    1. 広告(バナー・動画)
    2. アプリ内のアイテム・コンテンツに対する都度の課金
    3. 月額・年額の有料会員(サブスクリプション)
    4. プラットフォームとしての利用・仲介手数料
    5. 自社製品・サービスの直販(導線を作ることでの間接的な売上)
    6. データ販売・マーケティング調査費

    に分かれます。キャッシュポイントは複数もつことができ、たとえばゲームアプリではアイテムごとのアプリ内課金+動画広告という使い分けが主流です。

    2-1. 売上を作るのはアクティブユーザー数・率と CVR

    アプリ内の取引・ユーザーのデータの統計を取り、マーケティングデータとして販売する形のみ特殊な形となりますが、基本的なアプリの売上の考え方は

    • 売上 = アクティブユーザー(AU) × 平均単価

    という計算式になります。アクティブユーザーとは、「アプリをインストールした上で、継続的に起動してくれる」状態にある顧客、すなわちファンになってくれた優良顧客ということです。

    そして、さらに分解していくと、

    • 広告モデルの売上 = AU 数 × 訪問頻度 × ページビュー数(≒ 滞在時間)
    • アプリ内課金モデルの売上 = AU 数 × 課金ユーザーの割合 × 購入単価
    • 直販・EC 型の売上 = AU 数 × 購入頻度 × 平均単価
    • 仲介手数料モデル型の売上 = 取扱総額(AU 数 × 取引頻度 × 取引単価) × 利率
    • 有料会員型モデルの売上 = 有料会員数 × 会員料金

    という風に考えることができます。アプリ事業を設計する際は、まずこれらのパターンの中からキャッシュポイントを考えます。

    2-2. アプリ内課金はストアに手数料が引かれる?

    小売店がEC ショッピングモールに出店する際、飲食店が出前サービスに出店する際と同様に、iOS アプリは App Store、Android アプリは Google Play に対して、アプリ内課金で得た売上の約 3 割を収めることになります。

    この 3 割前後の手数料は UberEats など他業種でも同等なので、Apple・Google 両社が「ぼったくり」といえるわけではありません。また、現在は iOS/Android ともにアプリをストアに公開する際には審査を必須にしており、プラットフォーマーとして検品のコストをかけてユーザーの安全性を担保するという大義もあります。

    手数料の対象はアプリ内で利用するデジタルコンテンツです。最もわかりやすい例はゲームアプリ内で自身を強化するアイテムです。

    対して、マクドナルドやスターバックスの事前決済(モバイルオーダー)は、アプリ内のコンテンツに課金するわけではないので、現在は手数料がかかりません。

    さらに 2020〜2021 年に Apple は企業の手数料負担を低減すべく

    • Apple のアプリ内課金以外の、自社の決済システムを利用することを許可
    • 売上 100 万ドル未満の中小ビジネスに対する手数料を 15% に減らす「App Store Small Business Program」の開始

    という二つの方針を発表しました。

    参考:App Store外の課金手段を容認、態度を軟化させたアップルの真の狙い

    オンライン家庭教師・医療相談・不動産の内見・フィットネス講習など、1 対 1 のレッスン・相談を行うアプリもアプリ内課金の対象から外れるなど、少しずつアプリ事業を立ち上げやすい環境になってきています。

    2-3. 広告収入モデルは IDFA によって苦境に?

    従来、iOS/Android アプリの広告収入モデルは、Web よりもユーザーのターゲティングが細かくできるため、広告単価が高いとされてきました。

    しかし、2021 年より、アプリのユーザーを識別するデバイス固有の IDFA を使って高精度の広告を配信するためには、ユーザーごとに許諾が必要になりました。また、この端末 ID 自体の扱いがセンシティブになることで、複数の広告配信事業者をまたいだセグメント配信自体が難しくなります。

    少し乱暴な言い方ですが、一定規模の iOS/Android アプリ事業で広告収入に依存するのはリスキーな時代になったといえます。

    参考:アップルに続きグーグルも、個人追跡制限の波紋(東洋経済 Plus)

    広告収入をある程度メインにする場合は

    • プッシュ通知・IDFA の許諾を得るための UX 設計・オンボーディング
    • あるいは広告効果をあげられる独自での手法

    に注力する必要があります。

    3. アプリが “まわる” ようになるまでにかかる初期投資+運用コストを把握しておく

    当然ながら事業の利益は売上からコストを差し引いたものになるため、毎月かかるコストを想定して事業計画を立てることも大切です。

    3-1. 初期費用= iOS/Android での開発コスト

    スマホアプリの場合、iOS/Android という異なる OS でシステムを開発することになります。フルスクラッチ(オーダーメイド)で開発する場合は数千万円規模の投資が必要です。

    近年ではテンプレート・パッケージサービスを使って初期費用を抑えるケースも増えています。

    また、スマホアプリは “無形固定資産” なので、減価償却や法人税についても念頭に置く必要があります(下記記事参照)。パッケージを利用したノーコード開発、機能の半分程度でパッケージを利用するハーフスクラッチ開発の場合は法人税の負担が軽くなるというメリットもあります。

    とはいえ、パッケージを利用する場合はできることやカスタム範囲が限られてくるというデメリット・リスクもあります。費用を抑えることが目的になってしまい、本来やりたいことができない価値があいまいなアプリだけが残る…という失敗パターンには注意しましょう。

    関連記事:

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    3-2. どんなビジネスモデルでも運用コストの負担は大きい

    アプリ事業を軌道に乗せ、売上を確保するためには、

    1. ユーザーの新規獲得
    2. 初回訪問したユーザーに定着してもらう
    3. 定着したユーザーに購買・申し込みなど企業側が期待する行動を取ってもらう

    という 3 つのフェーズそれぞれに対するアプローチが必要です。

    一般的に、iOS/Android アプリをインストールした新規ユーザーのうち、一週間以内に再訪してくれる割合は数割程度です。ほとんどのユーザーは初回だけで終わり、起動後に “休眠” してしまいます。

    はじめてアプリ事業を立ち上げる際は新規ユーザーの獲得を強く意識しがちですが、獲得したユーザーを定期的に再訪してくれるアクティブ状態にするための施策が最も重要です。

    具体的には

    • PUSH 配信・アプリ内メッセージ・コンテンツ配信などの施策を行う運用担当のリソース
    • アプリ自体の品質改善、追加開発を行う開発チームのリソース(外注の場合はコスト)
    • 休眠ユーザーの再訪を促進する広告費用

    は、事業計画書を書く時点で想定しておく必要があります。

    まずは一定のアクティブ率を担保する工夫をしてから、売上目標を達成するだけのユーザー数を試算し、集客施策を考え、広告費用を試算するという流れが一般的です。

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    3-3. アプリ事業は投資先行になるため、キャッシュ・フローの確保(社内での理解)も重要

    初期開発費用+運用コストを考えると、iOS/Android アプリの開発〜リリース直後には何かと出費がかさむことは想像できるかと思います。

    そして、アプリを公開し、宣伝をして、ある程度のユーザー数がついたとしても、すぐに売上が立つわけではありません。

    ですので、アプリ事業を継続させるためには、

    • アプリ経由の直接的な売上だけを評価軸にせず、既存事業への影響など別の評価軸もレポーティングし、赤字でも継続する意義を社内に理解してもらう
    • 成長フェーズを区切り、撤退戦略を明確にしておく

    という準備も必要です。

    また、社内スタートアップなど、完全に資金面で独立した新規事業となる場合は特に

    • まずはスモールスタートをして、マーケットがあるかを確認しつつ PMF を狙う
    • キャッシュ・フローを確保し、資金ショートのリスクを減らす

    といったところもポイントになります。

    4. 事業計画書を書き始める前に、ビジネスとしてまず考えるべきポイント

    アプリに限らず、新規事業を生み出す際にまず考えるべきこと、調査すべきことは

    • そのアプリを開発したとして、使いたがる顧客がいるのか
    • 使いたがる顧客がいたとして、十分な数なのか
    • 十分な顧客がいたとして、売上につながるのか
    • 十分な売上が出るとして、運用・維持費を上回るのか
    • 初期投資分を回収するまでのキャッシュ・フローは十分にあるか
    • 何を競争力として差別化し、この計画を実現させるのか

    という点です。

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    4-1. ユーザーの声から「ニーズ」を理解する

    特に既存の事業と近い顧客層を狙って iOS/Android アプリを展開する場合は、既存顧客からアンケートを取ることも有効な手段です。

    ただ、「アプリが出るならどんな機能が欲しいか」「こんなアプリがあったら利用したいと思うか」など、直接的な質問をするのはあまりおすすめできません。

    1, ユーザーは自分自信では問題や不都合に気づいていない
    2, インタビューという形式の中でユーザーは「頑張って答えよう」とする為、普段の考え、思いとは異なる事を答えてしまう事がある
    3, ユーザーは平気で嘘をつく
    参考:https://note.com/kenmochitakashi/n/nbde1f5a1b77b

    どちらかといえば普段の生活スタイルや、生活の中で感じている不便なこと、不安なことなどを聞き出すようなアンケートがおすすめです。

    ターゲット顧客の普段の生活と、抱えている悩み・不満をイメージし、そこから企画を立て、ビジネスモデルを考えていくほうが事業計画はスムーズに進みます。

    4-2. 市場の現況(3C)は把握しておく

    最低限知っておくべきは、どれだけの人や金額が動いている市場に向けて公開するアプリなのかということです。会社・事業として目指したい売上規模があると思いますが、目標がそもそも達成できる数字なのかは市場規模に大きく影響されます。

    アプリの場合ですと、App Store と Google Play を見れば競合となるすべてのアプリの「おおまかなダウンロード数」「ユーザーからの評価」を見ることができます。さらにユーザーのレビューを細かく見ていくと、顧客が何を求めているのかを想像することもできます。

    他社アプリのダウンロード数を調べるには?ストア情報から競合調査をし、インストール数を増やす戦略を考えよう
    本記事では、アプリストアからわかる情報・わからない情報を整理し、企画段階で行うべき簡単な「競合調査」の方法をご紹介します。
    続きを読む

    また、3C 分析などマーケティングのフレームワークを使うことで、自社の戦略が整理しやすくなります。

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    画像出典:https://dyzo.consulting/2249/

    まとめ:スマホアプリ事業を始める前に計画的に考えるべきこと

    • Web とは全く異なるため、まずはアプリに関する最低限の知識をつける(ビジネスモデルや KPI、コストの種類)
    • ビジネスモデルを問わず、アプリ事業は「アクティブなユーザーの数と率」が鍵になる
    • アプリストアと公式発表を見て、先行企業のユーザー数と評価を “おおよそ” でも把握しておく
    • 顧客の生活様式やニーズを掴み、定期的に起動してもらうための施策を考える
    • ユーザーの獲得以上に「定着・再訪してもらうこと」が重要なので、ユーザー獲得のための広告・宣伝費用だけでなく、再訪促進のためのリソースとコストも必ず確保しておく

    BackApp では、アプリ開発だけではなく事業企画の段階からパートナーとして相談に乗らせていただくことも可能ですので、不安な点などがございましたらぜひお気軽にお問い合わせください。

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