2020 年はコロナ禍によって購買行動が大きく変化しましたが、2022 年は「新しい購買行動・フローが定着するのか」という意味で要注目の一年でした。
EC サイト・アプリに関するニュースはもちろん、広告会社やマーケティングツールを扱う企業による消費者への調査レポートの中でも印象的なものがありました。
そこで、本記事では今年発表された調査レポートを中心に、知っておきたいデータをまとめています。来年からの EC サイト・アプリの施策を考える上で参考になればと思います。
1. 実店舗/EC の両方を行き来する「ハイブリッド購買行動」の増加
Criteo が発表した「ショッパーストーリー 2022」では、2021 年で小売事業者・EC 事業者がますます「オムニチャネル化」を求められることがわかるデータが発表されました。
定期的または不定期的にこれらのアクションを行うかどうか(2019→2021)
- ショッピングアプリを使って購入する:55%→76%
- 店舗で商品を見てからオンラインで購入:67%→72%
- オンラインで商品を閲覧してから実店舗で購入:52%→68%
コロナ禍の前の時点で、「EC で商品を探し、実店舗で実物を手にとって質感・肌触り・サイズ感などを確かめる」「実店舗で良い商品を見かけたら、EC で価格を比較したり、在庫がある店舗から自宅に発送してもらったりする」という、オンライン・オフラインを両方活用して商品を購入する消費者の動きが指摘されてきました。
出典:進化し続ける消費者のショッピング動向に関する調査レポート 「ショッパーストーリー2022」を発表(Criteo)
なお、Criteo からは 2018 年の調査で「ブラウザでの CVR は 3% だが、アプリの CVR は 20%(約 6 倍)に達する」、2015~16 年頃まで「カート内への商品追加率など、より細かい指標においてもアプリがモバイルサイトを圧倒している」というデータが発表されていました。
また、国内では「ユニクロ」アプリが非常に高い利用率を誇っていますが、
- アプリ会員は顧客ロイヤルティが高い
- アプリ利用者は、「半年に 1 回以上実店舗を訪れる」人の割合が非利用者に比べて 2 倍以上
- 「1 ヵ月に 1 回」利用する消費者だけを比較すると 6 倍になる
というデータが明らかになっています。
出典:ファッションアプリ利用率ランキング!3位は「しまむら」、2位は「GU」、1位は?アプリ利用とブランドロイヤルティの因果関係とは(スパコロ)
※こちらは 2021 年のニュースリリースです
2. EC アプリの滞在時間が伸び、全世界では SHEIN アプリが圧倒的なセッション時間を記録
オンライン時の購買行動の受け皿として、EC サイトをアプリとして展開する流れも世界的に広がっています。
緊急事態宣言など自粛期間から抜け、アプリ全体としては 2021・2022 年にセッション時間が落ちたジャンルも目立っています。しかし、adjust の調査では世界の EC アプリの平均滞在時間は 2019 年以降毎年伸びています。
とはいえ、上記のスパコロの調査でも「ユニクロ」「GU」と「しまむら」「ZARA」のアプリ利用率に大きな差があるように、アプリを作れば絶対にうまくいくというわけではありません。そこで成功している EC アプリをしっかりと分析することが重要になります。
全世界の市場において、EC プラットフォームで最も印象的な成長を見せたのは「SHEIN」でしょう。
個社のアプリではなくモール型であり、商品や生産体制に対するニュースでたびたび騒ぎにはなっていますが、SHEIN アプリの成長率は圧倒的でした。
SensorTower の調査では、
- 2021・2022 年ともにリテールアプリでの DL 数トップ
- 2020 年第 2Q から 2022 年第 2Q まで、9Q 連続で最もダウンロードされたファッションアプリ
- 2022 年第 2Q に Android のアクティブユーザーの 56% が月に 3 日以上アプリを開いていた
- 2022 年第 2Q におけるグローバルファッションアプリの総セッション時間で 1 位
- コホート平均より 26 %高く、他のアプリはすべて平均を下回る → SHEIN だけが圧倒的
と、圧倒的な数値を叩き出しました。
問題にもなっている破格の値段や商品バリエーションなども評価はされていますが、それだけで圧倒的なセッション時間が確保できるとは考えづらいです。
資料内では、チェックインやレビューで特典がつくポイント・プログラムも影響しているのではないかとのこと。また、SHEIN のアプリは PUSH 配信やメール配信の頻度が圧倒的に高いことも特徴的です。
特にユーザーのレビューが投稿されているほうが消費者の信頼が増すというデータは各所であがっているため、UI・UX の設計や顧客に提供する価値を考える上では参考になる部分もありそうです。
出典:The State of Retail Brand Apps in Europe 2022 (SensorTower)
3. 「カート落ち」への対策が不足している EC 事業者が多い
一般的な EC では、商品をカートに入れたまま離脱する「カゴ落ち(カート落ち)」の割合は約 80~90% が相場です。
「アプリで閲覧していたが、比較検討のためパソコンで開き直した」「EC サイトで良い商品を見つけたので、実店舗で実物を見にいった」など、オムニチャネル化による顧客の特殊な購買フローも影響はあると考えられます。
しかし、Stripe の調査では「89% の EC 事業者はカート落ちの顧客に対してフォローをしていない」という結果になったそうです。
Klaviyo の調査では「カート落ちした顧客にメール配信によるリカバリーを実践している企業は 3〜14% の売上ロスを回復している」ため、Stripe のレポートでも対策をまとめています。
一方、メールマガジンに関連する各社の調査レポートでは開封率は依然として低めの水準で推移しているため、顧客へのフォローとして iOS/Android アプリの PUSH 配信を活用することも有効な手段となります。
出典
4. 消費者が求める「決済手段」への対策が不足している EC 事業者が多い
上記 Stripe の調査では、EC 事業者において決済フローでの対応にも課題が多い=消費者のニーズに応えきれていないと指摘しています。
「日本の消費者の 52% は、EC サイト上で決済完了までに 3 分以上かかると購入を断念する」という調査結果になったようで、離脱が増える原因として「クレジットカード登録画面の設計にミスがある」「対応している決済手段が少ない」という二点を挙げています。
- クレジットカード登録画面において、システムエラーを引き起こしうる箇所が修正されていない(箇所ごとに 33%~84%:資料参照)
- 82% の消費者は、希望する支払い方法がない場合、カートの商品を放棄することが多い
消費者の 80% は「すぐに買いたいときは Apple Pay などワンタップで決済完了させたい」「平均注文額が高い場合は分割払いをできるようにしたい」と回答し、日本国内特有の事情としては「コンビニ決済が第一候補」という消費者が 29% も存在するようです。
しかし EC 事業者はこのような複数の決済手段に対応するには手間がかかるため、対応している企業は多くないとのこと。2023 年は、カート落ちへの対策と同様、「決済中の離脱」への対策もますます盛んになるかもしれません。
資料はこちらからご覧ください
これらのデータを踏まえ、EC アプリのメリットをまとめた PDF 資料を下記より無料・情報入力無しでダウンロードいただけます。
PDF版の詳細な資料も用意しておりますので、ぜひ社内で共有するための資料としてなどお気軽にご利用ください。
資料は下記より無料でダウンロードいただけます。