みなさんも鉄道や商店街のスタンプラリーを、一度は体験されたことがあるかと思います。昔は紙の台紙にインクをつけたハンコを押すのが主流でした。
しかし最近は、スマートフォンを利用した「デジタルスタンプラリー」が人気を博しております。
デジタルスタンプラリーは、特定の場所(ラリーポイント)を訪れてスタンプを集めることで、景品や抽選参加権を獲得できるイベントです。
今回は、デジタルスタンプラリーの特徴や、実施する際のメリット・デメリット、また課題点などについてまとめていきます。
1. アプリでスタンプラリーを実施するために必要な機能
Web アプリあるいは iOS/Android ネイティブアプリでスタンプラリーを実施する際、基本となるのは
- 押印機能
- 押印場所を伝えるマップ機能
です。スタンプを集める方法も以下のようにいくつか方法があります。
QRコード方式
チェックポイントに設置した QRコードを読み取り、スタンプを獲得できます。
利用者側も操作が分かりやすいですが、オンライン上に画像が共有されることで不正にスタンプが押せてしまうというリスクがあるため、最近では QR コードだけでなく位置情報を組みわせる事例も増えています。
GPS 認証方式
GPS による位置認証を行い、対象スポット付近にいるとスタンプを獲得できます。GPS も単体では不正利用ができてしまうため、QR コードやキーワード認証と組み合わせる事例が増えています。
NFC タッチ方式
各ラリーポイントに NFC タグを張り付け、タグをスマートフォンでタッチすることでスタンプを獲得できます。まだ一般的ではなく、現地スタッフやマニュアルでの操作案内も重要になりますが、不正対策という点では優れた手法です。
2. デジタルでスタンプラリーを実施するメリット
もちろん現在でも紙媒体でスタンプラリーを行う事例は少なくありません。デジタルスタンプラリーは利用者と事業者それぞれにメリットもデメリットもあります。
利用者のメリット
- スタンプカードを持ち歩く手間、カバンの中を探す手間が省ける
- 物理的なスタンプ台に触る必用がなく、衛生的である
- スタンプを押せる場所をアプリの地図機能で検索し、そのまま押印までスムーズに行える
- スタンプを集めた特典が抽選応募の場合、そのままアプリ上で応募までスムーズに行える
事業者のメリット
- スタンプラリー用紙やスタンプ台などを設置する必要がなくなる
- ユーザー登録を必須にすることで、消費者のさまざまな情報をマーケティングに活用できる (入力必須でない場合もあります)
- アプリからアンケートを実施することで回答データを集計・管理しやすい
- 参加特典や景品をシームレスに配信できる (スマホの壁紙・キャラクターの撮り下ろし音声・PayPay マネーライトなど)
- フォトフレームを用意することで、参加者が SNS で拡散し、ブランドの宣伝効果を高められる可能性も
事業者最大のメリットは、アプリならではのデータの利活用
スタンプラリーをデジタルシステムで実施すると、事業者は以下のようなデータを入手することができます。
- キャンペーン参加人数
- スタンプ取得数、特典獲得数の平均値
- 各ラリー地点への到達時間
- ラリー終了までに要した時間
- (会員登録や抽選応募時にアンケートを実施する場合)氏名・性別・居住地域など任意のユーザー情報
- (位置情報を取得する場合)人の動き
Web アプリでも実施は可能ですが、iOS/Android アプリを使う場合は、よりデータを収集しやすくなります。
普段はスマホアプリで位置情報を取得されることを嫌うユーザーであっても、イベント中は GPS 機能を利用するため、「アプリの利用中のみ位置情報を ON」にしてもらいやすくなります。
これにより、人流が把握できるので、どこのラリー地点で離脱者が増えたのかがわかると、次回開催時のラリー地点を設定する目安になります。
3. アプリでスタンプラリーを実施する際のデメリットと課題
利用者側のデメリット
- アプリサービスの扱いが得意でない顧客層は参加しづらい
- 小さな子ども向けイベントの場合、保護者のスマホを借りて操作する必要があり、親も子も歩きスマホにならないよう気をつけなければならない(歩道が狭い場所などには不向き)
事業者側のデメリット
- システムの品質などによっては、「アプリの使い方が分からない」「会員登録・ログインできない」といった問い合わせが増える可能性がある
- システムの開発費用がかかる上に、直接売上・利益に結び付けづらいので事業計画を立てづらい
- イベント概要や参加手順はオンライン上だけでは周知しきれないことも多く、現地でのチラシ配布となると運営側のコストもかかる
4. スタンプラリーをアプリ化・デジタル化する際の注意点と解決のポイント
4-1. 不正利用の防止
デジタルスタンプ最大の懸念は、「設計ミスにより、現地に行かなくてもスタンプを押されてしまう」「何度も不正に抽選へ応募されてしまう」というケースです。
スタンプラリーに参加していない方にイベント景品が不正に入手されてしまい、不正利用者の存在が顧客に伝わると、企業のイメージダウンにつながりかねません。
主な対策
QR コード画像の流出、位置情報の偽造に対しては、前述のように QRコードと GPS を組み合わせる方法が一般的な対策です。ラリーポイントにいて QR を読み取ったユーザーのみがスタンプを獲得できます。
また、複数応募の不正に対しては、SMS や LINE で認証を行うという対策が一般的です。Cookie でスタンプ情報を保存するシステムの場合、cookie を削除することで何度も景品獲得・抽選応募ができてしまうからです。
4-2. 現地のオペレーション
前提として、スマホおよびアプリの扱いが得意でないシニア層がメインのターゲットとなる場合、あるいは参加方法やシステム操作がわかりにくい場合、運用側への問い合わせが増える可能性があります。
また、オンラインでの宣伝、Web やアプリ上でのイベント説明に注力した際、イベント期間中にたまたま通りかかったなどで認知して参加しようとした方に概要が伝わらず、誘導が不十分になることもあります。
解決策
たまたま道を通りかかって、人々がイベントポスターの QR コードを読み込む姿や、景品のような袋を持っているのを見かけた場合、参加してみたくなるのが人間です。
ですので、デジタル施策であってもポスターの設置・フライヤーの配布など、突発的な参加者に対しても周知する導線確保が必要です。
参加者の年齢層が高くなりそうな場合などは特に、直感的に使えるアプリ側の UI デザインが重要になります。ポータルアプリの中の一つの機能として提供する場合、イベント期間中のみトップページやヘッダー・フッターのメニューを編集してスタンプ機能を目立たせるのもおすすめです。
4-3. アプリダウンロードの促進&アンインストール防止
デジタルスタンプラリーでは、
- スタンプラリー参加のために iOS/Android アプリをダウンロードしてもらう
- イベント終了後もアンインストールされずに継続的にアプリを使ってもらう
という二点もネックになります。解決策としては、
- Web アプリとして構築する
- イベント専用ではない iOS/Android アプリとして構築する
のどちらかがおすすめです。
Web アプリのメリット・デメリット
Web アプリの場合はダウンロードが不要で参加できるため、イベント参加のハードルが下がります。また開発費用もネイティブアプリよりは安価になります。
Web アプリであっても「インストール」を促すことができ、ホーム画面にアイコンを作ってもらうことも可能です。
しかし、インターネットに接続していないと使用できないので、山奥や海辺などインターネット接続状況に問題がある場所でのイベント開催には不向きです(ネイティブアプリではオフラインで利用しつつ、オンラインになった際に自動で同期ができます)。
さらに Web アプリからのプッシュ配信は開封率が高くないため、イベント終了後に忘れ去られてしまうことが多いというデメリットもあります。
iOS/Android ネイティブアプリのメリット・デメリット
iOS/Android アプリを構築する場合、イベント専用のアプリとなると終了後に削除されてしまう可能性が高いため、施設や地域の情報を配信するポータルアプリとして構築し、数ある機能の一つ(メイン)としてスタンプラリーを実装するという設計がおすすめです。
ネイティブアプリの場合、前述のように「位置情報を利用しやすい」「オフラインでも利用できる」のほか、イベントが終了してもプッシュ配信によって継続的に情報配信ができるというメリットがあります。
ただし、スタンプ以外の機能があっても iOS/Android アプリはユーザーの定着が難しいため、定期的に使ってもらえるアプリにするための工夫が必要です。また開発費用の高さもネックとなります。
5. デジタルスタンプラリーアプリ・システムの開発費用相場は?
Web アプリにしても iOS/Android アプリにしても、カメラ機能やユーザー認証、位置情報認証などを使うことになるので、“当たり前” の品質のものを作るだけでも一定の費用がかかります。
Web アプリであれば 1,000 万円以下で抑えやすく、パッケージサービスを利用すると 100 万円以下でデジタルスタンプラリーを実施できる場合もあります。
スタンプラリーという企画上、直接売上を出して利益に結び付けるという目標設定は難しいです。予算が限られている場合は、新規でアプリを開発するよりはパッケージサービスを利用するほうが良いケースが多いです。
iOS/Android のネイティブアプリをフルスクラッチで構築する場合は、スタンプラリー機能の実装だけで数百万、ポータルアプリの構築では 1,000 万円以上を想定しておく必要があります。
スタンプラリー単体ではなくポータルアプリにするなど設計を工夫することでただの「予算消化」のように終わることはなくなるかもしれませんが、コストに見合うリターンが得られるような工夫が求められます。
ただ、近年では iOS/Android アプリも
- ノーコード/ローコードパッケージサービスを利用する
- flutter などクロスプラットフォームの言語を利用して開発する
といった手段で初期費用を削減することができます。スタンプラリー機能を持つポータルアプリをノーコード/ローコードで構築する場合、事業計画は立てやすくなります。
6. アプリ(デジタル)×スタンプラリーの事例
アプリによるデジタルスタンプラリーは、以下のような業界で利用されています。
- レジャー・テーマパーク業界
- ゲーム・エンタメ業界
- 観光・宿泊業界
- 大型ショッピングモール・百貨店
- 地方自治体
電車のスタンプラリーももちろんですが、特にアニメやテレビなどの舞台をモチーフにした「聖地巡礼」とはとても相性が良いです。地方などの観光スポットや商店街をラリーポイントにすることで、購買行動を期待できるのが開催地のメリットです。
他にも、幅広いキャラクターと業界のコラボ事例が見当たります。
6-1. 世界に誇る日本の文化「アニメ」とのコラボ事例が多い
海外向け購入サポートサービスを運営する BEENOS株式会社の「越境 EC×アニメ ヒットランキング 2023」によると、海外から最も支持されているアニメは「ポケットモンスター」であると発表されました。
引用:BEENOSが「越境EC×アニメ ヒットランキング2023」を発表
そして、日本国内で近日中 (2024 年 3 月時点) に開催していた「ポケットモンスター」のデジタルスタンプラリーは 3 つありました。
世界的に人気なアニメのデジタルスタンプラリーは、国内外の需要に対応していると言えるでしょう。
6-2. デジタルスタンプラリーは、シニア層や外国人観光客にも参加してもらえる
近年、アフターコロナで日本への入国規制緩和や円安の後押しもあり、インバウンド需要が高まっています。
日本政府観光局(JNTO)の統計によると、 2024 年 1 月の訪日外客数は 2,688,100人であり、 2019 年の同月とほぼ同数を記録しました。つまり、コロナ前の水準に戻りつつあるというデータです。
出典:2024年1月推計値
アプリで実施するデジタルスタンプラリーは、多言語対応がしやすいというメリットがあるためインバウンドにも対応できます。
アプリ画面の日本語表記の下に英語を記載する方法や、アプリを DL 後、タブで対応言語を選択できるようにする方法などがあります。インバウンドも巻き込むことで、イベント開催地付近の店舗利用が増加し、売り上げにつながるでしょう。
また、「デジタルスタンプラリーにシニア層を取り込むことは難しいのではないか?」という懸念点についても、面白いデータがあります。
2022 年 11 月に兵庫県立芸術文化センターにて行われた「わくわくスタンプラリー」ですが、50 代から 70 代が参加者の 2/3 を占めています。利用方法を「簡単に感じた」という参加者も過半数を超え、設計次第ではシニア層も十分にデジタルスタンプラリーが楽しめるという実験結果になっています。
出典:高齢者向けイベントにおけるデジタルスタンプラリーの効果に関する基礎的検討
まとめ
デジタルスタンプラリーは、利用者と事業者の双方にメリットをもたらすイベントです。
とはいえ、事業者がより多くのユーザーを巻き込んで効果を最大化するためには、さまざまな工夫と適切なアプリ・システム設計が重要です。
当社が提供するアプリプラットフォーム「Pasta」では、ノーコード/ローコード開発で初期費用を抑えながらスタンプラリー機能、イベント後も接点を作るプッシュ配信機能をつけたポータルアプリを構築できます。もちろん Web アプリとしての構築もご相談いただけますので、デジタルスタンプラリーを検討の際はぜひお気軽にご相談ください。
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