自社アプリをやる前の“お試し”に最適? LINE公式アカウントのメリット・役割の違いとは

「スマートフォン経由で顧客と継続的につながりたい」「リピート率や単価を向上させたい」という事業のニーズを満たすためには、自社で iOS/Android アプリをもつだけでなく 他社のプラットフォームを利用するという手段もあります。

最近ではパッケージ型の契約で自社アプリが構築できる SaaS(ノーコードツール)が普及していますが、大手企業である LINE 社もまた、顧客とのコミュニケーションを活性化させるツールとして企業向け LINE アカウントのサービスを展開しています。

LINE は既にインフラといえるほど普及していることから、Twitter や Instagram 以上に多くのユーザーとつながりやすく、プッシュ配信など攻めのマーケティング施策も実施できます。

そこで本記事では、同じ課題に対するアプローチとして検討されやすい両者を比較し、LINE 公式アカウントと自社アプリそれぞれのメリットを比較していきます。

費用面に関する記事として下記もまとめてありますので、よろしければご一読ください。

参考:LINEと自社アプリではどちらの費用が安い?事業フェーズごとの最適なアプローチと運用体制の考え方

LINE 公式アカウントとは? できることは自社アプリに近い?

LINE 公式アカウントは、自社の店舗・サービスを一度利用した顧客、あるいは検討している顧客に「友だち」登録をしてもらうことで、iOS/Android アプリのプッシュ通知を使ってメッセージやクーポンを配信できるサービスです。

【公式】LINE公式アカウント|LINE for Business

中小事業者向け〜大企業向けの複数プランがありますが、

  • プッシュ通知つきメッセージの配信
  • 映像メッセージの配信
  • 特定の顧客グループのみへのメッセージ配信
  • メッセージごとの反響を数値化したレポート
  • 期間ごとの友だちの増減を分析できるレポート

という機能は利用料金・プランに限らず使うことができます。

これらは既存顧客にセール情報などのプッシュ通知を活用する(リピート獲得・顧客単価向上)ために企画〜開発される、C 向けの「企業公式アプリ」と重なることが多いといえます。

特に、中小事業者にとっては月額料金 0〜5,000 円でメルマガや DM よりも効果が出やすいプッシュ配信を使えることが大きなメリットといえます。

「LINE ミニアプリ」により、iOS/Android アプリに近いシステムを構築できるように

LINE 社からは「LINE ミニアプリ」という簡易アプリサービスも提供されていることも見逃せません。

LINE 公式アカウントでは中小企業でも気軽にプッシュ通知(メッセージ配信)配信を可能にしましたが、LINE ミニアプリを同時に利用することで

  • デジタル会員証
  • 事前オーダー・来店予約
  • ショッピング
  • 決済

といった機能まで提供できます。

世界観は Apple 社が提案する「App Clips」と同様で、「iOS/Android アプリをダウンロードすることなく、アプリの一部の機能を使うことができる」という形です。

つまり、自社の iOS/Android アプリを構築することなく、スマートフォン経由で顧客に集客・再訪促進のアプローチが可能になります。

参考:2020 年から「LINE Mini app」の登場でアプリ運用は変わる?公式アカウント(旧・LINE@)との役割の違いとは?

新規集客では LINE 以外の手段も必要

数年前まで、LINE 公式アカウントは「リピーター獲得のためのSNS」と特化したポジションで宣伝されていました。

ミニアプリ機能も実装された現在は、LINE NEWS や LINEアプリのタイムライン上などで自社の友だち追加を促せる「友だち追加広告」機能も提供しているので、集客経路の一つにすることもできます。

とはいえ、誘導する先は一箇所に集中すべきですが、新規集客の経路は複数用意しておくのが一般的です。より多くの新規顧客にアプローチする際には、他の Web/SNS を試し、自社と相性がいい集客経路を模索することも重要になります。

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LINE 公式アカウントと自社アプリ、役割やメリットの違いとは

自社アプリの代わり、あるいは併用で LINE を活用するメリットは、

  • 顧客との接点の構築しやすさ(フォローしてもらいやすい)
  • 小規模、あるいは限定的な使い方では費用を抑えやすい(料金体系が明確)

という二点です。

一方で、デメリットは

  • 顧客の行動が LINE(ミニアプリ含む)上での行動に制限される
  • 積極的に活用していこうとすると費用がかかる

という二点です。

「つながりやすさ」「費用」の視点でそれぞれをまとめていきます。

友だち登録・メッセージ開封はしてもらいやすいが、できることには限りがある

特に初回の接触時は顧客も「試しにこの会社・店舗を使ってみる」という程度の温度感であることも多いです。

企業公式アプリをつくった場合、顧客にダウンロードしてもらうことは簡単ではありません。プッシュ配信で実店舗や EC のお得なセール情報を案内したくても、顧客に接触するまでのハードルが高くなっています。

LINE でつながる場合は、一つの企業・ブランドのためだけにアプリを新しくダウンロードする必要がないため、ユーザーの心理的ハードルは低いといえます。顧客の多くは最寄りの飲食店やスーパーマーケットなどのアカウントを友だち登録しているため、操作で迷うことも少ないです。

また、花王株式会社の事例では LINE 公式アカウントの PUSH メッセージの開封率はほぼ 70% 以上を記録したとのことで、企業公式 iOS/Android アプリよりも通知・メッセージを開封してもらいやすいこともわかります。

参考:メッセージ開封率がネイティブアプリ運用時の2倍に伸長! カネボウ化粧品のLINEミニアプリ活用(LINE for Business)

ただ、LINE のプッシュ通知はあくまで LINE を起動するためのものです。メッセージを読んでもらったり、LINE ミニアプリ内で操作してもらうことになるため、たとえば自社のイベントやセールを案内している Web サイトへ誘導するには苦労します。

また、自社専用の iOS/Android アプリを使ってもらう場合に比べると、顧客一人ひとりの細かいデータまでは取得できません。

小規模な事業者は安価にアプリの恩恵を受けられるが、規模が大きくなるほど費用は上がる

LINE 公式アカウントの恩恵が大きいのは、おそらく「月額 5,000円 で、15,000 通までメッセージを配信可能」というライトプランです。

15,000 人の顧客に月 1 回、5,000 人の顧客に対しては月に 3 回プッシュ通知でメッセージを送ることができるので、中小企業であれば十分に活用できます。

自社で iOS/Android アプリを運用しようとしても、この価格ではほぼ不可能といえます。月に数万円で iOS/Android アプリを構築できるという “格安” のテンプレートサービスこそありますが、品質面で顧客の支持を失うリスクやセキュリティのリスクなどを考慮する必要があります。

とはいえ、LINE 公式アカウントがパッケージ料金で定義しているのは、月額 15,000 円のスタンダードプランでの 45,000 通までです。この量を越えると、プッシュ通知を配信するたびに従量課金で料金がかかってきます。

中小企業にとっては、費用対効果だけでなく運用の経験を積めるというメリットも大きい

顧客と自社の接点がスマートフォンになっている現代では、紙のチラシだけでなくアプリのプッシュ通知が大きな宣伝手段になっています。

LINE 公式アカウントはできることが限られるとはいえ、中小事業者にとっては、自社で iOS/Android アプリを構築するよりも安価にプッシュ配信で顧客にアプローチできるのは費用対効果が良いといえます。

また、「アプリの運用に慣れることができる」というメリットもあります。

自社アプリは、開発(外注含む)しただけではほとんど効果がありません。効果的な運用をして、はじめて企業のビジネスを成長させることができます。

LINE の友だちを増やすプロセスはアプリのダウンロードを増やすプロセスと似た苦労がありますし、読まれる・URL(リンク)をタップしてもらうための効果的な PUSH メッセージの配信は、自社アプリの運用でも重要になってきます。

先に LINE 公式アカウントを運用しておくと、のちに iOS/Android アプリを開発した際には(開発面での苦労をのぞけば)スムーズに運用できます。

大企業では自社アプリと LINE 公式アカウントを併用している事例が多い

メッセージの従業課金制は、「友だち数」あるいは「配信頻度」のどちらかが増えるとコストが増えていきます。メッセージ 1 通が 1〜3 円といえど、顧客数が多い企業の場合は 1 回あたりの配信額は膨大になります。

自社の iOS/Android アプリが軌道に乗った企業では LINE の配信を終了することもありますが、現在はまだ併用している企業も少なくありません。

企業アプリのプッシュ通知の許諾率は 50% 程度が目安であり、ダウンロードの心理的ハードルを考慮しても LINE ならではの「つながりやすさ」は見逃せません。

特に飲食チェーンにおける新商品の発売、大規模店舗の大型セールなど、マス広告を使って認知を取りにいくような情報配信では、LINE 公式アカウントを使う余地はあるといえます。

ただ、iOS/Android アプリの運用コストと重なるため、併用する場合は顧客のエンゲージ施策としての投資金額は膨らんでいきます。

ですので、自社アプリと並行して運用する場合は、「何を求めるか」を明確にした上で、他のプラットフォームと効果を比較することが重要になります。

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