2020年に知っておきたい「スーパーアプリ」とは?中国で先行し、日本のLINE×PayPay構想が有名事例に

2020 年の頭に、カリフォルニアのベンチャーキャピタル・a16z のゼネラルパートナーであるコニー氏が、「消費者向けテクノロジーの4つのトレンド」というピッチの中で、「スーパーアプリが、東(アジア)から西へ普及している」と語りました。

“You see, super apps are here to stay and the big internet giants in the States already get it. This trend is coming from East to West. So, what does that mean for all of us here?”

この紹介記事が幅広くシェアされた影響もあり、「スーパーアプリ」という単語が少しずつ浸透してきました。

BackApp メンバーの中でも知り合いとの会話でスーパーアプリに関する話題になったという声があるため、今回は定義・事例から今後の考察までをまとめました。

そもそもスーパーアプリとは? 定義と意味

スーパーアプリとは、「一つの iOS/Android アプリの中で、さまざまなアプリの機能を持っている(役割を実行できる)プラットフォーム」を指します。

A という一種類のアプリのみをインストールし、会員登録をすることで、A のアカウントを使って B, C… といったさまざまなミニアプリ(先行する中国での一般的な呼称はミニプログラム)を利用することができるというものです。

使いたいサービスに応じて iOS/Android アプリをインストール、および会員登録やクレジットカード・決済手段連携をする必要がない利便性、そしてトータルでの事業規模の大きさを指して “スーパー” という表現が使われているようです。

現代の代表事例は中国の有名企業、イメージはかつての日本の Yahoo! JAPAN

スーパーアプリの事例としては、中国の「WeChat」「Alipay」、シンガポールの「Grab」がよく挙げられます。

「WeChat」は SNS・メッセージアプリですが、たとえば直接は関連のないゲームや EC、決済といったミニプログラムをもっています。このスーパーアプリ展開により、アプリ内ではただ友人と交流するだけでなく、EC サイトの情報をおすすめしあったり、そのまま決済をしたりすることが可能になります。

21 世紀初頭、インターネット社会が始まった際は、日本人がデジタル空間で行動を起こす際にはまず Yahoo! JAPAN を開いていました。

そこから天気・ニュース・スポーツ速報などを閲覧したり、買い物をしたり、調べたい情報をキーワードで入力したりとそれぞれの行動に進むことができることを学習し、一定数の人は「インターネットで何かする際は Yahoo の中で行う」と習慣づけられました。そして一連のサービスは「Yahoo! ID」「Yahoo! かんたん決済」 という共通アカウントがベースになっています。

今では PC からスマホに移行したこともあり、ユーザーの行動はまずスマホを開くことになりました。すでに Android 端末はホーム画面自体が Google 化しており、かつての Yahoo! JAPAN のようになっていますが、スーパーアプリはその Google を超える規模を狙う事業になります。

スーパーアプリ(本体+ミニアプリ群)構造のメリットとは

ユーザーが受け取るメリットとしては

  • 何かの行動をするにあたって新しいアプリをインストールさせられる機会が減る
  • 同時に、会員登録や決済手段の連携の手間も省ける

という点になります。

企業から見たアプリ事業の厳しさを表すデータとして、

「インストールしているアプリの数は平均 99 個あるが、実際に使っているのは平均 38 個(約 37%)」
「ほぼ毎日使われるスマホアプリは平均 8 個」
「50% 以上の人が、1 カ月の間でスマホアプリを 1 個も追加していない」

といった調査データは毎年のように流れてきます。

そもそも新しくインストールされるためには心理的な抵抗があり、インストールされたとしても日常的に使われるアプリにまで到達しづらいという iOS/Android アプリの特性を考えると、一つのアプリの中にミニプログラム群という形で別の事業領域を増やしていくスーパーアプリ構想は利にかなっているように見えます。

なぜ WeChat と Alipay が内部にミニアプリを展開したのかを見れば意味がわかりやすい

SNS・メッセンジャーアプリとして圧倒的なシェアを誇るテンセント社( WeChat)と、EC 領域で圧倒的なシェアを誇るアリババ社(Alibaba.com および AliPay)の二社を見ると、スーパーアプリ化はプラットフォーマーとしての覇権争いの色が濃く見えます。

テンセント社は新たに EC 事業を立ち上げるよりも、WeChat の中で EC のミニアプリを立ち上げられるほうがユーザー獲得の手間がかかりません。同様に、アリババは SNS 領域に進出して戦いを挑むのではなく、ユーザーの起動頻度を上げるために決済アプリの AliPay を中心にさまざまなお役立ちプログラムを内包させるという手段をとりました。

つまり、中国大手のスーパーアプリ構想は、ある領域で圧倒的なシェアを獲得した企業が、次のフェーズとして、既存事業のユーザーに新たな価値を提供し、効率よく滞在の頻度・時間を向上させるという施策になっています。

参考:https://seikatsusha-ddm.com/article/09894/

日本では LINE や PayPay がスーパーアプリ構想を見据える

日本では 2019 年の後半から徐々にスーパーアプリという名前が広まっています。

きっかけになっているのがこれまでの LINEと、PayPay の事業構想です。特に LINE は本体が WeChat のようなメッセージアプリで、AliPay のような決済機能(LINE Pay)も内包しています。ゲームアプリを内包していて滞在時間を延ばしていることも WeChat と似ています。

しかし、かつて Yahoo! JAPAN という覇権ポータルサイトを運営し、決済アプリ「PayPay」を展開するヤフー(Z ホールディングス社)が LINE と経営統合し、スーパーアプリ構想を掲げて PayPay 内にさまざまな機能を内包させようとしています。

参考:https://japanese.engadget.com/2019/11/18/line-yahoo/

二社の経営統合は GAFA やアリババ・テンセント両社などとの差を縮めるための色合いが強いようですが、このニュースは国内にも大きなインパクトを残しています。

そうなると、KDDI・ドコモといった通信大手、メルカリのようなプラットフォーマーを中心にスーパーアプリ化の波が訪れる可能性もないとはいえません。

スーパーアプリ=メイン機能は「決済」 ではない

アリババとヤフーの印象が強いため、スーパーアプリは決済を中心にさまざまなサービスを展開していくものだといわれることもあります。

確かに、どんな Web サービスを展開するにしても、決済を自前のプラットフォームでスムーズに行えれば事業として大きな意味があります。

しかし、WeChat と AliPay の比較では、SNS をメインにゲームなどを内包する WeChat に比べ、決済をメインにお役立ちツールを内包する AliPay はユーザーの滞在時間が短いという特徴があります(頻度は高い)。

もちろん WeChat が決済手段をもっていないわけではなく、WeChat Payment(微信決済) を内包しています。

参考:https://diamond.jp/articles/-/219425

スーパーアプリ化は必勝法? デメリットはないのか

多くのアプリがインストールされている状態に比べれば、「〇〇をしたい」というタイミングでスーパーアプリ(おそらくホーム画面の分かりやすいところに配置されている)をタップすればアクセスできるのは便利でしょう。

ただし、スーパーアプリを起動してから深い階層へ、つまり目的の機能(別のアプリの領域)にスムーズにアクセスできるかどうかは、UI の品質に大きく左右されます。当然ながら開発・メンテナンスのコストもかさみます。

そもそも、特化型のサービス(アプリ)が生まれる背景には、「特化していないプラットフォームやポータルサイトからは、求める機能へのアクセスが不便」という面もあります。かつては LINE アプリの内部で利用する UI だった「LINE Pay」は、運用開始からしばらくして別のアプリとしてリリースされました。

また、Google や Apple などの巨大プラットフォームがユーザーの行動履歴・個人情報に準ずるデータを収集しすぎることに不安を感じる人も少なくありません。一つのスーパーアプリをすべての行動のベースにするという考え方には少し無理があるようにも思えます。

この議論自体が、実は見慣れた光景である

スーパーアプリに関する一連の議論は、おそらく BizDev や PM の方々にとってはおそらく聞き慣れた話だと感じるのではないでしょうか。

「一つのプラットフォーム」と「複数のバーティカル(一つの役割に特化した)アプリ群」は、一概にどちらが優れていると語れるものではありません。

これまでの歴史を振り返ると、仮に PayPay がスーパーアプリとして圧倒的なシェアを獲得したとしても、その中の一機能に特化し、より分かりやすい UI と高度な機能を提供しようとするスタートアップ企業・あるいは大企業の新規事業が出現することは容易に想像できます。 Yahoo オークションの領域でメルカリが急激に成長したり、高機能なスマートフォンが普及する一方で「かんたんケータイ」「らくらくホン」が根強いシェアを獲得するなど、事例はいくらでも浮かぶと思います。

そして、その特化型のアプリがシェアを拡大すると、今度はプラットフォーム化を進めて新たな機能を内包させようとするでしょう。

また、Google がかつてスーパーアプリ構想のような形で SNS 領域に進出しようとした結果、Twitter/Facebook/Instagram に及ばず撤退したという歴史もあります。大手プラットフォーマーに内包されるミニプログラムが必ずしも既存ユーザーに使われるわけではありません。

現時点では注視すべきほどではないが、“伏兵”もいる

スーパーアプリ構想の前提には「何かを快適に実行しようとするたびに新しい iOS/Android アプリをインストールするのはユーザーにとって負担」という考え方があります。

しかし、Web 領域もまったく進化していないわけではありません。Google が提案する「PWA(Progressive Web Apps)」は、インストールの必要がない Web でありながら、iOS/Android ネイティブアプリに近い UI/UX を提供できます。

現時点では iOS が「非協力的」とまで感じられる態度のため、特に iPhone のシェアが安定している日本では厳しいという見方が一般的です。

参考:Googleが推す「PWA」にはまだできないことが多い ※iOS 13でもプッシュ通知はまだです

とはいえ、もし PWA が一般的になった場合は、ユーザーはスーパーアプリを使うことなくさまざまな事業者の Web サイト(厳密には Web アプリ)をネイティブアプリのように快適に使うことができるようになります。そうなると、スーパーアプリが今ほどポジティブな期待をもって受け取られるとは考えづらいです。

(まとめ)

スーパーアプリは現時点で成功している大企業の共通戦略であり、メリットがとても共感しやすいため、ポジティブな反応になるのも頷けます。

とはいえ、「バーティカル → プラットフォーマー化 → 別のバーティカル事業の台頭」という流れは決して長くないデジタルテクノロジーの歴史でも見慣れた光景です。

スーパーアプリの意味・メリットを理解した上で、自分なりの展望を考えてみる機会になればと思います。

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