アプリを開発したいけれど、「費用が高そう…」と感じている企業や店舗経営者の方は多いのではないでしょうか。実は、iOS/Android アプリの開発には各種補助金・助成金が活用できるケースがあります。うまく活用すれば、自己負担を抑えつつ、オリジナルの自社アプリを実現することも可能です。
この記事では、アプリ開発で使える代表的な補助金制度について、それぞれの特徴や使い分けのポイントをわかりやすくご紹介します。
1. iOS/Android アプリ開発でも補助金・助成金が使えます
近年では、ノーコード(パッケージ)サービスの普及により、自社アプリの開発費用相場は下がってきています。とはいえ、どうしても Web に比べるとアプリの開発には費用がかかります。
そんな iOS/Android 領域でも、 IT 系の補助金・助成金を活用すれば、 1/2~2/3 程度の金額が補助される可能性があります。多くの補助金では「外注・委託費用」や「ソフトウェア導入費用」が対象になるため、はじめての自社アプリ開発やリニューアルをコスト面で大きく後押しすることができます。
Web サイト開発 → アプリ開発など、複数回にわたって補助金を活用することもできますが、既に前年までに補助金を利用している場合は、
- 前年に採択されている補助金に今年また申請する場合、審査のハードルがやや高くなる
- 過去に利用した補助金の実績報告において不備・不正があった場合、同じ補助金は使えない
という傾向にあります。
3 年間のうち二度利用している場合は申請不可という場合もあるので、補助金・助成金を活用して DX を進める場合は、選択肢を多く持っておくことが重要です。
補助金でアプリを作った場合の主なデメリット
どの補助金にも共通する注意点・デメリットについては、
- 中小企業を対象にしているものが多く、従業員数や資本金の条件を満たす必要がある
- 採択結果を待ってからの契約となるため、補助金のスケジュールに合わせた社内調整が必要
- 金額が大きいものは概ね採択率が 1/2 以下で、補助金支給を前提にした計画はリスクがある
- 賃上げや事業成長を前提とした事業計画書の提出が必須で、補助金の規模に応じて 2~6 週間程度の準備期間と労力が必要
- 採択されてアプリを開発した後、数年にわたって毎年効果報告を行う必要がある
- 金額が大きい補助金の場合、審査時に提出した賃上げや事業成長の目標を達成できていない場合に補助金の返還などのペナルティを課せられる場合もある
といったところが挙げられます。
採択率が低く補助金額が大きいものは、当社のような制作会社とお客様に加えて補助金専門のコンサルティング会社を交えてプロジェクトを進めることが一般的です。
2. 自社アプリ開発で使える補助金の種類(大枠)
いくつか相性のいい補助金がありますが、作りたいアプリの開発方式や目的によって、適した補助金は異なります。
2-1. ある程度シンプルなアプリの場合=ノーコードパッケージの導入に補助を受ける
まずは一般的な機能に絞って自社アプリをスモールスタートしたい場合は、ノーコード開発やローコード開発で初期費用を削減するのが一般的です。
SaaS 型のサービスを活用したノーコード開発では、約 150 万円の補助を受けられる「IT 導入補助金(主に通常枠・1 プロセス)」が有力な候補となります。
IT 導入補助金は、ソフトウェアの導入による業務効率化や DX (デジタルトランスフォーメーション)を支援するもので、ノーコードで自社アプリを運用できるようになる、当社の「Pasta」のようなプラットフォームの月額利用料が対象となります。
また、シンプルなアプリにおける IT 補助金以外の助成金では、「小規模事業者持続化補助金」などの選択肢もあります。
2-2. オーダーメイド(フルスクラッチ)で作る場合=競合と差別化をすることで大きな補助を受ける
自社アプリをゼロから設計・構築するフルスクラッチ開発、カスタマイズの開発量が多いローコード開発では、初期費用が 1,000 万円以上になります。そのため、補助額の大きい以下の補助金の活用が検討されます。
- ものづくり補助金
- 事業再構築補助金(→中小企業新事業進出補助金にリニューアル)
- 新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業
ただし、たとえば知名度の高い「ものづくり補助金」は、補助額が 1,000 万円以上にもなるケースがあり、採択率も低くなっています。
また、補助金額が大きいものを申請する場合は、パッケージサービスの基本機能のようなものだけでなく、自社ならではのこだわった機能が求められるケースが多いです。
ですので、綿密な事業計画や収益モデルの提示、ベンダーとの協力体制が求められます。補助金活用の知見が豊富なコンサルティング会社も交えて事業計画を立てるというケースも少なくありません。
ここからは、各補助金・助成金の特徴などをまとめていきます。
3. IT導入補助金の対象・条件と活用できるケース
IT 導入補助金は、「IT 導入支援事業者」として登録された企業が提供するソフトウェアの導入に対して、導入費用の最大 1/2 が補助される制度です。
補助金をもらってから三年間、毎年効果報告をする義務はありますが、募集のタイミングが多い上に採択率も比較的高く、助成金の中では利用しやすい部類です。
- 補助金額:シンプルなアプリ(プラン)の場合は最大で約 150 万円、高機能なアプリ(プラン)の場合は最大で 450 万円
- 補助率:通常枠では 1/2、特定の条件を満たす場合のみ 2/3
対象となる開発物・サービス
アプリサービスの場合、初期構築費用は対象外となりますが、ストアの審査に通過してアプリを公開してからの月額利用料(ライセンス料)に補助が適用されます。IT 支援事業者がオプションとして登録している場合、マニュアル作成や初期研修といったオプションにも補助が適用される場合があります。
毎月の負担が軽くなり、運用中に出てくる要望に応じたカスタム開発に費用をまわすことができるため、「まずは最小限の機能で自社アプリをスタートしたい」という場合に適した制度です。
ちなみに、当社は 2023 年から支援事業者となっており、ノーコードアプリプラットフォーム「Pasta」をツールとして登録しています。
関連ページ:当社アプリプラットホーム「Pasta」を利用したアプリ構築が「IT補助金2025」の対象となります
利用できる企業の条件と注意点
補助金を受けたい企業は、公式ページにある「資本金」または「従業員数」の条件を満たす必要があります。たとえば、「サービス業」と「小売業」を営んでいる場合、資本金 5,000 万円以下、従業員数 50 人以下のどちらかを満たしていれば対象となります。
また、補助金・助成金全般に共通する準備として、IT ソフトウェアの導入によって「業務効率化」と「賃上げ」を達成すること、およびその事業計画の提出が求められます。特に最大 450 万円の補助を受ける場合は、目標を達成できない場合に補助金の返還を求められる可能性があります。
また、直近で iOS/Android アプリ以外のソフトウェアの導入に IT 補助金を活用した場合は、求められる目標値など申請の難易度が上がります。さらに、2024 年度の通常枠で採択された場合、2025 年の通常枠には申請できません。
IT 導入補助金の受給タイミングは、自社の事業推進のタイミングに合わせて調整することが非常に重要です。
出典:IT 導入補助金
4. フルスクラッチ開発で使える「ものづくり補助金」
ものづくり補助金は、製品やサービスの革新に取り組む中小企業を支援する制度です。「もの補助」という略称で比較的知名度が高い助成金といえます。
- 補助額:750 万円から、最大 2,500 万円(枠により異なる)
- 補助率:中小企業 1/2、小規模企業または一定条件を満たす企業のみ 2/3
対象となる開発物・サービス
「革新的な新製品・新サービス開発の取り組みに必要な設備・システム投資等を支援」という補助金なので、収益化を前提とした新規サービス・製品の開発が対象となります。
iOS/Android アプリの開発でも収益の増加に直結する、高機能なものを作る必要があります。
利用できる企業の条件
IT 導入補助金と同様に、
- 業種ごとに定められた従業員数・資本金の条件を満たす
- 「賃上げ」「事業成長」の目標達成
- 事業所の最低賃金を事業実施都道府県の最低賃金より +30 円以上アップする
- 上記を満たす事業計画の提出
- 次世代育成支援対策推進法に規定する「一般事業主行動計画」の策定・公表 (従業員が 21 名以上の場合)
が求められます。補助金額が大きくなるので、条件も厳しくなります。また、医療法人や、業種によっては組合・連合会・財団法人(公益・一般)、社団法人(公益・一般)も補助対象外となります。
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 第19 次公募要領概要版
申請における注意点
- 採択率は 1/3 程度と、補助金の中でも低め
- 応募にあたっては事業計画書が必須であり、一ヵ月以上の準備期間を取ることを推奨
- 採択から約 10 か月以内での完成・納品が必要になるので、ベンダーとの調整が必要
- 3 年以内に一度ものづくり補助金を利用した場合は審査のハードルが上がり、二度利用している場合は対象外
さらに、第 18 次公募で存在していた「省力化(オーダーメイド)枠」は廃止され、創業・第二創業直後の事業者に対する加点も廃止されました。一方で、事業承継・ M&A の実施や、成長加速マッチングサービスへの登録が加点対象とされています。
年次・日程ごとに募集枠や条件・加点項目が変わるので、ものづくり補助金を活用したアプリ開発に関してはまず一度お気軽にご相談ください。
5. 新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業について
東京都が 2024 年度より新たに設けた中小企業向けの補助金制度です。変化の激しい市場環境に対応し、既存事業の深化・発展を目指す都内中小企業を支援することを目的としています。
- 補助額:800 万円
- 補助率:2/3
募集のタイミングは一年間で複数回ありますが、各回の受付期間が 2 週間程度と短いので、事前の計画と準備が重要になります。
対象となる開発物
外注・委託費用も対象になるため、アプリ開発においては幅広く対応できます。収益重視の EC アプリだけでなく、顧客管理や業務効率化のためのアプリ開発も対象になり得ます。
ただし、既存事業の深化・発展を目的としているため、社内で新規事業を立ち上げる場合などでは利用が難しくなることに注意しましょう。
利用できる企業の条件と注意点
- 本店の登記が東京都内にあること(個人事業主を含む)
- 資本金や従業員数については、業種ごとに定められた上限を満たしていること
- 直近決算期の売上高が、「2019 年の決算期以降のいずれかの決算期」と比較して減少している または 直近決算期において損失を計上していること
- 前年度に利用している場合、過去 5 年間に「企業化状況報告書」や「実施結果状況報告書」等を所定の期日までに提出できていない場合は利用不可
売上高の減少や赤字計上が条件となっている点が特徴的です。既存事業の収益性を高めるにあたって自社アプリの運用は効果的になるケースも多いので、各種補助金の中では iOS/Android アプリとの相性が良い部類といえます。
6. 事業再構築補助金 (2025 年 3 月 26 日で終了)
2021 年、中小企業庁によって設立されました。事業再構築補助金は、ポストコロナ時代の市場変化に対応するために、新分野への進出や業態転換、事業再編など「思い切った事業転換」に挑む中小企業を支援する制度です。
- 対象:事業の再構築にあたる大規模な取り組み
- 補助額:500 万から最大 1 億円(枠により異なる)
- 補助率:最大 1/2
再構築補助金は終了し、下記の「新事業進出補助金」にリニューアルされる形となります。
出典:事業再構築補助金
7. 中小企業新事業進出補助金
2025 年に中小企業庁によって新たに設立された補助金です。事業再構築補助金の流れを汲んでいるため、新たなチャレンジとしての大規模開発が対象となります。
- 対象:企業の成長・拡大に向けた新規事業(既存の事業とは異なる)への挑戦を行う中小企業等
- 補助額:補助下限 750 万円から最大 7,000 万円(9,000 万円)
- 補助率:最大 1/2
利用できる企業の条件と注意点
中小企業の定義は IT 導入補助金と同様に、業種によって定められた資本金または従業員数の条件を満たす必要があります。
新設された補助金なので、採択率もどの程度になるか分かりませんが、補助金額が大きいため綿密な計画と準備が求められます。
また、ものづくり補助金と比較した際、高い成長率を求められます。目標未達の場合は補助金の返還義務もあるので、収益に直結するアプリを企画・設計する必要があります。
- 付加価値額の年平均成長率 +4.0% 以上増加 (ものづくり補助金の場合、+3.0% 以上)
- 給与支給総額の年平均成長率 +2.5% 以上増加 (ものづくり補助金の場合、+2.0% 以上)
出典:中小企業新事業進出補助金
8. 小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、比較的少額で申請しやすい補助金として、多くの店舗・中小企業で活用されています。
- 補助額:通常枠は 50 万円、条件を満たす場合のみ 200 万円
- 補助率:通常 2/3、賃金引上げ特例に申請する赤字事業者のみ 3/4
申請できる企業
- 商工会地域・商工会議所の管轄地域内で事業を営む営利法人・特定非営利活動法人または個人事業主
さらに、「小規模事業者」の定義として
- 課税所得の年平均が 15 億円未満であること
- 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)の場合、常時使用する従業員の数が 5 人以下
- 宿泊業・娯楽業・製造業その他の場合、常時使用する従業員の数 20 人以下
- 100%の株式を大手に所有されている子会社・グループ会社は対象外
- 医師・歯科医師・助産師・一般社団法人・個人農業者・協同組合は対象外
という条件もあります。IT 導入補助金・ものづくり補助金などと比べると、従業員数の条件がやや厳しく、より小規模な事業者向けとなっています。
申請における注意点
過去の実績を見ると、採択率は 40% 程度で、同じ金額感である IT 導入補助金に比べるとやや審査が厳しいといえます。審査期間も 2 カ月程度かかるため、1 カ月程度で採択結果が発表される IT 補助金に比べると事業のスタートまで時間がかかります。
一方で、商工会・商工会議所の事業であるため、申請にあたっての経営計画を策定において公式サポートを受けられて申請しやすい点がメリットです。 また、支援事業者が登録したソフトウェアやサポートメニューしか申請できない IT 導入補助金に比べると、ゼロベースで小規模なシステムを作る際には適しています。
また、複数回の利用は可能ですが、過去の公募回で採択され補助事業を実施した小規模事業者が再度申請を行う場合には、以下の条件を満たす必要があります。
- 補助事業の実施期間終了月の翌月から 1 年間が経過していること
- 「小規模事業者持続化補助金に係る事業効果及び賃金引上げ等状況報告書」(様式14)を提出し、受理されている(不備がなかった)こと
出典:小規模事業者持続化補助金
9.まとめ
アプリ開発に使える補助金は、実は想像以上に多く存在します。重要なのは、自社の開発目的と事業規模に合った制度を選ぶことです。また、補助金は事前申請が基本ですので、「アプリを作りたい」と思ったタイミングで、早めに情報収集・準備を進めるのがおすすめです。
BackApp では、約 200 社の開発実績を元に、お手軽な価格で機能性・カスタム性を確保したアプリパッケージ「PASTA」を提供しています。 フルスクラッチ開発も手掛ける制作会社のため、アプリ構築パッケージサービスを手掛ける他社に比べて運用中に発生する「こんな機能が欲しい」「こんなデザインにしたい」といった要望に柔軟にお応えできる点が強みとなっています。
初期費用を抑えて自社アプリを導入しつつ、社内のニーズに応じて柔軟に提案・拡張できますので、自社アプリを導入したいという場合はぜひ一度お気軽にご相談ください。

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