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小売アプリの費用相場とは?販促かCRMかの事業戦略、業界ごとの特性などをまず明確に

アプリにかかる費用について
2021.06.21
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    近年、小売業界では「紙の会員証をアプリ化してほしいと現場から要望されている」「EC をもっと伸ばすためにアプリ化を検討している」という声がよく聞かれます。

    とはいえ、会員証アプリでは大きな予算を取りづらく、EC では大規模なプロジェクトが想定されるため、「iOS/Android アプリをつくる場合の開発費の相場・目安はどれくらいなのか」「どう事業計画を立てればよいのか」というご相談につながりやすいです。

    そこで、今回は現在の小売業界でのアプリ活用事例を整理しながら、それぞれの場合の企画の立て方をまとめていきます。目的や必要な機能を元に見積もりを出すと制作会社としてもご相談に乗りやすいので、スマホアプリ事業をお考えの際はぜひご一読ください。

    小売業界における iOS/Android アプリの開発費用目安

    小売企業が公式アプリを検討する際は、ほとんどの場合

    • CRM 特化: 顧客の利便性・満足度を高め、実店舗への訪問頻度・購入単価を向上
    • OMO の第一歩: ECと連動し、実店舗のみならずオンラインでの直接購入金額(売上)も向上

    の、どちらかの路線で企画されます。

    前者は単独の事業というよりは既存事業の売上・利益を向上させるためのツールとしての、後者は Web とあわせて事業としての色が強くなりがちです。

    iOS/Android アプリの開発費用は制作会社の作業ボリュームによって決まるので、MLS Dev のレポートでは、

    • マクドナルドのような会員用アプリ:6 万ドル以上
    • EC アプリ:6 万〜30 万ドル

    となっています。

    参考:App Development Cost: Understand Your Budget To Build Powerful Apps

    小売アプリの機能としては

    • 会員証やポイントカード機能
    • 会員ごとの情報・履歴などの閲覧
    • 位置情報を利用したチェックイン機能
    • プッシュ通知 (特定の属性の顧客のみなど、カスタム性あり)
    • webview (既存のモバイルサイトを読み込み)
    • ディープリンク
    • 決済(外部サービスとの連携など)

    などを中心に、独自の機能が検討されることも少なくありません。どんなアプリになるか=作業量によっても変動します。

    ただ、企画段階ではさまざまな機能・コンテンツを検討していても、運用を開始してみるとあまり活用されないというリスクもあります。ですので、最初はある程度機能を絞り、フェーズ2, 3 というように開発〜運用・定着スケジュールを設定していくほうがスムーズに進めやすいといえます。

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    業種・業態によって起動頻度や使われ方も違う

    Web 上で入念に情報収集される家電・雑貨・服飾品などは販促・EC 重視、店舗で試しながら・相談しながら購入するメガネ・化粧品などは CRM 重視になることが多いなど、業種・業態によっても傾向があります。

    顧客が小売業界の店舗アプリを起動している頻度は、業種によって大きく変わります。

    NTT コミュニケーションズ社の調査では、コンビニ・スーパー・カフェなどは週に 1 回ペースで起動する顧客が 20% を超え、飲食やアパレルは 5〜10 %という結果になっています。

    参考:https://www.nttcoms.com/service/mobileweb-smartphoneapp/report/20190108/

    このように「小売業界」と言っても多くの業種・業態があるからこそ、企画段階では「小売アプリのデータ」だけを収集するのではなく、お客様のビジネスの特性を考える必要があります。

    「接触回数が少ない業種だから少しでも思い出してもらう回数を増やしたい」「店舗に来る前に情報収集をされる製品だから、しっかりとコンテンツを用意して EC で買えるようにしたい」など、具体的な背景と目的があれば、アプリの企画および制作会社への見積もり依頼もスムーズに進みます。

    CRM のポイント:まずはミニマムで始め、データが貯まる UX を設計

    CRM を目的とする場合、必要な機能としては「会員証」と「チラシや通知の配信」になります。

    単体の事業というよりは実店舗における顧客との関係性をよくするためのツールなので、アプリを運用する上で「売上」が計測しづらく、評価がしづらくなりがちです。企画段階でこのような話になった場合、あまり大きな予算を取れないというパターンも少なくありません。

    ですので、

    • 仕様を工夫することで開発ボリュームを抑える
    • パッケージ型のサービス利用・制作会社との契約(オーダーメイドではなくする)ことで設計〜開発費用を抑える
    • 自社アプリではなく、まずは他社プラットフォームで代替

    といったアプローチも検討の余地があります。

    設計の工夫によるアプリ開発費用の削減

    仕様としては、ログインを必須にしない、アプリ自体での DB を持たないなど、企画で工夫をすることである程度費用を抑えることが可能になります。

    1メーカーのサイトにログインするためにIDとパスワードを管理するのは、お客様にとって負担だと感じていました。そこを脱却するため、スマートフォンと会員証というお客様ごとにユニークなものを組み合わせ、スマホ/アプリ自体をIDとし、ログインの必要性をなくすことにしました。
    参考:https://markezine.jp/article/detail/25787

    そして、特に初期費用を抑える手段として SaaS と呼ばれるパッケージ型のサービスの利用、あるいは制作会社の持つテンプレートを使って開発してもらうという手段も普及しています。

    「拡張性の限界」「乗り換える際の(将来的な)コスト負担」など、デメリットやリスクを理解した上で、自社の要件に合う場合は利用するとよいでしょう。

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    「そもそも自社アプリを開発する必要があるのかどうか」

    自社でアプリを持つ、会員証を iOS/Android アプリにする最大のメリットは、顧客一人ひとりの細やかな購買データを取得できることです。

    つまり、データを取得して事業に生かすことができなければ、アプリの開発〜運用コストに見合う価値は出しづらくなります。

    現代ではメールマガジンや紙の DM の効果は下がっているため、アプリのプッシュ通知で最新の情報・セール情報を送るだけでも「効果が出ている」と実感できるかもしれません。しかし、単純に “宣伝” するだけであれば Instagram や LINE 公式アカウントなど他社のプラットフォームでも代替することはできます。

    自社アプリの場合はシンプルなものであっても開発費用に加えて保守・運用のコストもかかるので、ある程度の予算が必要になります。LINE などを使うことでトータルでコスト・業務負荷を削減でき、運用の経験も積むことができます。

    ですので、小売企業の社内で iOS/Android アプリが企画されている場合は、どんな状態をゴールとするかをハッキリと定義しておくことが重要です。

    販促・EC の場合:顧客のストレスを減らすことで購買単価・頻度の向上を狙う

    EC サイトをアプリ化することで、スマホサイトよりも購買につながりやすくなるということは調査結果としても出ています。

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    当然、ただ EC アプリを開発すればいいわけではなく、「モバイルサイトに比べて閲覧しやすい(滞在時間の向上)」「購入までの導線がわかりやすい(途中離脱率の減少)」といった要件を満たす必要があります。また、ログインや決済がスムーズにできることなど、気をつけるべきポイントは多いジャンルといえます。

    必然的に、ある程度の機能に加えて「ユーザーにとって快適な UI/UX」を実現する必要があるので、社内の運用(分析)チームや社外の制作会社のスキルの影響も大きくなります。

    もちろん制作会社側は「見積もりが高いほど開発力に自信がある」というわけではないと思いますが、安さをウリにするメリットはあまりなく、むしろデメリットが大きいということです。ですので、外注する際も「アイミツをとって、安いところに」という決め方はおすすめできません。

    アプリ事業ではありながら、「大きな事業の一施策」でもあることを意識

    販促のためにアプリを活用するのであればある程度の開発費用・運用コストが必要になるため、ハイリスク・ハイリターンの(売上とコストの両方を増やしながら利益を伸ばしていく)ビジネスモデルになります。

    考え方のポイントは、EC アプリに予算を割くということは事業としてオムニチャンネル化に舵を切ることになるということです。

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    オムニチャネルの目的は「顧客に常に最適な選択肢を提供してストレスを減らし、気持ちよく買い物をしてもらう」ことになるので、事業としては物流への投資も必要になりますし、リターゲティング広告などの出稿も重要になります。

    そうなると「アプリ経由での売上はいくらだった」と局所的に考えるだけでなく、全体を意識することも重要です。「アプリで情報を閲覧していた翌日、店頭に立ち寄ったので店舗で購入」といった購買行動もありますので、アプリによって実店舗にも良い影響を与えられるような企画・設計が理想的といえます。

    メガネやコンタクトレンズは、前回の購入された度数情報が重要かつ必要な情報なので、店頭での度数情報を使って、ECで購入できるようにはしています。また、デジタル上で得た情報を「店舗の接客」に取り込むための準備を進めています。さらには、「リアル店舗の接客で得た情報を基に、DMの内容を変える」といったことにも挑戦したいと考えています。
    出典:https://markezine.jp/article/detail/30330

    機能を盛り込みすぎず、まずは現場に定着させる意識も重要

    OMO やオムニチャネルというキーワード自体は広く聞かれるようになっていますが、実現への道のりは簡単ではありません。

    特に EC アプリではアパレル企業を中心に「P to C (Person to Customer) 接客」と呼ばれる、実店舗の各店員が商品をおすすめするコンテンツを配信して在庫率を減らしていく取り組みなども注目されています。

    しかし P2C 接客などはアプリに機能を実装すれば済む話ではなく、「現場がアプリを理解して運用・活用してくれること」「アプリ経由での個人の売上を実店舗と同様に評価できる制度が整備されていること」なども重要になります。

    EC アプリの開発費用の目安は「6〜30 万ドル」と開きがあるように、販促アプリに対する予算のかけ方は企業によっても差があります。オムニチャネル戦略を着実に進めるためには、自社にとって本当に必要な機能を厳選し、「まずはアプリを定着させること」を第一に考えることも一つの手段です。

    小売業界でのスマホアプリ開発費用を考える上でのまとめ

    海外では「小売 4.0」と言われるほどビジネスモデルのアップデートが進んでいる業界ですが、ただ新しいことに手を出しているわけでもなく、背景には競争の激化があります。

    市場の現状に適応しようとしない小売企業は、長期的に淘汰されるリスクを抱えることになります。米国で小売企業の倒産件数が記録的な数に達したことや、西ヨーロッパと南ヨーロッパで大型小売店の市場シェアが縮小していることは、時代に適応するのが遅すぎたり、適応できなかったりした小売企業の行く末を示していると言えるでしょう。
    出典:https://www.fastgrow.jp/articles/retail-4-fv

    海外のライフスタイルは日本と大きく異なるので、海外の小売企業の動向や成功事例がそのまま参考にできるわけではありません。

    手を広げすぎず、自社の強みである市場で堅実に利益を出すか、市場シェアでトップを獲るために投資するかという二極化が進むと見られています。

    足元を固める場合、まずは余計なコストを削減し、利益を最大化することが重要です。新規集客施策はオーガニックでの口コミなどが中心になりますし、再訪促進や単価向上といったエンゲージ施策は LINE 公式アカウント(旧・LINE@)などで的確にリーチさせることを意識する必要があるでしょう。

    売上自体を拡大していく場合は、「競合がやっていること」を真似するだけでは差別化できません。制作会社とうまく連携し、品質の高いアプリを完成させることが重要です。

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