小売業界の iOS/Android アプリ活用は年々進んでいますが、自社で開発できる体制・ある程度の予算がある全国規模の大企業と、それ以外の企業で状況も異なります。
一般的なアプリ開発では、予算と運用のリソースが限られていることが少なくありません。ですので、特に自社ではじめてアプリを作る際には、大手だけでなく自社に近い規模の企業がどの程度作りこんでいるか、そして実際のアプリがどう評価されているかも参考になります。
そこで、本記事では地方を代表する企業のアプリ活用事例に着目し、「どんな機能が必須で、+αの事例としてどんな工夫がされているのか」を整理していきます。
1. 小売・店舗アプリに共通する基本的な機能
企業規模を問わず、百貨店・専門店・スーパーマーケット・ドラッグストアのアプリに共通するのは
- デジタル会員証(プラスチックカードの ID で連携)
- 店舗検索
- マイ店舗登録(お気に入り)
- チラシ・店舗からのお知らせの配信
- 各種キャンペーン情報の掲載
- ポイントや電子マネー残高の確認
- クーポン
といった機能です。
基本的な価値としては
- プラスチックのカードを持ち歩く・管理する手間が省ける
- チラシとクーポンでお買い得な商品を来店前にチェックしておける
- キャンペーンなどお役立ち情報が分かる+申し込める
といった点で、既存顧客(近隣住民)の利便性を向上させ、来店頻度や単価に貢献することが目的になります。
運用するスタッフや予算が限られている新規アプリの場合、まずはこれらの機能をしっかりと確保した上で、はじめてアプリを触った顧客が迷わない・違和感を覚えないようなデザインでページを構築することが最も重要です。
2. 地方に根付くスーパーマーケット・百貨店のアプリ企画事例
全国的に顧客を抱えている規模ではなくとも、基本機能以外にさまざまな工夫をして iOS/Android アプリを活用している企業は多く存在します。
まずはスーパーマーケットとデパート・百貨店で、ユニークな機能を実装しており、アプリストアでのユーザー評価が一定以上という事例をご紹介します。
2-1. ヤオコー(埼玉):ユーザー投稿を受け付ける井戸端会議機能
関東地方にスーパーマーケット店舗を展開するヤオコーのアプリは、非常に機能が充実しています。首都圏ではネットスーパーをはじめデジタル施策が盛んなので、「西友」「イオン」「ライフ」など DX が進む競合店に負けじと注力しているようです。
ヤオコーアプリは、スーパーマーケットのアプリと相性がいいレシピ系のコンテンツに加え、ユーザーから投稿を受け付けて紹介する「井戸端会議」が特徴的です。
コミュニティとして盛り上げ、ブランドに愛着を持ってもらうためにはユーザー投稿の機能は効果的です。実際に投稿が数百件集まっていることからも、常連顧客の“熱量”の高さが伺えます。
2-2. 原信ナルス(新潟):お買い物メモ+ギフト予約
出典:https://www.harashinnarus.jp/app_lp/
上記のヤオコーアプリにも実装されているのですが、北信越地方を中心に店舗を展開する原信ナルスのアプリには「お買い物メモ」機能が実装されています。
シンプルなアプリなので無料アプリとして広く普及していますが、広告がついているものが多く、“いつものお店” のチラシやクーポンなどと同じ画面(アプリ)で使えることで利便性が高くなります。
アクシアルリテイリング社は自社でシステムを開発しているようで、地方の小売企業のアプリとしてはとても機能が充実しています。
ギフトやパーティのための商品を事前に予約→店頭での受け取り日時指定ができる機能もあり、アプリを頻繁に起動してもらう仕組みを作ることで顧客の満足度を向上させようという意欲が伺えます。
2-3. ゆめアプリ(広島):バーコード決済やガチャなど
百貨店・デパートのアプリは意外にシンプルなものも多いのですが、中国地方の雄である「ゆめタウン」の公式アプリは丁寧に作られています。
決済ができる電子マネーのカード、またはクレジットカードをアプリに登録することで、店頭ではアプリをかざすことでバーコード決済が可能になっています。
また、意外に事例が少ない「ガチャ」機能も実装されており、競合他社と差別化しようという意識が伺えます。
ちなみに、首都圏を中心に展開しているスーパーマーケット「ライフ」のアプリも、このゆめアプリに近いつくりになっています。
3. ドラッグストアのアプリ企画事例
ドラッグストアのアプリでは、小売アプリと同様に
- デジタル会員証(プラスチックカードの ID で連携)
- 店舗検索
- マイ店舗登録(お気に入り)
- チラシの掲載および各種キャンペーン情報の掲載
- ポイントの残高・履歴の確認
- クーポン
といった基本機能が実装されています。
加えて、ドラッグストアならではの顧客ニーズとして
- 肌診断
- お薬手帳
- 薬の在庫確認→取り寄せ
- 処方箋の送信
といった機能が実装される事例が多いです。
また、これらの機能を本体のアプリの機能として実装する(スーパーアプリ形式)か、それぞれ別のアプリとして構築するかは企業によって異なります。
3-1. 「肌診断」「処方箋送信」など、優先機能事例
出典:https://www.kusurinofukutaro.co.jp/service/app/
千葉県中心に店舗を展開するくすりの福太郎のアプリでは、目立つ機能ではないですが「肌診断」の機能もついています。カメラを活用したアプリならではの機能で、おすすめの化粧品を案内するという流れになっています。
さらに商品をバーコードなどから検索し、在庫を検索するという機能もあります。
出典:https://www.create-sd.co.jp/Portals/0/apps/
関東~東海地方に展開するクリエイトのアプリでは、処方箋送信とお薬手帳アプリを別のアプリとしてリリースし、本体アプリからも誘導しています。
ただ、それだけの機能でシンプルなアプリにするのではなく、「待ち時間削減」「薬の取り寄せ」といった付加価値をつけていることもポイントです。
一つのアプリにすべての機能を集約するか複数に分割するかは、どちらが良いと一概に言えるものではありません。しかし、アプリの設計に“根拠”があるほうが顧客の評価は高くなるものです。
3-2. 薬王堂(岩手):歩数計+おみくじなど、他社と大きく異なる仕様
東北地方で店舗を展開する薬王堂では、アプリのトップページに歩数カウントを表示しているユニークなデザインになっています。
そして「歩数計」機能が実装されており、一定の歩数をクリアするとクーポンの抽選が引けるようになっています。さらに広告欄や他のアプリとの提携など、アプリを単なるチラシ+会員証のシンプルなもので終わらせず、事業化する意欲が感じられます。
「買い物メモ」と同様に、歩数計自体はヘルスケアの無料アプリのほか、「Pikmin Bloom」などゲームと連携したアプリも豊富に事例があります。しかし地域に密着する企業だからこそ、顧客の健康的な生活をサポートしたいというメッセージ性が感じられます。
4. 小売業界の事例から学ぶ、これからスマホアプリを企画・開発する際のポイント
一つの業種・業態に絞っていくつかの企業アプリをダウンロードしてみるとわかるように、小売業界の iOS/Android アプリの基本的な機能群は、全国的な大手企業も地方の企業もあまり変わりません。
では顧客の評価や品質はどこで変わるのか?と疑問に思われるかもしれませんが、基本的な機能群だけでも
- ぱっと見たときに必要な情報が伝わってくるか
- どこに何があるか、どう操作すべきかを理解しやすいか
- 画面をタップした際の反応やページの読み込み速度にストレスを感じないか
- デザインや雰囲気に好感が持て、定期的に起動したくなるか
- 会員情報の連携やキャンペーン申し込みなど、「アクション」が不具合なくスムーズに完了するか
- 古い情報がトップに残っておらず、最新のコンテンツが配信・表示されているか
- 適切な配信内容・頻度でプッシュ通知が送られてくるか
といった、“機能以外” のポイントが無数に存在します。
ですので、アプリの開発事例を研究、および自社アプリの企画〜設計に生かす際は、参考にできそうなユニークな機能をチェックすることも重要ですが、上記のような細かい品質の差も意識することをおすすめします。
- 「自社アプリを考えているが、初期投資を抑えてまずは試してみたい」
- 「LINE からの PUSH 配信で顧客と継続的に接点は作れているが、費用対効果が見合わなくなってきた」
- 「安すぎるシステムだと動作速度や拡張性などが不安」
といったお悩みを抱えている企業様に向けて、ノーコードでアプリを開発するサービス「PASTA」を展開しています。