自社で iOS/Android アプリを始める際、すでにメールや SNS・LINE などのデジタルマーケティングは実施されている企業様がほとんどです。
自社アプリのご相談をさせていただく中で、よく「既存のツール・施策はどうなるのか」というご質問をいただきます。特に「メールマガジンは効果を感じないので、アプリのプッシュ通知で開封率・リーチ率が改善できるのでは」という期待を抱かれることも少なくありません。
そこで、本記事では E-Mail によるマーケティングの現状と、アプリとの使い分けとその事例をまとめていきます。
1. メールマガジンなど販促用 E-Mail の開封率の相場とは?
GetResponse による 2022 年のメール マーケティング ベンチマークを見ると、メールマガジンなどのマーケティング用の E-mail の開封率は平均で 10〜15%、本文内のリンクのクリック率は 1〜3% 程度が相場となっています。
1-1. メール単体でのマーケティングはデメリットが目立つ
AIRSHIP が全世界の消費者に対して実施した調査では、消費者の 76% は企業からのメールを「常に、または頻繁に無視する」と回答しています。
若い世代ほど “捨てアド” など日常的に使わないアドレスを入力し、配信停止をしないまま受信(無視)し続ける傾向も見逃せません。
さらに、Zipstripe の調査では、消費者が E-Mail を開封するまでに平均して 6 時間半かかるため、その日の限定オファーなどのタイムリーな情報配信には向いていません。
そこで、特に 20〜40 代の顧客に対して企業が継続的に接点を持つために iOS/Android アプリを開発し、プッシュ通知によってコミュニケーションを生み出そうという事例が増加しています。
1-2. アプリのプッシュ通知はメルマガより開封率が高いのか?
一方、アプリの PUSH 配信は、「反応率を正確に計測することが難しい」「送り方によって大きく変動する」といった要因から、一概に「相場はこの程度」と比較はしづらいものです。(※大まかに言えば通知のタップ率は 1〜5% 程度が目安です)
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ただ、若年層への訴求しやすさに加え
- タイムリーな情報の配信しやすさ(アプリの通知も開封までに多少の時間はあるが、メールよりは確実に早い)
- 通知から購買行動へのつなげやすさ(タップするだけで誘導したいページに遷移してもらえる)
といったメリットがあります。
とはいえ、近年では消費者も企業のアプリマーケティングに慣れてきたことから、「プッシュ通知の配信頻度は自分で設定したい」「毎日・何回も送ってほしいわけではない」という意識が AIRSHIP の調査レポート(前述)からうかがえるため、頻度には注意したいところです。
2. メールとプッシュ通知の使い分け例
とはいえ、メールによるマーケティングに注力する必要がないというわけではありません。iOS/Android アプリ事業においても、
PUSH 配信ツールを提供する Pushwoosh は、プッシュ通知とメール配信の両軸が重要だという記事を執筆しています。
参考:Emails + Push Notifications: Improve Your Marketing Strategy (Pushwoosh)
代表的な例として、
- アプリ内で会員登録してくれた新規ユーザーに、挨拶と特別オファーを含むメールを送信
- メールを無視した顧客、あるいは開封したがオファーを使用しなかった顧客にアプリから PUSH 配信
といった、メールに特典を付けてアプリをリマインド代わりに使う仕組みが挙げられています。
アプリのプッシュ通知は、「文面は読むが、タップはしない」という消費者の行動パターンもあるため、ボリュームがある内容をまとめるにはメールが適しています。そこに特典を付けることで、メールの印象を良くする効果が見込めます。
これを応用すると、
- お気に入り登録しているアイテムの値引きや在庫減少などの案内をメールで行う(EC 系)
- おすすめのコンテンツ・プレミアムコンテンツなどの案内はメールを使う(メディア系)
など、PUSH 配信を煩わしく感じさせないように減らし、その分をメールで代替することで、重要な PUSH 配信の効果を最大化するという使い方も考えられます。
3. 特に EC ではポジティブなデータを持つメールマーケティング事例もあり
実際の事例を見ても、メールによるマーケティングが全くの無意味というわけではありません。
海外の調査レポートでは「アプリを解約した顧客に対し、E メールで再度アプローチすることも有効」という提言も出てくるなど、「メール+PUSH 配信」の組み合わせの事例は今後も注目していきたいところです。
3-1. EC の「カゴ落ち顧客へのフォロー」事例
アプリだけでなく Web も含めて、EC では「カートに商品を入れてから購入に至らないセッションは平均 80〜90% ある」というデータが悩みのタネになっています。
特にスマートフォンで閲覧している消費者は「あとでパソコンから見て比較検討する」といった流れも多いため、カゴ落ち率も高くなります。
Klaviyoの最近のレポートによると、カート落ちした顧客にメール配信によるリカバリーを実践している企業は、3〜14% の売上ロスを回復しているというデータがあるそうです。
参考:おすすめ!「カゴ落ちメール」の事例16選 (Shopify)
Stripe の調査では、89% の企業はカート落ちの顧客に対してフォローをしていないというデータもあり、まだ改善の余地がある領域といえます。
もちろん販売する商材のジャンルや顧客の属性にも左右されますが、「メールマーケティングは効率が悪いのでアプリに注力」というよりは、それぞれの効果を最大化するように施策を考えていくことで売上の向上が期待できます。

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