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スマホアプリ開発の予算組みは五年計画? 減価償却・法人税など、長期的な事業計画に影響を与えるポイント

アプリにかかる費用について
2021.03.12
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    最近では、「iOS/Android アプリが必要だという現場の要望が多い」「LINE でやれることに限界を感じてきた」といった背景から、スピード感をもってアプリ事業を立ち上げたいという企業様も増えています。

    とはいえ、ネイティブアプリの開発と運用にはある程度の費用がかかります。ですので、できれば長期的な事業計画を立てた上で始めたいところです。

    さらにアプリ開発では事業計画を立てる上でも Web とは異なるポイントがあります。本記事では新規アプリ事業の予算組みを控えている担当者の方向けに、そんなポイントをご紹介します。

    1. 意外なところで現れる「Web とアプリの違い」

    Web サイトや iOS/Android アプリを構築してデジタルマーケティングを行う上では、ある程度の金額の初期費用がかかってきます。

    Web 上に公開するサイトやオウンドメディアへの投資は「広告・宣伝費」として計上できる場合もあります。しかし、iOS/Android アプリはソフトウェアの一種で、「無形固定資産」として扱われます。

    つまり、企業としてソフトウェアを新規構築すると、3〜5 年で減価償却していくことになります。(※ 3 年で償却するものは研究開発など限られたケースのみで、基本的には 5 年)

    ですので、“事業” としてアプリを企画する場合は、 約 5 年という長い目で事業計画を立てて予算組みをする必要があります。

    2. スクラッチ開発(ゼロからの構築)とパッケージでの予算組みの違い

    アプリをどんな手法でつくるかによって、費用のかかり方は大きく変わってきます。

    近年では「ノーコード」を掲げるパッケージ型のクラウドサービスも増えており、オーダーメイドで作り込むフルスクラッチ開発だけではなくなっています。

    ここでは社外のベンダーと契約し、小売企業としての一般的な iOS/Android アプリを開発するケースを例として考えてみます。

    2-1. フルスクラッチ開発での初年度費用

    • 初期費用 3,000 万円を支払い、iOS/Android アプリを構築
    • 月々の保守・運用費用を 50 万円
    • 5 年間での減価償却

    と仮定すると、初年度で会計上の「費用」として経費となるのは、

    • 保守運用費用の全額: 50 * 12 = 600 万円
    • 初期費用の1/5: 3,000 * 1/5 = 600 万(2,400 万円は翌年に繰越)

    のみです。一方で、高額なアプリという資産に対する「法人税」がかかるという視点もあります。

    ベンダーに支払う初期費用、そして法人税と経費の割合によって、iOS/Android アプリ事業を始めた初年度の負担が大きくなることがフルスクラッチ開発のデメリットとしてよく挙げられます。

    2-2. パッケージを利用する際の初年度費用

    • 初期費用として 500 万円支払い、ノーコードで iOS/Android アプリを構築してもらう
    • 月々の利用料金を 100 万円とする

    といった場合、初年度にベンダーへ支払う金額は 1,700 万円となります。

    この中では、

    • 月額利用料全額: 100 * 12 = 1,200 万円
    • 初期費用の1/5: 500 * 1/5 = 100 万(400 万円は翌年に繰越)

    と、ほとんどのコストを「費用」として計上できることはメリットです。

    3. アプリの開発・運用費用を五年の事業計画の中で考える

    3-1. 事業立ち上げ初期の負担は スクラッチ開発>>パッケージ導入

    上記のように、フルスクラッチ開発で iOS/Android アプリを構築する場合、事業の立ち上げ初年度に大きな負担がかかります。ですので、事業計画を立てる上では投資を回収していくという視点も必要になります。

    近年「ノーコード」「クラウド(パッケージ)サービス」が普及してきた背景には、はじめてアプリ事業を立ち上げる企業との相性の良さがあります。

    新規事業としてまずはスモールスタートをしたいという場合は、スクラッチ開発に比べてパッケージ契約をするほうが動きやすいからです。

    とはいえ、3〜5 年という視点になると、スクラッチ開発/パッケージ契約どちらも総額のコストは想定しづらくなります。

    3-2. 一方で、3〜5 年スパンの総コストはスクラッチ・パッケージともに想定しづらい

    パッケージ型の場合、1〜2 年目あたりまでのコストが低くなる一方で、

    • ユーザー数など規模が大きくなったときに月額料金が上がる場合がある
    • 顧客の要望に応えて品質を改善しようとしても、カスタム性に限界があって実現できない場合がある
    • カスタム性の限界から乗り換えあるいは作り直しをする場合、また新たに費用がかかる(イチから作り直すことが多い)

    というリスクもあります。

    初期費用を抑えながらアプリを構築でき、リリースしてから拡張していけるのがパッケージ(ノーコード)のメリットですが、カスタムできる範囲には限界があります。

    img 図のやつ

    アプリ事業を成功させるためには、ただソフトウェアに毎月の利用料金や保守費用を支払うだけではなく、運用およびデータ分析を元に、システムの改善に人手を割くことも重要です。

    そして、マーケティング・運用や品質の改善といった「成果を出すための運用コスト」は、事業計画を立てる時点では想定しづらいという面があります。

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    3-3. 今や「ノーコードかフルスクラッチか」という二択の時代ではない

    近年では、基本部分をパッケージで用意して開発費用(初年度の負担)を抑えつつ、半分程度を独自に構築してカスタムしやすくする「ハーフスクラッチ開発」という手法も少しずつ増えてきています。

    完全なるノーコード開発に比べると初期費用は上がりますが、「顧客の声を反映してアップデートしたいのにカスタムできない」という事態に陥るリスクは減少します。

    さらに「まだ不確定なことが多く、アプリを出してからの顧客の反応や経営戦略によっては今の企画を軌道修正する可能性がある」というケースでは、走りながら作ることを前提とした「アジャイル開発」という手法も増えています。

    アジャイル開発は途中で軌道修正がしやすい上に、毎月の開発費用の上限を決められることがメリットです。

    つまり、iOS/Android アプリの事業計画を立てる上では、「パッケージかフルスクラッチか」という二択ではなく、さまざまな開発手法の特長・メリットを知った上で、自社にとって最適なものを選ぶことが重要になります。

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    4. まとめ

    • iOS/Android アプリは「ソフトウェア(無形固定資産)」扱いなので、減価償却の対象
    • 3〜5 年スパンでの予算組みおよび事業計画が必要
    • フルスクラッチ開発では初年度の負担が大きく、事業計画に影響を及ぼす
    • とはいえアプリ事業は運用しながらアップデートしていくものなので、3〜5 年スパンでのコストは想定しづらい
    • 現代のアプリ開発は「ノーコード(初期費用を抑えてすべてをパッケージ契約)かフルスクラッチ(ゼロからオーダーメイド)か」の二択ではなくなっている
    • 「トータルでコストを抑える」ために開発手法を選ぶのではなく、「自社に合う方式を選ぶ」のが吉

    Backapp ではフルスクラッチ開発やアジャイル型開発を中心としていますが、期間限定でのパッケージ型プランやハーフスクラッチでの開発も可能です。

    また、「スクラッチ開発とパッケージのメリットの違い」について詳しい資料もご用意していますので、ぜひ参考にしてください。

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