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「それ、事業として成立しますか?」アプリ事業の計画で重要な“ビジネスモデル”と“売上・利益の出し方”

アプリにかかる費用
2025.03.14
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    (2025 年 3 月更新)

    「先行する同業が伸びているから市場自体は大きいはず」「経営陣からせっつかれている」——そんな雰囲気のままでアプリを開発しても、投資分すら回収できずに終わってしまう事例が多々あります。

    アプリ事業は初期費用+ランニングコストに加え、運用の手間もかかる ため、事業計画書を書く段階でしっかりと準備しておくことが重要です。

    とはいえ、近年では 「顧客を理解する・つながるためのツール」として自社アプリを活用する企業も増えており、「アプリ経由の売上」だけが KPI になるわけではありません。

    そこで、今回は Web サイトのアプリ化というよりは事業としてのネイティブアプリ開発を想定し、最初に整理すべきポイントをご紹介します。

    1. iOS/Android アプリの事業計画を立てる流れとステップ

    • 3〜5 年間の売上目標を立てる
    • 必要なユーザー数を想定する
    • 初期費用とランニングコストの目安を想定する
    • アクティブ率・定着率を上げる施策および運用体制を考えておく

    アプリ事業を立ち上げる際によくある失敗パターンは、「ユーザーが定着してくれない」「運用の手が回らず、ユーザーを定着させるための十分な施策や分析ができていない」というものです。

    事前に年度ごとのユーザー数の目標を立てておき、施策や広告・PR 手段を検討しておくことで、社内で事業計画を固める際に運用のリソース・広告宣伝費も中に盛り込んでおくのがおすすめです。

    2. ビジネスモデル別・アプリ事業において売上を出すパターン

    iOS/Android アプリから生み出される売上は

    1. 広告(バナー・動画)
    2. アプリ内のアイテム・コンテンツに対する都度の課金
    3. 月額・年額の有料会員(サブスクリプション)
    4. プラットフォームとしての利用・仲介手数料
    5. 自社製品・サービスの直販(導線を作ることでの間接的な売上)
    6. データ販売・マーケティング調査費

    に分かれます。キャッシュポイントは複数もつことができ、たとえばゲームアプリではアイテムごとのアプリ内課金+動画広告という使い分けが主流です。

    2-1. 売上を作るのはアクティブユーザー数・率と CVR

    アプリ内の取引・ユーザーのデータの統計を取り、マーケティングデータとして販売する形のみ特殊な形となりますが、基本的なアプリの売上の考え方は

    • 売上 = アクティブユーザー(AU) × 平均単価

    という計算式になります。アクティブユーザーとは、「アプリをインストールした上で、継続的に起動してくれる」状態にある顧客、すなわちファンになってくれた優良顧客ということです。

    img - KPI

    そして、さらに分解していくと、

    • 広告モデルの売上 = AU 数 × 訪問頻度 × ページビュー数(≒ 滞在時間)
    • アプリ内課金モデルの売上 = AU 数 × 課金ユーザーの割合 × 購入単価
    • 直販・EC 型の売上 = AU 数 × 購入頻度 × 平均単価
    • 仲介手数料モデル型の売上 = 取扱総額(AU 数 × 取引頻度 × 取引単価) × 利率
    • 有料会員型モデルの売上 = 有料会員数 × 会員料金

    という風に考えることができます。アプリから直接的な売上を立てたい場合は、まずこれらのパターンの中からキャッシュポイントを考えます。

    2-2. アプリ内課金はストアに手数料が引かれる?

    iOS アプリは App Store、Android アプリは Google Play に対して、「アプリ内課金」で得た売上の 30% を手数料として収めることになります。

    手数料の対象

    • ゲームアプリ内購入するゲーム内通貨(石)や月間パスの購入
    • 基本無料で使える写真加工ツールがもっと便利になる有料会員の権利(1~12 カ月のサブスクリプション) など

    手数料の対象外

    • 飲食店のモバイルオーダー(アプリ内ではなく現実の食べ物・飲み物)
    • 既存の EC サイトでの商品購入

    ※iOS での年間収益が 100 万ドル以下の場合は、App Store Small Business Programに参加することで 15% に下がります

    事業者にとっては高めの費用ですが、iOS/Android ともにアプリをストアに公開する際には審査を必須にしており、プラットフォーマーとして検品のコストをかけてユーザーの安全性を担保するという大義もあります。

    2-3. 「間接的な売上」は計測しづらいが、評価制度への反映が重要

    「アプリのプッシュ通知で新商品を知ったが、実店舗で質感や手触り・サイズ感などを確認してから店舗で買った」「実店舗で商品を見ていいなと思ったが、金銭面や在庫切れなどの事情で購入を見送り、後日アプリで見て思い出して買った」など、消費者の購買行動はオンラインとオフラインを行き来しながら発生することも多い時代になっています。

    Criteo の調査でも、「ショールーミング(実店舗→アプリで購入)」「ウェブルーミング(アプリ→実店舗で購入)」は消費者の 7 割が定期的または不定期的に行うとされています。

    参考:Criteo、進化し続ける消費者のショッピング動向に関する調査レポート 「ショッパーストーリー2022」を発表

    このような O2O 前提の売上を計測するためにはシステム面・オペレーション面双方で手間がかかります。とはいえ、ショールーミング購入を実店舗の評価に組み込まない場合は、「最終的にアプリで買われると店舗の手柄にならないため、実店舗スタッフがアプリをお客様に薦めない」 という状態に陥ることがよくあります。

    アプリ事業を進めるために社内で理解を得る上では、このようなデータも共有しておくことも重要です。

    2-4. アプリを活用することで貴重なデータが得られると、売上以外のメリットに

    アプリで収集したデータを販売することでマネタイズするというビジネスモデルも、アプリ業界では古くから小規模な事例は存在しました。

    近年の小売業界でも、購入頻度・単価・LTV 向上の役割をアプリに求める上で、「ファンを作るにはまず顧客を理解しなければいけない」と、アプリを “顧客理解” のツールとして活用する企業も増えています。

    具体的には、

    • アンケート機能を使って顧客に自由に記入してもらう
    • 商品や注文のレビュー機能をつけて、特に星 5 や 1 をつけたユーザーに理由を深堀りして聞く
    • 会員ランクが高い顧客など限定で交流会や新商品の試食会などオフラインイベントを開催し、生の声を聞く
    • アプリ内の行動・購買データを細かく計測できるようにして、アンケートには出づらい無意識的な傾向を拾う

    といった施策が多いです。

    特に最高ランクの星をつけてくれた客は、5をつけた時に『どうしてですか?』と分析し、改善していくと言う。
    「『熱狂的ファンをつくる』というミッションを掲げているので、どうやったらお客様に喜んでもらえるか、どうやったらもう1回来てもらえるか、確認して、当たっているかどうかを検証していく」

    出典:「クリスプサラダワークス」絶品サラダ&デジタル戦略で急拡大

    特に、どのエリアに顧客のニーズがあるかを推測し、出店計画を立てられるようになるとアプリの価値は高まります。

    「どういう理由で購入をやめたか」という質問に対し、一番多かった理由は「行動範囲内に店舗がなくなったから」だった。
    この結果も「大きな気づきだった」と西岡氏。逆に店舗を出せば、ある程度支持いただけるお客様がいるという仮説につながったという。

    出典:3年でLTVが135%伸長! チュチュアンナが実践する顧客戦略と施策事例

    バーガーキングが実施した「バーガーキングが出店できそうな空き物件の写真を送ってください」というキャンペーンも、「顧客との関係性を良くする」「物件情報を収集する」というメリットだけでなく、「どのエリアに濃いファンが多く住んでいるかを可視化する」というメリットもあると話題になっていました。

    出典:「バーガーキング® を増やそう」キャンペーン開始!応募した物件が実際に成約したら10万円差し上げます!日本全国への更なる店舗拡大のため空き物件をご紹介ください!応募のお礼にお得なクーポンプレゼント!

    アプリマーケティング、デジタルマーケティングを行うことで、結果的にオフラインまで含めたマーケティング戦略・経営戦略に活かせるという状況に近づけば、社内での理解は得られやすくなります。

    3. アプリが “まわる” ようになるまでにかかる初期投資+運用コストを把握しておく

    当然ながら事業の利益は売上からコストを差し引いたものになるため、毎月かかるコストを想定して事業計画を立てることも大切です。

    3-1. 初期費用= iOS/Android での開発コスト

    スマホアプリの場合、iOS/Android という異なる OS でシステムを開発することになります。フルスクラッチ(オーダーメイド)で開発する場合は数千万円規模の投資が必要です。

    近年ではテンプレート・パッケージサービスを使って初期費用を 1,000 万円以下に抑えるケースも増えています。

    また、スマホアプリは “無形固定資産” なので、減価償却や法人税についても念頭に置く必要があります。パッケージを利用したノーコード開発、機能の半分程度でパッケージを利用するローコード(ハーフスクラッチ)開発の場合は法人税の負担が軽くなるというメリットもあります。

    とはいえ、パッケージを利用する場合はできることやカスタム範囲が限られてくるというデメリット・リスクもあります。費用を抑えることが目的になってしまい、本来やりたいことができない価値があいまいなアプリだけが残る…という失敗パターンには注意しましょう。

    参考:

    3-2. どんなビジネスモデルでも運用コストの負担は大きい

    アプリ事業を軌道に乗せ、売上を確保するためには、

    1. ユーザーの新規獲得
    2. 初回訪問したユーザーに定着してもらう
    3. 定着したユーザーに購買・申し込みなど企業側が期待する行動を取ってもらう

    という 3 つのフェーズそれぞれに対するアプローチが必要です。

    一般的に、iOS/Android アプリをインストールした新規ユーザーのうち、一週間以内に再訪してくれる割合は数割程度です。ほとんどのユーザーは初回だけで終わり、起動後に “休眠” してしまいます。

    はじめてアプリ事業を立ち上げる際は新規ユーザーの獲得を強く意識しがちですが、獲得したユーザーを定期的に再訪してくれるアクティブ状態にするための施策が最も重要です。 ユーザーが定着しない状態では、アプリインストールを促す広告にいくらコストをかけても効果が低くなってしまいます。

    img - retantion

    具体的には

    • PUSH 配信・アプリ内メッセージ・コンテンツ配信などの施策を行う運用担当のリソース
    • アプリ自体の品質改善、追加開発を行う開発チームのリソース(外注の場合はコスト)
    • 休眠ユーザーの再訪を促進する広告宣伝費用・リソース

    は、事業計画書を書く時点で想定しておく必要があります。

    まずは一定のアクティブ率を担保する工夫をしてから、売上目標を達成するだけのユーザー数を試算し、集客施策を考え、広告費用を試算するという流れが一般的です。

    参考:

    3-3. アプリ事業は投資先行になるため、キャッシュ・フローの確保(社内での理解)も重要

    初期開発費用+運用コストを考えると、iOS/Android アプリの開発〜リリース直後には何かと出費がかさむことは想像できるかと思います。

    そして、アプリを公開し、宣伝をして、ある程度のユーザー数がついたとしても、すぐに売上が立つわけではありません。

    ですので、アプリ事業を継続させるためには、

    • アプリ経由の直接的な売上だけを評価軸にせず、既存事業への影響など別の評価軸もレポーティングし、赤字でも継続する意義を社内に理解してもらう
    • 成長フェーズを区切り、撤退戦略を明確にしておく

    という準備も必要です。

    また、社内スタートアップなど、完全に資金面で独立した新規事業となる場合は特に

    • まずはスモールスタートをして、マーケットがあるかを確認しつつ PMF を狙う
    • キャッシュ・フローを確保し、資金ショートのリスクを減らす

    といったところもポイントになります。

    4. 事業計画書を書き始める前に、ビジネスとしてまず考えるべきポイント

    アプリに限らず、新規事業を生み出す際にまず考えるべきこと、調査すべきことは

    • そのアプリを開発したとして、使いたがる顧客がいるのか
    • 使いたがる顧客がいたとして、十分な数なのか
    • 十分な顧客がいたとして、売上につながるのか
    • 十分な売上が出るとして、運用・維持費を上回るのか
    • 初期投資分を回収するまでのキャッシュ・フローは十分にあるか
    • 何を競争力として差別化し、この計画を実現させるのか

    という点です。

    アイキャッチ画像

    4-1. ユーザーの声から「ニーズ」を理解する

    特に既存の事業と近い顧客層を狙って iOS/Android アプリを展開する場合は、既存顧客からアンケートを取ることも有効な手段です。

    ただ、まだアプリユーザーになっていない段階の人に「アプリが出るならどんな機能が欲しいか」「こんなアプリがあったら利用したいと思うか」など、直接的な質問をするのはあまりおすすめできません。

    1, ユーザーは自分自信では問題や不都合に気づいていない
    2, インタビューという形式の中でユーザーは「頑張って答えよう」とする為、普段の考え、思いとは異なる事を答えてしまう事がある
    3, ユーザーは平気で嘘をつく
    参考:https://note.com/kenmochitakashi/n/nbde1f5a1b77b

    どちらかといえば普段の生活スタイルや、生活の中で感じている不便なこと、不安なことなどを聞き出すようなアンケートがおすすめです。(アプリ内で実施するアンケートの回答率や精度が高いのは、実際に使っていて感じていることを書くからという面もあります)

    ターゲット顧客の普段の生活と、抱えている悩み・不満をイメージし、そこから企画を立て、ビジネスモデルを考えていくほうが事業計画はスムーズに進みます。

    4-2. 市場の現況(3C)は把握しておく

    最低限知っておくべきは、どれだけの人や金額が動いている市場に向けて公開するアプリなのかということです。会社・事業として目指したい売上規模があると思いますが、目標がそもそも達成できる数字なのかは市場規模に大きく影響されます。

    アプリの場合ですと、App Store と Google Play を見れば競合となるすべてのアプリの「おおまかなダウンロード数」「ユーザーからの評価」を見ることができます。さらにユーザーのレビューを細かく見ていくと、顧客が何を求めているのかを想像することもできます。

    参考:他社アプリのダウンロード数を調べる方法はある?競合調査で見るべきポイントと注意点

    また、3C 分析などマーケティングのフレームワークを使うことで、自社の戦略が整理しやすくなります。

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    画像出典:https://dyzo.consulting/2249/

    まとめ:スマホアプリ事業を始める前に計画的に考えるべきこと

    • Web とは全く異なるため、まずはアプリに関する最低限の知識をつける(ビジネスモデルや KPI、コストの種類)
    • ビジネスモデルを問わず、アプリ事業は「アクティブなユーザーの数と率」が鍵になる
    • ユーザーの獲得以上に「定着・再訪してもらうこと」が重要なので、ユーザー獲得のための広告・宣伝費用だけでなく、再訪促進のためのリソースとコストも必ず確保しておく
    • 初期費用・月額費用ともにかさむので、3~5 年単位での事業計画が重要
    • 間接的な売上貢献(ウェブルーミング)や顧客データの収集など、売上以外のメリットを社内に理解してもらうことで継続しやすくなる

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