[2023/9/19更新]
「スマートフォン経由で顧客と継続的につながりたい」「リピート率や単価を向上させたい」という事業のニーズを満たすためには、自社で iOS/Android アプリをもつだけでなく、 LINE など他社のプラットフォームを利用するという手段もあります。
特にLINEはインフラといえるほど普及していることから、Twitter や Instagram 以上に多くのユーザーとつながりやすく、プッシュ通知など攻めのマーケティング施策も実施できます。
しかしながら、自社で開発アプリでも大きく成功している企業もいることから、結局どちらが費用対効果が高いのか?と悩んでいる企業担当者も少なくありません。
そこで本記事では、LINE公式アカウント運用と自社アプリの導入費用、導入難易度、売上貢献度の比較、また事業フェーズごとに最適な運用体制について事例を交えて考察していきます。
LINE公式アカウントと自社アプリの違い
LINE公式アカウントと自社アプリでは、費用、導入難易度や売上へどれくらい直結するかという点で、さまざまな違いが見受けられます。
以下では3つの観点からLINE公式アカウントと自社アプリ運用における違いをまとめました。
導入費用とランニングコスト
LINE公式アカウント運用の費用相場
写真や動画にテキスト+リンクなど、顧客に配信したいコンテンツを1セットとカウントして、iOS/Androidのプッシュ通知を使ってメッセージを配信できるのがLINE 公式アカウントの大きなメリットです。
自社アプリを構築して プッシュ メッセージを配信する際はアプリの開発費用はもちろん毎月の運用コスト、あるいはパッケージサービスの利用料金がかかります。
そのため、通常のアプリ運用では「プッシュ通知1回あたりどれだけのコストがかかる」という風には考えないのですが、LINE 公式アカウントでは多くの場合「アプリのプッシュ通知を使った分だけの課金」という明瞭なシステムになります。
コミュニケーションプラン |
月額0円、200通までメッセージ配信可能 |
ライトプラン |
月額5,000円、5,000通までメッセージ配信可能 |
スタンダードプラン |
月額 15,000円、30,000 通までメッセージを配信可能かつ、1 通あたり 3円/ユーザー 程度で追加配信も可能(送信数に応じて割引あり) |
参考: LINE for Business「料金体系」
自社で iOS/Android アプリを構築〜運用する際の費用相場
アプリの開発費用は、どんな機能をつけるかによって大きく左右されるので一概には相場を出すことができません。
ただし一定の品質のアプリをつくる際の目安として、国際基準では以下のような相場観となります。
- 会員ログイン・クーポンなどの店舗アプリで 6 万ドル〜
- 旅行・EC などプラットフォーム型のアプリで 30 万ドル〜
参考:MLSDev ”App Development Cost: Understand Your Budget To Build Powerful Apps”
上記の他、運用に際し以下のような項目に対するランニングコストが実際にかかります。
- 発覚した不具合の修正
- 新機能やデザイン改良などの追加開発
- iOS/Android 自体のアップデート対応(それぞれ 1 年単位)
- iPhone など新端末の画面サイズ対応(不定期)
最近では初期費用と上記のシステム保守の労力を抑えるために、SaaS(パッケージ型)での開発を希望する企業も増えています。
一方注意点として、必要な機能がプッシュメッセージだけなど、シンプルなアプリであればパッケージ型で十分にまかなえますが、機能の拡張性には限界があります。
以下の記事では、スクラッチ開発とパッケージ開発の導入コストやメリット・デメリットの比較をしながら詳しい違いについて解説しています。
導入の難易度
まず、自社で開発した iOS/Android アプリの場合、顧客一人ひとりのスマホにインストールされていなければなりません。そのため、マーケティング担当者がアプリケーションの認知率や導入数を増やすための施策を企画・実行する工数やコストの考慮が必要となります。
一方でLINE のメリットとして「ユーザー数とメッセージ開封率を伸ばしやすい」という点は見逃せません。企業公式アプリをダウンロードしてもらうよりも、今や90%の日本人が日頃から利用している「LINE で友だち登録してください」と呼びかけるほうが効果は出やすいのは明白です。
国内のインテリア企業として名が知られるニトリでは、今では独自アプリを展開していますが、その認知には積極的にLINE公式アカウントを使ってきた背景があります。
初期ではまず、自社アプリをダウンロードすることなくユーザーにLINE公式アカウント上で「仮会員証」を作ってもらい、会員証登録の普及を進めてきました。 そこから徐々にLINEアカウントから自社アプリへ遷移させるようにシフトし、最新情報はLINEでも告知しながら、自宅と店内で商品検索や会計までのフローをアプリで賄うなど、顧客の状況に応じてLINEとアプリの使い分けの誘導に成功した例だと言えるでしょう。
売上への直結度
アプリから発信するメッセージを売上に直結させるという点では、 LINE は自社アプリよりも不利になります。
なぜなら、LINE でメッセージを読んでから自社の Web サイトなどに誘導→会員登録/ログインという手間がかかるため、「メッセージは開封されても、期待したアクションを起こしてもらえない」という悩みに直面するケースが発生しやすいからです。
ですので、「スマートフォン経由で自社にアクセスする顧客の売上を伸ばす」という目的へのアプローチは、「LINE で認知を広げ、自社アプリで CV(決済・予約など)」という流れが理想となります。
LINEとアプリは3つの事業フェーズで使い分ける
LINE公式アカウントと自社アプリの導入で迷ったら、「どちらを使うほうがお得か」よりも「(両方を運用しながら)どう使い分けるか」をポイントに考えてみましょう。
そのためには、事業の成長に応じて3段階に分けての運用をおすすめします。
1. LINE に集中し、運用の知見を貯める
読まれやすいプッシュ通知のパターン、開封されやすい時間帯などを把握する
ユーザー数を増やすための広告は無理に配信しなくても、実店舗や Web サイトからの誘導でまかなえる
2. 自社アプリを構築し、少しずつ移行していく
より細やかな施策と分析ができるので、顧客のニーズを把握する
LINE 上でアプリのメリットを紹介して誘導する
3. 自社アプリがメインとなり、LINE は強みが生きる用途で活用
クーポンやお得な情報など、売上につながる投稿をアプリから配信
新商品や大型キャンペーンなど、マス広告や DM で広くPRする情報を LINEで告知
最終的に、LINE公式アカウントの維持はしないでも良いのかと考えがちですが、あくまでも使い分け用として残しておくのが賢明です。登録ユーザー数が数十〜数百万人規模になり、1回あたりのプッシュ通知費用が膨らんでも、LINEはスマホファーストの現代において宣伝効果として悪くありません。
売上への貢献=費用対効果が計測しづらく、事業規模が大きくなるほど身動きが取りづらくなりがちなLINE運用ですが、LINEはそもそも自社アプリとは役割・メリットが異なるため、自社アプリへの誘導装置として使うなど、2つを並行して活用するメリットは十分にあるといえます。
事業が成熟した際にLINE を切り離すことも可能
先述のニトリの事例でもご紹介したように、LINEを継続しながら会員証は自社アプリのみで利用させるなど、LINEを切り離していく運用も、事業が成熟していれば顧客に受け入れられやすいでしょう。
アメリカ発ハンバーガーチェーン店のバーガーキングでも、LINE公式アカウントの運用から自社アプリへのシフトが行われました。現在では自社アプリのみの運用に切り替えていますが、過去にLINEのプッシュ配信を利用して顧客とのコミュニケーションを活発化させていたことが、自社アプリに切り替わっても信頼感が形成された後なのでスムーズにいったと考えられます。
出典:PR TIMES「ビーケージャパンHDとロケーションバリュー、「バーガーキング公式アプリ」を共同開発」
このように、事業が成熟していく段階でLINE公式アカウントを積極的に利用し、顧客がプッシュ配信で受け取る情報を評価し始めたら、徐々に自社アプリへの誘導を行っていくと、安心・信頼感も醸成した後なのでアプリインストールにも結びつきやすいでしょう。
LINE公式アカウントから自社アプリへの「乗り換え」における注意点
「すでに LINE 公式アカウントを活用してリピート率や単価を向上させているが、自社アプリへの(完全)移行を検討している」という企業には、気をつけるべきことがあります。
「コストダウン」が目的になった自社アプリはリスクが大きい
多くのユーザーに対してプッシュ通知をするたびに膨大なコストがかかるようになったとき、「自社アプリのほうが安くなる」ことはあるかもしれません。
しかし、開発費用をあまりにも抑えると、LINEや他のアプリに慣れている顧客が「使いづらい」「重い」「不具合が多い」などギャップを感じてしまうリスクもあります。
社外ベンダーにアプリ開発を発注する際は「複数社でコンペ形式を採用し、予算内に収まる企業を選ぶ」というケースも少なくありませんが、開発実績やその制作会社が実際に開発したアプリをよくチェックすることが重要です。
また、あまり品質が高くないものを自社アプリとして一度公開してしまうと、iOS/Android 両方のアプリストアで低評価のレビューが集まり、"負の遺産”となってしまうことも要注意です。
以下の記事では、アプリ制作会社選定に際して重視すべきポイントをまとめました。制作会社をお探し中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
「運用・開発をすべて自社でやる」難しさ
LINEから自社アプリに移行する際は、施策ができる範囲や顧客の分析ができる範囲が増えるため、自社でアプリのチームをつくってスピーディにPDCAサイクルを回したくなるものです。
とはいえ、iOS/Androidアプリの運用、開発の経験がある人材はどちらも多くはなく、採用〜定着の競争も厳しいのが現実です。
高度な専門スキルが求められるため、まずは社外ベンダーを“うまく使いながら”、移行〜定着のフェーズごとに少しずつ内製の割合を増やしていくのがおすすめです。
まとめ
本記事のまとめに入ります。
LINE公式アカウントと自社アプリ、どちらを導入するかに悩んだら、まずは「どちらがお得」というよりは「役割が異なる」ことを理解することが大切です。
小規模な事業ではそもそもLINE公式アカウントの運用だけで十分なケースが多いですが、基本的には事業フェーズを3段階に分解し、それぞれのフェーズの定義を自社に当てはめながら、LINE公式アカウントから自社アプリへの移行をしていくことを視野に入れてください。
当社では、お客様の事業規模やビジネスに応じてアプリ開発が必要かどうか、じっくりヒアリングしてからご提案をさせていただきます。
「アプリ開発のメリットをもっと詳しく知りたい」、「LINE運用と比較したが、やはりアプリ導入と迷う」など、お困りの際にはぜひバックアップへご相談ください。
- 「自社アプリを考えているが、初期投資を抑えてまずは試してみたい」
- 「LINE からの PUSH 配信で顧客と継続的に接点は作れているが、費用対効果が見合わなくなってきた」
- 「安すぎるシステムだと動作速度や拡張性などが不安」
といったお悩みを抱えている企業様に向けて、ノーコードでアプリを開発するサービス「PASTA」を展開しています。