日本国内の観光地もコロナ禍の落ち込みから回復傾向にあり、少しずつ人が増えています。
さらに追い風として、国土交通省の観光庁が発表した訪日外国人消費動向調査 (2024 年 4 月 17 日の一次速報) によると、 2024 年の 1-3 月期の訪日外国人旅行消費額は 1 兆 7,505 億円にのぼり、前年同時期より 73.3 %増加傾向と発表されました。
出典:訪日外国人消費動向調査
今回のブログでは、日本各地で必要とされる「観光(地方ガイド)」のデジタル施策を検討する材料として
- 観光(地方ガイド)のデジタル施策が求められる背景
- 観光(地方ガイド)×アプリでできること
- 観光アプリの活用事例
という観点からまとめていきます。
1. 観光アプリ導入を検討する際に知っておきたいデータや参考記事
まず、観光アプリの需要について述べる前に、もう少しインバウンド(訪日外国人旅行)と日本人における国内旅行消費(日本人国内旅行消費額)についてのデータをおさえておきましょう。
日本人の国内旅行消費額もコロナ禍前に戻りつつある
- 2019 年の日本人国内旅行消費額は 21 兆 9,312 億円 (コロナ禍前)
- 2020 - 2021 年は、約 9 兆円ほど (コロナ禍)
- 2023 年の日本人国内旅行消費額は 21 兆 9,101 億円 (コロナ禍後)
2019 年と 2023 年の数値を見るとほぼ変わらないので、日本人の国内旅行消費はコロナ渦以前に戻ったといえます。
訪日外国人旅行者数・旅行消費額ともにここ 10 年で約 1.5 倍に増加
- 平成 25 年 ( 2013 年) の訪日外国人旅行者数 1,036 万人
- 令和 5 年 ( 2023 年) の訪日外国人旅行者数 2,507 万人
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- 2015 年の訪日旅行消費額 3.5 兆円
- 2023 年は 5.3 兆円
なお、経済産業省は、2030 年までに訪日旅行消費額 15 兆円を目標にしているとのことです。
出典
SNS 等で有名になったエリアは観光するが、近隣エリアは素通りする観光客が多い
日本人でも縁のない地方に初めて旅行する際は、有名な観光スポット以外をどう巡る・探すか悩む方も多いのではないでしょうか。
海外からの観光客も同じ傾向にあり、海外の SNS でバズったり、Google Map などで多くの口コミがついている場所以外には足を伸ばしてもらいづらいことが課題となっています。
日本国内でキャッシュレス決済サービスが普及
- 2023 年、国内でのキャッシュレス決済比率は 39.3%(126.7兆円)で、前年より 3.3 pt 上昇
- 2023 年、日本におけるインバウンド決済の 40 %をクレジットカードが占める
やや本筋からは逸れますが、観光客においてもスマートフォンを使う場面が増えているというデータです。Google Map や観光ガイドだけでなく決済も行う観光客が増えることで、デジタル施策を推し進める追い風となります。
PayPay は Kakao Pay(韓国)、E.SUN Wallet(台湾)など、アジア太平洋地域の 9 つのキャッシュレス決済サービスと連携したことで、日本はインバウンド旅行者の 70 %にデジタルウォレット決済オプションを提供することが可能になりました。
出典
このような参考データも含めて考えると、今後は国内旅行の需要・インバウンド需要ともに増加すると見込まれるので、各自のスマートフォンのアプリ上で各地方のガイドや、キャッシュレス決済の需要が高まりそうです。
2. 観光アプリで使われる機能
ご当地の観光情報を伝える方法は様々です。では、どのような機能があるのかを以下にまとめます。
音声ガイダンス機能
観光アプリに音声ガイダンスを搭載するメリットは主に 3 つあります。
- 多言語対応により、インバウンド需要に対応できる
- 有名なナレーターや声優を起用することにより、聞き取りやすい音源を提供できるとともに、その界隈のファン層を取り込むこともできる
- 視覚に障害のある方にも楽しんでもらえる
歩数計機能
指定された観光地の区間を歩くことにより、ポイントを貯めることができます。また、歩いた歩数をアプリで確認することも可能です。
GPS を利用したナビゲーション機能
指定した場所へルート案内してくれる機能です。 MAP 上にアイコンを設定し、アイコンの場所へ行くとアイテムやスタンプを獲得することも可能です。 また、観光地付近の駐車場の場所や、トイレの位置、帰宅時の道路混雑状態をアプリから見てわかるようにすることで、初めて訪れる場所でも安心して観光できるようになります。
デジタルスタンプラリー機能
地方の地域活性化や観光地で主に利用されます。 デジタルスタンプを獲得する方法は、以下の 3 種類です。
- QR コードを読み取ることで、スタンプが獲得できる
- GPS による位置認証を行い、対象スポット付近にいると、スタンプが獲得できる
- NFC タグをスマートフォンでタッチすることで、スタンプが獲得できる
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デジタルクーポン機能
商品の値引きや特典などをアプリのデジタルクーポンとして提供することで、地域内の店舗を利用してもらえる可能性が広がります。 観光アプリでは、デジタルスタンプラリーのアプリや歩数計機能に併用されていることが多いです。
AR 機能(拡張現実)
地図案内機能に AR を使うことで、直感的に目的地へたどり着くことができます。カメラで道を写し、目的地の方向に矢印がでてくるので道に迷うことがありません。 また、目的地までの道中にご当地の有名店をスマホでかざすことで、お店の口コミや店内の様子を知ることができます。
AR 機能は、歴史を紹介する観光地との相性も良いです。 歴史的な場所で過去の風景を再現した画像や動画をスマートフォンで閲覧したり、フォトフレームに表示したりすることができます。撮影した写真や動画は SNS で共有することもできます。デジタルスタンプラリーと組み合わせてアプリ制作されることが多いです。
3. 観光アプリの事例
では、第 2 章でご紹介した観光アプリの機能が実際、どのように活用されているか事例をご紹介します。
石切劔箭神社アプリ(大阪)
大阪府東大阪市にある石切劔箭神社(いしきりつるぎや)を紹介するアプリです。「音声案内」がメインの機能です。日本語ガイダンスには声優の高橋 英則さんを起用しており、境内の MAP で好きな場所を選ぶことで、無料でガイド音声を聞くことができます。また、英語音声にも対応しています。
「音声機能」と「 MAP 」機能のみのシンプルな作りですが、イヤホンをして境内をゆっくり巡るという使用用途がはっきりとしていて、海外の方にも使いやすい設計です。
出典:
ホテルやツアー申込ができる東京都旅行ガイドアプリ(東京都・海外向け)
「東京都旅行ガイドアプリ」という名前のアプリです。アメリカのカリフォルニア州にある ETIPS INC が制作しています。
14 カ国語以上の言語をサポートしており、日本国内の観光地を多言語表示、音声で紹介してくれます。 MAP 機能もあり、現在地からのルート案内もあります。
「ツアー」ボタンをタップすると、(https://www.getyourguide.jp/)の Web 画面に遷移して日本国内ツアーを申し込むことができます。「ホテル」ボタンをタップした場合は、アプリから日本国内の宿泊施設を予約することができます。レンタカーを予約することも可能です。
出典:
日本遺産倉敷Naviで楽しく散策!魅力を再発見!(岡山県)
倉敷市の文化遺産の魅力をよりわかりやすく伝えるナビゲーションアプリです。株式会社デンソーの NaviCon を利用して GPS の位置情報を取得します。
「モデルコース」と「ナビコース」に分かれていて、訪れたい場所を選択してルート案内にしたがって移動できます。道中の近辺に設置してあるトイレ情報やレンタルサイクルの場所などがタブに表示されており、タップしてルート案内に従って行けるので初めて訪れる場所でも安心です。
長岡花火 公式アプリ(新潟県)
新潟県で開催される長岡花火大会では、 2023 年 8 月 2 日と 3 日の 2 日間で、 29 万 5,000 人の人々が訪れました。 よって、周辺地域の駅や道路は混雑が必須なのですが、このアプリは「GPS 機能」を用いることで、周辺の駐車場の空き状況や渋滞状況を見ることができます。
また、オフラインでも以下のコンテンツが利用できるようになっています。
- 会場マップ
- 花火プログラム
- パンフレット
- なないろライト(七色に光り、会場で使用することで花火師さんを応援することができる)
出典:長岡花火 公式アプリ
聖地リゾート!和歌山 モバイルスタンプラリー(和歌山県)
和歌山県をめぐる「デジタルスタンプラリー」に特化したアプリです。チェックインボタンをタップすることで、スタンプを貯めることができます。
巡回する経路も、 3 コースにジャンルごとに分かれていています。
- 歴史や神話に特化した わかやま歴史物語 100
- 自然や絶景に特化した フォトジェニックわかやま
- ご土地グルメに特化した お得にわかやまグルメ TRIP
獲得したスタンプに応じて、抽選で地域特産品をもらうことができます。 お得にわかやまグルメ TRIP コースでは、参加している約 300 店舗で使えるお得なクーポンがアプリに配信されています。
HELLO! TOKYO FRIENDS (東京)
このアプリは、 2024 年 2 月 15 日に東京都が発表しました。「Roblox」と Webアプリの「TOKYO HUNT!」に分かれていています。
Roblox は、世界で毎日 6,550 万人超のユーザーが参加する大流行中の「ゲーミングプラットフォーム(ネット上で楽しめるゲーム)」です。
渋谷・新宿・お台場など人気観光地をインターネットの仮想空間で楽しむことができ、ミニゲームをプレイすることで、東京限定のアイテムを獲得できます。獲得したアイテムは、Roblox のユーザー同士で交換ができます。
多機能なアプリなので、以下に Web アプリ「TOKYO HUNT!」の主な機能をまとめます。
AR 機能
MAP上に AR 撮影ができる場所がアイコンとして現れて、タップしてその場所に行くことで撮影ができます。
例えば、浅草の雷門へ行き、アプリ上のアイコンをタップすると、風雷神門が動き出し、写真撮影やビデオ撮影ができます。写真や動画は SNS でシェアすることも可能です。
デジタルスタンプラリー
チェックポイントでスタンプ(エンブレム)を全部貯めると、 Roblox のアバターの着せ替えグッズを手に入れることができます。
金色の甲冑や渋谷の忠犬ハチ公など、日本らしいグッズがあります。
音声ガイダンス機能
MAP のアイコンをタップすると、その観光地の説明を日本語または英語音声で聞くことができます。
ナビ機能
現在地から行きたい場所をタップすると、地図アプリを起動して目的地まで案内してくれます。
出典:
番外編 (1) 言葉の垣根を超えるお買い物サポートアプリ Payke (ペイク)
海外の店舗で買い物をする際、気になる商品を手にとって商品のバーコードをアプリで読みとることで、商品の具体的な使い方を知ることができます。
訪日外国人向けのアプリであり、海外からの人気を誇る「ドン・キホーテ」や「Bic Camera」で使えるデジタルクーポンがついています。
筆者も韓国メーカーの化粧品のバーコードを読み取って実際に利用してみたのですが、商品名が日本語に変換されました。日本語で商品名を知ることができたので、そこから使い方を日本語で調べることも可能ですし、日本国内でも利用できるアプリであると感じました。
また、 2024 年 2 月からスタートした「日本代講」サービスにより、海外の方が日本のお店で見かけた商品の画像や商品名、または URL をアプリのチャットに送信するだけで、Payke の日本人社員が日本で購入し、商品の代金と手数料 250 円、梱包量と送料を支払うことで日本でしか買えない商品を買うことができます。
支払い方法もクレジットカードや Paypal、Amazon Pay などに対応しています。
出典:Payke
番外編 (2) いしかわスポーツマイレージ (石川県)
だれでも気軽にスポーツに親しめるように作られたアプリです。 アプリ DL 時、「歩数計」と連動することを許諾することで、自分の歩数をリアルタイムで見ることができ、さらにランキングも表示されます。
どちらかといえば地元住民向けですが、日々の歩数がポイントになるだけでなく、石川県内で開催されるスポーツ大 会やイベントを見に行ったり、大会やイベントなどにボランティアとして参加してもポイントが貯まります。気になる景品ですが、2024 年 4 月では、毎日 1 万歩を約 5 カ月続けた人が 1 等の能登牛 1キロが当たる抽選に参加できます。
出典:アプリの紹介
4. まとめ
事例をみてみると、エリア情報の提供に留まらず、インバウンド需要を見越した多言語表記・音声案内機能を実装することでボーダレスに利用できることがわかりました。
また、歩数計やスタンプラリー参加によって景品がもらえるエンタメ要素をとりいれることでユーザーを取り込むことができます。 メタバース空間とアプリを接続することで、世界中の幅広いユーザー層の獲得を目指す東京都が発表したアプリもありました。 観光中の買い物やツアー、宿泊予約などのサポートアプリもさらに訪日外国人旅行者から多く利用されるでしょう。
インバウンドによる国内の物価上昇や治安悪化の懸念による規制施行がささやかれたりしていますが、旅行観光業界のアプリ制作は、今後も需要がありそうです。
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