LINE公式アカウントと自社アプリではどちらの費用が安い?事業フェーズごとの最適なアプローチと運用体制の考え方

「スマートフォン経由で顧客と継続的につながりたい」「リピート率や単価を向上させたい」という事業のニーズを満たすためには、自社で iOS/Android アプリをもつだけでなく LINE など他社のプラットフォームを利用するという手段もあります。

特に LINE はインフラといえるほど普及していることから、Twitter や Instagram 以上に多くのユーザーとつながりやすく、プッシュ配信など攻めのマーケティング施策も実施できます。

ただ、LINE は運用にかかる費用の計算がやや特殊なため、「自社アプリとどちらがお得なのか」「LINE を運用しているが、乗り換えたほうがいいか」と悩ましくなるケースも少なくありません。

そこで、本記事では LINE 運用における費用と自社アプリの費用、および効果を比較し、事業フェーズごとに最適な運用体制について考えていきます。

そもそもの役割の違い、比較したときのメリット/デメリットに関する記事として下記もまとめてありますので、よろしければご一読ください。

参考:自社アプリをやる前の“お試し”に最適? LINE公式アカウントのメリット・役割の違いとは

LINE の利用料金とプラン(新しい LINE 公式アカウントの特徴)

  • 安いプランでは月額 5,000円 のみで、15,000 通までメッセージを配信可能
  • 1 通あたり 5 円/ユーザー 程度で追加配信も可能
  • 大企業向けのスタンダードプランでは基本料金がごくわずかで、PUSH メッセージの配信ごとにユーザー数ごとに費用がかかる仕組み
  • スタンダードプランでは従量料金は 1 通あたり 1〜3 円程度に

写真や動画にテキスト+リンクなど、顧客に配信したいコンテンツを 1 セットとカウントして、iOS/Android のプッシュ通知を使ってメッセージを配信できるのが LINE 公式アカウントの大きなメリットです。

自社アプリを構築して PUSH メッセージを配信する際はアプリの開発費用はもちろん毎月の運用コスト、あるいはパッケージサービスの利用料金がかかります。

そのため、通常のアプリ運用では「PUSH 配信 1 回あたりどれだけのコストがかかる」という風には考えないのですが、LINE 公式アカウントでは多くの場合「アプリのプッシュ通知を使った分だけの課金」という明瞭なシステムになります。

LINE for Business は自社アプリよりも「お得」なのか?

中小企業であれば、ほとんどの場合は自社で iOS/Android アプリを持つよりも LINE を利用したほうがメリットが大きいです。

費用面で LINE に近い相場を実現している格安のパッケージサービスもありますが、低価格ゆえに品質には限界があるため、自社ブランドを背負ったアプリとして顧客に公開するにはリスクが高いといえます。

ただ、ある程度の企業規模・事業規模になると、「PUSH 配信ごとの従量課金」によって LINE 単体でも運用コストが膨大になりやすく、どちらがお得と明言することは非常に難しくなります。

自社で iOS/Android アプリを構築〜運用する際の費用相場

アプリの開発費用は、どんな機能をつけるかによって大きく左右されるので一概には相場を出すことができません。

MLS Dev のレポートでは、一定の品質のアプリをつくる際の目安として

  • 会員ログイン・クーポンなどの店舗アプリで 6 万ドル〜
  • 旅行・EC などプラットフォーム型のアプリで 30 万ドル〜

と紹介されています。

参考:App Development Cost: Understand Your Budget To Build Powerful Apps

さらに、

  • 発覚した不具合の修正
  • 新機能やデザイン改良などの追加開発
  • iOS/Android 自体のアップデート対応(それぞれ 1 年単位)
  • iPhone など新端末の画面サイズ対応(不定期)

という運用コストもかかってきます。

参考:アプリの公開後にかかる費用とは?リリース後の保守・運用コストを考えておこう

最近では初期費用と上記のシステム保守の労力を抑えるために SaaS を利用するなどパッケージ型の契約をするケースも増えています。

PUSH メッセージを配信+α のようにシンプルなアプリであれば十分にまかなえますが、拡張性には限界があるため、大規模な事業を支えるシステムを視野に入れると費用面でも機能面でも

参考:格安で自社アプリ開発も可能?テンプレート・パッケージサービスを使うメリットとリスク

LINE を活用しやすいのは自社アプリの「前」のフェーズ

小規模なビジネスでは、LINE のほうが費用対効果は高くなります。

しかし、多くの企業にとっては、LINE 公式アカウントと自社アプリは、「どちらを使うほうがお得か」と考えるよりも「(両方を運用しながら)どう使い分けるか」と考えたほうが本来の役割には沿っています。

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自社アプリを使ってくれる「ファン」を LINE で育てる

LINE のメリットとして「ユーザー数とメッセージ開封率を伸ばしやすい」という点は見逃せません。

自社の iOS/Android アプリの場合、顧客一人ひとりのスマホにインストールされていなければなりません。企業公式アプリをダウンロードしてもらうよりも、「LINE で友だち登録してください」と呼びかけるほうが効果は出やすいです。

さらに、プッシュ通知の許諾率も差がつきやすいです。アプリのプッシュ通知の許諾率は 40〜50% 程度が目安なので、LINE はよりメッセージを見てもらいやすいです。

一方で、PUSH メッセージを売上に直結させるという点では LINE は自社アプリよりも不利になります。 LINE でメッセージを読んでから自社の Web サイトなどに誘導→会員登録/ログインという手間がかかるため、「メッセージは開封されても、期待したアクションを起こしてもらえない」という悩みに直面するケースもあります。

ですので、「スマートフォン経由で自社にアクセスする顧客の売上を伸ばす」という目的へのアプローチは、「LINE で認知を広げ、自社アプリで CV(決済・予約など)」という流れが理想となります。

事業フェーズごとの考え方

事業の成長に応じて、下記の 3 段階に分けて運用するとスムーズに利用できます。

  1. LINE に集中し、運用の知見を貯める

    • 読まれやすいプッシュ配信のパターン、開封されやすい時間帯などを把握する
    • ユーザー数を増やすための広告は無理に配信しなくても、実店舗や Web サイトからの誘導でまかなえる
  2. 自社アプリを構築し、少しずつ移行していく

    • より細やかな施策と分析ができるので、顧客のニーズを把握する
    • LINE 上でアプリのメリットを紹介して誘導する
  3. 自社アプリがメインとなり、LINE は強みが生きる用途で活用

    • お得な情報など、売上につながる投稿をアプリから配信
    • 新商品や大型キャンペーンなど、マス広告や DM で広く PR する情報を LINE で告知

ユーザー数が数十〜数百万人規模になり、LINE での一回あたりの PUSH 配信の費用が膨大になっていても、スマホファーストの現代においては大規模に PR したい情報を届ける媒体としては宣伝効果は悪くありません。

売上への貢献=費用対効果が計測しづらく、事業規模が大きくなるほど身動きが取りづらくなりがちな LINE 運用ですが、そもそも自社アプリとは役割・メリットが異なるため、用途次第では並行して活用する余地はあるといえます。

LINE 公式アカウントから自社アプリへの「乗り換え」における注意点

「すでに LINE 公式アカウントを活用してリピート率や単価を向上させているが、自社アプリへの(完全)移行を検討している」という企業には、気をつけるべきことがあります。

1.「コストダウン」が目的になった自社アプリはリスクが大きい

多くのユーザーに対して PUSH 配信をするたびに膨大なコストがかかるようになったとき、「自社アプリのほうが安くなる」ことはあるかもしれません。

しかし、開発費用をあまりにも抑えると、LINE に慣れていた顧客が「使いづらい」「重い」「不具合が多い」などギャップを感じてしまうリスクもあります。

社外ベンダーにアプリ開発を発注する際は「複数社でコンペ形式を採用し、予算内に収まる企業を選ぶ」というケースも少なくありませんが、開発実績やその制作会社が実際に開発したアプリをよくチェックすることが重要です。

また、あまり品質が高くないものを自社アプリとして一度公開してしまうと、iOS/Android 両方のアプリストアで低評価のレビューが集まり、"負の遺産”となってしまうことも要注意です。

参考:何を重視すればいい?iPhone/Androidアプリ制作会社の探し方・選び方について考える

2.「運用・開発をすべて自社でやる」難しさ

LINE から自社アプリに移行する際は、施策ができる範囲や顧客の分析ができる範囲が増えるため、自社でアプリのチームをつくってスピーディに PDCA サイクルを回したくなるものです。

とはいえ、iOS/Android アプリの運用、開発の経験がある人材はどちらも多くはなく、採用〜定着の競争も厳しくなっています。

高度な専門スキルが求められるため、まずは社外ベンダーを“うまく使いながら”、移行〜定着のフェーズごとに少しずつ内製の割合を増やしていくのがおすすめです。

「LINE 公式アカウントと自社アプリ、費用対効果で見たときの比較」まとめ

  • 小規模な事業者では LINE のメリットが大きい
  • 一定の規模になると LINE の運用コストは読みづらく、安くはない金額に
  • 一定規模の事業では「どちらがお得」というよりは「役割が異なる」と考えたほうがよい

LINE と自社アプリは役割が近いため、小規模な事業では LINE をアプリの代替品として使うことができます。

とはいえ、本来はメリットを受ける領域が異なるため、事業のフェーズや戦略に応じて両者への向き合い方を柔軟に変えていくのがベストといえます。