(2021 年更新)
iOS アプリを開発するには、App Store での一般公開だけでなく実機で検証する時点でも Apple 社の認証が必要になります。
開発者として Apple 社に登録申請を行うのが「Apple Developer Program(旧・iOS Developer Program)」ですが、スタンダードなプラン以外にも "Enterprise" というプランが存在します。
今回は意外に知られていない Enterprise プランの特徴や通常プランの違い、注意点などをまとめました。
通常の Developper Program との違い
iOS アプリの証明書には
- 開発用 (Development)
- テスト用 (AdHoc)
- 社内限定 (In-house)
- 一般公開 (App Store)
の 4 種類が存在します。この中で業務アプリに必要な "In-house" 証明書は、ADEP (Apple Developer Enterprise Program) でなければ利用できません。
これまでは、
- 電子マニュアル(テキスト+動画)
- 勤怠管理
- 各地を走る輸送車両の管理
- 商談情報の管理(SFA・CRM)
といったクローズドな業務アプリを開発し、社員(雇用関係にある人間)に配布して利用してもらう際に Enterprise プランが使われてきました。
1. App Store を介さないため、審査不要ですぐに社内配布できる
Enterprise で業務アプリを開発する場合、App Store に申請する際のような審査が不要なので、社内でのテストが終わればすぐに全社に公開・配布することができます。
App Store で管理される通常の iOS アプリでは審査基準があり、iOS 開発に慣れていないうちはリジェクトされることも少なくありません。
もちろんクラッシュなどのバグやセキュリティリスクには気をつけなければなりませんが、Enterprise であれば “Apple の作法” に沿っていない部分などがあってもそのまま社内で利用することができます。
2. 登録申請できるのは一定規模の法人のみ
通常の Developer Program では個人事業主でも登録できますが、Enterprise プランはクローズドな業務アプリを想定しているため、申請できるのは従業員 100 名以上の法人のみです。
小規模な企業・システムであっても個人の開発者に委託することは基本的にできません。さらに、ADEP 資格および In-house 証明書を取得するための条件は年々厳しくなっています。
3. 社外配布が不可→度重なる規約違反によって新規申請が厳格に
Enterprise プランでは、App Store 公開=開発した業務アプリの社外配布によって利益につなげることができません。 過去に ADEP で開発したアプリを一般公開したものが広く普及したケースもありましたが、最終的には規約違反として削除という結末を迎えました。
さらに、「App Store を介さずにアプリを公開できる」というメリットに目をつけた企業が規約に違反して一般配布する事例が後を絶たず、現在では Apple 社が新規申請のハードルをかなり高く設定しています。
Appleからの問いかけに答えて、ADEPによるInHouseアプリが必要だと論理的・技術的に説得しなければなりません。当然、ADP、ABM、AdHoc、引き換えコード、TestFlight、カスタムAppがそれぞれ何なのか理解した上で説明する必要があります。
現時点で大半は『ADP + カスタムApp + MDM + ABM の組み合わせでやって下さい』と言われるオチが待っています。色んなケースをお聞きすると、AppleはもうADEPを取らせる気が全くないのでは?と思えるぐらい間口が狭くなってると感じます。
引用;ADEP(Apple Developer Enterprise Program)はもう取得することができないと諦めたほうが良い理由
これから社内アプリを開発するにはカスタム App が主流に
2021 年現在、Apple 社のドキュメントでは
Apple Developer Programでは、App StoreでAppを一般に配信したり、TestFlightでベータ版のAppを配信したり、Apple Business ManagerまたはAd Hoc配信でカスタムAppを特定の組織(自分の組織も含む)に配信したりすることができます。
一方、Apple Developer Enterprise Programは、こうしたオプションでは対応できない特定の利用ケースのみを対象とします。
引用:Apple Developer Enterprise Program (Apple 公式)
というように、すでに「特定の組織へのアプリの配信」はカスタム App を使うように記されています。
カスタム App で業務用アプリを開発する際は
- 通常のアプリと同じように App Store Connect から審査を依頼
- 「カスタムAppとして配布」のオプションを選択し、非公開のアプリとして App Store 上に置く
- Apple Business Manager あるいはコード入力で従業員に配布
という流れになります。
カスタム App の場合、証明書も公開手順も同じになるので、変わるのはユーザー企業の各自の端末にアプリを配布する方法だけです。
MDM 管理端末は ABM から、それ以外は引き換えコードで
特に自社で使う業務アプリを自社で開発するという場合は、モバイルデバイス管理 (MDM) でインストールしていく方法がスムーズです。
参考:AppleデバイスでのMDMの概要 (Apple 公式)
- Apple Business Manager に MDM を紐づける
- MDM から、どの端末(グループ)にカスタム App を配布するか決める
- 各端末にダイアログが表示されるので「インストール」を選択(設定により省略可能)
という風に、情シス部門など管理者・管理グループが操作できるので、現場に指示する手間も省けます。
個人の端末を使ってもらう場合などは引き換えコードを発行してダウンロードしてもらうことになりますが、Web 経由でコード一覧を共有する場合などは情報が漏洩するリスクもあります。もしカスタム App が外部の人間の端末にインストールされてしまうと Apple 社の規約違反となる ため、注意が必要です。
業務用アプリを開発する際に抑えておきたい補足ポイント
Duns Number の取得
法人で Apple Developer Program を利用する場合、D-U-N-S Number を取得する必要があります。
DunsNumber は Apple Developer Program のために割り当てられた番号ではなく、企業の識別情報として広く利用されているものです。業務アプリを開発する規模の企業の場合はすでに登録されている場合もあるので、新規取得が不要の場合もあります。
これから申請する際は下記の記事をご覧ください。
参考:【保存版】Apple DeveloperProgram 申請・登録方法と更新の流れ(法人の手順もあり)
複数人で iOS アプリを開発する際は “1 台目の Mac” で発行した証明書を共有していく
大人数で利用する業務アプリとなると、複数名のチームで開発することになります。
iPhone/iPad アプリを複数名で開発する際は 1 台目の Mac(責任者の端末など)で p12 ファイルを作成し、各開発者の端末のキーチェーンに登録していく必要があります。
この手順に不明点がある場合、管理者の端末がわからない場合などは下記の記事をご覧ください。
参考:複数台のMacで実機テストを行なう方法(1台目が使えない・わからない場合の方法含む)

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