スーパーアプリとは?PayPayを筆頭とした日本国内外の事例と、そのメリット/デメリット

(2022 年 5 月更新)

2020 年の頭に、カリフォルニアのベンチャーキャピタル・a16z のゼネラルパートナーであるコニー氏が、「消費者向けテクノロジーの4つのトレンド」というピッチの中で、「スーパーアプリが、東(アジア)から西へ普及している」と語りました。

“You see, super apps are here to stay and the big internet giants in the States already get it. This trend is coming from East to West. So, what does that mean for all of us here?”

この紹介記事が幅広くシェアされた影響もあり、「スーパーアプリ」という単語が少しずつ浸透してきました。

BackApp メンバーの中でも知り合いとの会話でスーパーアプリに関する話題になったという声があるため、今回は定義・事例から今後の考察までをまとめました。

1. そもそもスーパーアプリとは? 定義と意味

スーパーアプリとは、「一つの iOS/Android アプリの中で、さまざまなアプリの機能を持っている(役割を実行できる)プラットフォーム」を指します。

A という一種類のアプリのみをインストールし、会員登録をすることで、A のアカウントを使って B, C... といったさまざまなミニアプリ(先行する中国での一般的な呼称はミニプログラム)を利用することができるというものです。

使いたいサービスに応じて iOS/Android アプリをインストール、および会員登録やクレジットカード・決済手段連携をする必要がない利便性、そしてトータルでの事業規模の大きさを指して “スーパー” という表現が使われているようです。

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1-1. 「ミニアプリ」とは概念が異なることに注意

(何故か)セットで語られることが多いですが、ミニアプリとスーパーアプリは大きく違います。

スーパーアプリは「企業の iOS/Android アプリ」の中の一つの種類を指します。当然 Google Play/App Store から広く公開されるものですが、ミニアプリはあくまでスーパーアプリを含むスマホアプリの中にある “一つの機能” です。

Apple(iOS) が展開し始めた「App Clips」もミニアプリの代表例ですが、「アプリをダウンロードしてもらうために、(DL しなくても)一つの機能をお試しできるもの」として紹介されることが多いです。

1-2. スーパーアプリの「火付け役」は中国の有名企業

スーパーアプリの代表的な事例としては、中国の「WeChat」「Alipay」がよく挙げられます。

「WeChat」は SNS・メッセージアプリですが、たとえば直接は関連のないゲームや EC、決済といったミニプログラムをもっています。このスーパーアプリ展開により、アプリ内ではただ友人と交流するだけでなく、EC サイトの情報をおすすめしあったり、そのまま決済をしたりすることが可能になります。

最近では欧米も追随し、Square 社の「Cash App」も大きく動いており注目を集めています。

2. スーパーアプリの日本国内事例:2022 年も PayPay が取り組みを続けている

日本では 2019 年の後半から徐々にスーパーアプリという名前が広まっています。

きっかけになっているのが、これまでの LINEと、PayPay の事業構想です。特に LINE は本体が WeChat のようなメッセージアプリで、AliPay のような決済機能(LINE Pay)も内包しています。ゲームアプリを内包していて滞在時間を延ばしていることも WeChat と似ていました。

そして、かつて Yahoo! JAPAN という多機能なポータルサイトを運営し、決済アプリ「PayPay」を展開するヤフー(Z ホールディングス社)が LINE と経営統合し、スーパーアプリ構想を掲げて PayPay 内にさまざまな機能を内包させようとしています。

参考:PayPay、スーパーアプリ化に向けた2021年度下期の主な取り組みと実績を紹介

二社の経営統合は GAFA やアリババ・テンセント両社などとの差を縮めるための色合いが強いようですが、登録者数が 4700 万人を超えた PayPay の事業展開は日本国内で最も注目すべきといえます。

2-1. 「ミニアプリ」の筆頭事例となる「LINE ミニアプリ」

日本国内でも、ミニアプリ自体が有名なサービスとして展開されている事例があります。

LINE では、企業向けのマーケティング手段として「LINE 公式アカウント(旧・LINE@)」を展開してきました。しかし、公式アカウントではあくまで PUSH 配信で顧客と継続的につながるという課題にのみフォーカスしていました。

そこで、LINE 上で来店予約・順番待ちをしたり、プッシュ通知でリマインドや領収書を受け取ることができる「LINE ミニアプリ」も展開し始めました。2022 年現在でも日本各地のコメダ珈琲店が順番待ち機能を提供していたり、意外に身近なところで定着し始めています。

2-2. スーパーアプリ=「決済」メインが正解というわけではない

AliPay・PayPay・Cash App などの印象が強いため、スーパーアプリは決済を中心にさまざまなサービスを展開していくものだといわれることもあります。

確かに、どんな Web サービスを展開するにしても、決済を自前のプラットフォームでスムーズに行えれば事業として大きな意味があります。

しかし、WeChat と AliPay の比較では、SNS をメインにゲームなどを内包する WeChat に比べ、決済をメインにお役立ちツールを内包する AliPay はユーザーの滞在時間が短いという特徴があります(頻度は高い)。

スーパーアプリはあくまで構造の一種なので、「エンタメ型のスーパーアプリ」も十分に考えられるといえます。

3. スーパーアプリ(本体+ミニアプリ群)構造のメリットとは

ユーザーが受け取るメリットとしては

  • 何かの行動をするにあたって新しいアプリをインストールさせられる機会が減る
  • 同時に、会員登録や決済手段の連携の手間も省ける

という点になります。

企業から見たアプリ事業の厳しさを表すデータとして、

「インストールしているアプリの数は平均 99 個あるが、実際に使っているのは平均 38 個(約 37%)」
「ほぼ毎日使われるスマホアプリは平均 8 個」
「50% 以上の人が、1 カ月の間でスマホアプリを 1 個も追加していない」

といった調査データは毎年のように流れてきます。

そもそも iOS/Android アプリは、ユーザーに新しくインストールしてもらうのが大変です。そして、インストールされたとしても日常的に使われるアプリにまで到達しづらいものです。

なので、一つのアプリの中にミニプログラム群という形で別の事業領域を増やしていくスーパーアプリ構想は、「既存ユーザー 1 人あたりの売上を伸ばせる」という点で利にかなっているように見えます。

4. スーパーアプリは日本国内では流行らないのか?そのデメリットとは

自社の iOS/Android アプリをスーパーアプリにするデメリットは

  • 何がどこにあるのか分かりづらくなりやすい
  • 動作が重くなりやすい

という点が大きいです。

このデメリットを克服するには、当然ながら高い技術力・デザイン力と、開発・メンテナンスのコストがかさみます。

ですので、「相当な体力と人材・開発体制がなければ投資に見合わないから、日本では流行らない」と言われることもあります。

また日本国内独自の事情として、Google/Apple/LINE などの巨大プラットフォームが「データを収集しすぎる」ことに抵抗を覚えるユーザーが多いという側面もあります。

4-1. 「スーパーアプリかシンプルなアプリか」という議論自体が、実は “定番” である

これまでの歴史を振り返ると、一つのアプリがスーパーアプリ化を進めたとき、一部のユーザーは「使いづらくなった」「○○がしづらくなった」と反発します。そこで、他の企業が「○○がしやすい、特化したサービス(アプリ)」を展開するという流れは “あるある” といえます。

Yahoo オークションの領域でメルカリが急激に成長したり、高機能なスマートフォンが普及する一方で「かんたんケータイ」「らくらくホン」が根強いシェアを獲得するなど、事例はいくらでも浮かぶと思います。

ですので、自社のアプリを巨大なプラットフォーム(スーパーアプリ構造)にするか、複数のアプリとして独立させるかは、一概にどちらが優れていると語れるものではありません。

5. 新規 iOS/Android アプリの企画・設計・リニューアルで考えるべきこと

自社のアプリを作る・切り替えるという視点では、単機能・シンプルなアプリ(業態やブランドごとに複数展開)とスーパーアプリ(一つですべてを内包)は途中での移行・切り替えが難しいです。

スーパーアプリから需要の低い機能を削ぎ落とし、シンプルなアプリにすると、ユーザーは「今までできたことができなくなった」というギャップを感じてしまいます。

シンプルなアプリからスーパーアプリにシフトしていくことは不可能ではありませんが、事前に綿密に計画を立てて段階的に新機能を追加していかなければ、「ごちゃごちゃしていて分かりづらい」「あるアクションをしようと思うと深い階層まで遷移しなければならない」といった UI/UX の問題が発生しがちです。

また、ノーコードのプラットフォームを使ってアプリを開発した場合は、そもそも機能の追加やデザインのカスタマイズに限界があります。スーパーアプリといえるまではカスタムする気がなくても、ある程度は顧客の声を反映して変えていきたいという場合は注意が必要です。

ですので、特にアプリの新規企画・リニューアルでパッケージ型・プラットフォーム型のサービスを検討する際は

  • 一つのアクションを素早く完了させられるか(ごく基本的・根本的な部分の動作速度・レスポンスや UI/UX)
  • シンプルなアプリからのカスタム性がどこまであるか
  • 複数の業態・ブランドごとにアプリを出し分けられるとなお良し

というポイントを重視することをおすすめします。

アプリ事業でよくある失敗とは?
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