今の時代、消費者が企業の情報を入手する経路はほとんどがスマートフォンやタブレットなどモバイル端末になっています。
多くの企業では、PC 用の Web サイトよりはレスポンシブサイトや SNS 運用、あるいは iOS/Android アプリの重要性が圧倒的に高まってきている時代です。
しかし、アプリ事業に慣れないうちは運用コストや業務負荷が大きいため、そもそもなぜ Web サイトをアプリ化するのか、SNS ではできないことなのかを考えず、「とりあえずアプリが必要だから開発しよう」と考えても軌道に乗せるのは難しくなります。
だからこそ、我々のような制作会社はアプリの企画・設計の段階でご相談を承り、「アプリが何の役割を担うべきか」「Web や SNS とどう連携するか」など、要件を整理することが重要だと考えています。ここでは、最初に頭に入れておきたいポイントを整理していきます。
[前提] アプリ・Web・SNS、その他 Web アプリの役割の違い
各デジタルツールのメリット・デメリットとしては、
- SNS や大手 EC モール、プラットフォームは、まず大衆に見つけてもらう認知拡大・新規顧客獲得に強い
- 自社の Web サイトは、新規集客から初回購買行動(顧客化)までに強い
- LINE 公式アカウントは、SNS と比較しても新規顧客への再アプローチに強い
- 自社アプリは既存顧客のリピート促進から「ファン育成」の役割を期待されることが多く、訪問頻度・購買単価などの向上に強い

1. 運営企業目線での、Webとアプリの運用メリットの違い
Web サイトであれば、公開したページは URL から誰でも閲覧できます。
対して、iOS/Android アプリは Google Play/App Store からインストールしなければ中身を見てもらうことはできません。大勢の新規ユーザーを集めようとすれば、それなりのコストもかかります。
しかし、一度インストールしてもらえれば
- ホーム画面にアイコンができるため、再訪しやすい
- プッシュ通知などの機能を活用することで、タイムリーな情報を配信できる
- 顧客ごとにグループ化またはパーソナライズしたデジタル接客がしやすい
といった価値を提供できることから、Web に比べて顧客の訪問頻度、滞在時間や CVR(購入率)が大きく伸びる傾向にある というメリットがあります。
特にECサイトのアプリ化はメリットが大きい
既に EC サイトを運営している場合、iOS/Android アプリを開発する際は新規で商品を登録するのではなく、既存の Web から商品情報などを連携することになります。
「既存の Web サイトと中身が重複するアプリに価値はあるのか」と疑問に思われるかもしれませんが、ユーザーの利便性向上はさまざまな調査データにおいて裏付けられており、
- アプリの利用者数は Web の 1/3 程度にも関わらず、滞在時間は Web の 10 倍以上
- アプリ利用者の CV(購入)率は Web の約 5 倍
- 商品閲覧数やカート追加率も高い
といったデータが複数の調査レポートで挙げられています。
特に直接売上につながりやすい EC サイトのネイティブアプリ化はメリットが大きくなっています。
特に、顧客の属性やグループごとに最適化したプッシュ配信や、既存の EC カートシステムとの API 連携などを行った上での動作高速化・UX 設計などに注力すると、成果が出やすいといえます。

関連記事: ECサイトをアプリ化するメリットとは?読み込み高速化やプッシュ通知の効果に注目
2. SNSやLINEとネイティブアプリの役割・運用メリットの違い
顧客のリピーター化、ファン化という目的では、Instagram・Tiktok・X(Twitter)、そして LINE 公式アカウント・LINE ミニアプリも比較対象になります。
これらのツールは、大きく分けて
- 新規獲得に強い:X (Twitter)
- リピーター獲得のための情報配信に強い:LINE 公式アカウント、LINE ミニアプリ
- リピートから購買・ファン育成につなげやすい:自社アプリ
- 顧客層によってはバランスよく効果が出る:Instagram、TikTok
という分類になります。
LINEと自社アプリがWeb/SNSより有利な点:プッシュ通知によるリピート促進効果
LINE と iOS/Android アプリは、新規集客という点ではほとんど効果が見込めません。対して各種 SNS は、リピーターやファンの育成をしながら新規顧客も獲得できることが大きなメリットです。
対して、X ではフォロワー数が多くても情報が届きづらいというデメリットがあります。情報が流れていくフロー型の場なので、認証なしの一般アカウントで 1 ポストの閲覧(Imp)数はフォロワー数の 1~9%、青バッジ認証ありのプレミアムアカウントで 5~20% という相場です。
企業側が好きなタイミングでプッシュ通知を配信でき、「お知らせ一覧」など情報のストック場所に誘導できる LINE と自社アプリでは、SNS に比べれば情報を届けやすく、よりリピート促進効果が期待できるという役割の違いがあります。

LINEと自社アプリそれぞれのデメリットと違い
LINE が自社アプリよりも強い部分は、インストールという手間が不要な点と、プッシュ通知の開封率の高さです。運用がうまくいけば開封率が 50% 以上となるケースもあり、自社アプリに比べて既存顧客の多くに情報を配信することができます。
企業が iOS/Android アプリをリリースした場合、インストールしてもらうための宣伝が必要な上にプッシュ通知の開封率は 1~10% となるため、実はメッセージ配信の効果自体はあまり高いとはいえません。
とはいえ、リピーター獲得効果は LINE が圧倒的に高いというわけではなく、それぞれのメリットがあります。
まず、LINE の開封率は通知を OFF にしている場合の、「未読バッジを消すために一瞬だけ開いたユーザー」もカウントされます。リッチメニューに会員証やお知らせ、EC へのリンクなど便利なリンクがある場合はブロックしづらいため、実際に熟読している人の割合は見えづらいといえます。
そして、アプリのプッシュ通知は案内したいセール情報やお知らせの詳細なページに直接飛ばすことができます。アプリ内ではもちろん LINE に比べて独自のデザインや細やかなパーソナライズができるので、継続的な情報配信からの購買行動につなげる効果は一般的にアプリのほうが高くなります。
アプリで顧客の囲い込みを実現した筆頭事例であるニトリの決算報告によると
- アプリ会員は、物理カードや LINE 会員証の利用者に比べて年間購入回数が 1.5 倍
- 同様の比較で、年間購入金額が 1.7 倍
と、「アプリ会員を獲得するには LINE を活用」「売上を伸ばすためには自社アプリを活用」という定説を裏付けるデータが残っています。
出典:株式会社ニトリホールディングス 2025年3月期 第1四半期決算説明会
結論として、「自社アプリを持つ前の段階で LINE を活用してリピート顧客を増やし、自社アプリを開発したら既存顧客をそちらに誘導して、(X/Instagram/TikTokと並行して)コアなファンを育成していく」という使い分けが業界的に非常にポピュラーになっています。

また、導入・運用費用の面でも大きな違いがあります。LINE と自社アプリのメリット・デメリットの詳しい比較は下記の記事をご覧ください。
関連記事:LINE公式アカウントと自社アプリ - 役割の違いと導入のコツとは
3. iOS/Androidアプリのどんな機能が顧客にメリットを提供できる?
企業が iOS/Android アプリを構築する際に、顧客にアプリならではの価値を提供するためにポイントとなる機能をいくつかご紹介します。
3-1. プッシュ通知
プッシュ通知とは、アプリを起動していないユーザーに好きなタイミングでメッセージを配信できる機能です。
- 特定の店舗やジャンルなどをお気に入り登録しているユーザーにのみ新着情報の配信
- 誕生日・誕生月にクーポン付きのバースデーメッセージ
- 店舗の近くなど、特定の場所にいる人(端末)にのみ配信
- 条件を満たした人に、任意のタイミングで自動配信
など、細かい条件を設定することも可能です。

企業側が周知したいお知らせを定期的に配信するというイメージを持たれがちですが、一括配信・グループ配信・条件付き自動配信(個別配信)などさまざまなパターンで送信できます。
たとえば医療系・眼鏡販売業などであれば来院から一定期間後に定期健診の案内を自動配信する、冠婚葬祭に紐づく企業であればイベント前に自動配信するなど、顧客にメリットのあるリマインド通知なども効果的です。
関連記事:スマホのプッシュ通知とは?効果・メリットと注意点を紹介
3-2. アプリ内メッセージ(アプリ内ポップアップ)
プッシュ通知に比べると名前が浸透していませんが、普段使っているアプリでは誰でも必ずといっていいほど見たことがあるはずです。
アプリ内メッセージは、プッシュ通知とは対照的に、アプリを起動中に特定条件下で表示するポップアップ画面です。リンクつきのボタンも配置でき、画像とメッセージを読んでもらった上で特定の画面に誘導することができます。

- その日初めてアプリを起動したユーザーに、今行っているキャンペーンやセール情報を伝えて誘導
- 会員登録が済んでいないユーザーに、「会員登録するとクーポン進呈」と誘導
などの施策は非常に多くのアプリで実施されています。
アプリは自社に興味を持ってくれているユーザーが多く、Web に比べて滞在時間・回遊率が伸びやすいというメリットがあるため、このアプリ内メッセージをうまく活用することでユーザーの体験を良くし、購買行動にスムーズにつなげる効果も期待できます。
関連記事:アプリ内メッセージとは?プッシュ通知との役割の違いと使い方の事例・ポイント
3-3. 他システムとのデータ連携+パーソナライズ
アプリのメリットは、やはり顧客のグループごとに、あるいは一人ひとりに向けて個別の接客ができることです。
プッシュ通知やアプリ内メッセージをグループ別に配信するという施策は一般的になってきましたが、先行する企業はそれだけに留まりません。
たとえば、当社のプラットフォームで開発したアプリでも、ユーザー属性に応じて表示するバナーやページのコンテンツを出しわけることができます。

参考:ホーム画面をユーザーごとにパーソナライズできるようになりました(当社製品アップデート情報)
会員登録時に取得したユーザーの属性情報だけでなく、既存の会員システムや基幹システムと連携することで、購買履歴や会員ランクを紐づけるなど、アプリ内のユーザーをより細かく識別できます。
さらにデータ活用の最先端企業では、
- 売上予測から翌シーズンの在庫・仕入のコントロール
- アプリ内の顧客の行動から適切な商材と営業タイミングを把握 → 個別アプローチへ
- 店舗スタッフが店舗と EC の両方で接客し、「誰が何を売ったのか」という成果を正しく計測(店舗部門と EC 部門の利益が相反することによる非協力関係を防止)
といった高度な施策も行われています。(※アプリを作るだけでなく、専用のツールを導入する場合が多いです)
3-4. WebView など、既存の Web を活用する機能
ユーザーにとって大きなメリットがあるわけではありませんが、企業が iOS/Android アプリを構築する際には運用効率化の視点で欠かせない機能です。
WebView とは、スマホのネイティブアプリ(iOS/Android OS)独自のアプリ内ブラウザで、Google Chrome や Safari などとは違う仕様でデータを処理して、既存の Web ページを表示する仕組みです。
当然、元の Web ページを更新すればアプリ内の該当部分も更新されるので、店舗詳細ページであれば連休中の店舗の営業時間など、重要な情報の更新し忘れを防ぐことができるという効果があります。

また、iOS/Android アプリのネイティブ(独自開発)のページの中でも、スクレイピングや API 連携によって既存の Web サイトのコンテンツを自動的に取得して表示することは可能です。
自社アプリを企画する際は、どこをオリジナルで構築し、どこを既存のページでまかなうかといった設計も重要になります。

関連記事
- WebViewとは?メリットとブラウザアプリとの違いをわかりやすく解説
- 既存のWebからデータを同期する機能について(当社製品アップデート情報)
- Shopifyと連携して、既存のECサイトの商品一覧などを自動で取得できます(当社製品アップデート情報)
[まとめ] Web/SNS/LINE/アプリそれぞれの役割とメリットを考えた使い分け
自社アプリを検討する際にまず覚えておくべきことは
- 大手モール、自社の Webサイト、SNS、LINE、自社アプリそれぞれの長所をよく理解する
- 特にリピーター獲得に強いアプリと LINE に関しては、できることの幅や運用コスト面も踏まえて理解する
- 自社アプリを作る際は、顧客にとってなにが一番喜ばれるか?という機能を考慮し構築する
という点です。
もちろん、予算や人手が限られている場合、LINE・アプリなどデジタル施策すべてに取り組めるわけではありません。予算が限られている場合は、
- まずは Web に注力し、集客や購買につながるように改善
- LINE 公式アカウントで、プッシュ通知の運用に慣れながらリピーターを増やしていく
- LINE の成果が出てきたら、iOS/Android アプリに移行していく
という段階を踏んで進めることをおすすめします。
AppsFlyer のレポートでも「Web 経由で購入意欲をあるユーザーの獲得し、アプリへ誘致できれば、コストを 15~30 %節約できる」と、Web とアプリの相乗効果が記されています。
参考:モバイルアプリマーケティングトレンド2022(AppsFlyer)
また、自社アプリを作る際に重要な視点は、ある程度の予算を用意した上で「アプリでなければできないこと」をしっかりと実装できるツールやベンダーを選ぶことです。
安価にアプリを開発するサービスや、ノーコード・ローコードまたは AI ベースでそれなりのアプリを内製できるツールなどもありますが、自社アプリを運用する最大の役割は「ファンを増やすこと」です。一定の品質を担保できない場合、アプリを運用するよりも LINE や SNS を運用するほうが効果的になってしまうというリスクもあります。
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