(2022 年 9 月更新)
「アプリ開発の費用の相場は?」という質問と同様、「つくったアプリをある程度の人数にインストールしてもらうための広告費っていくらくらいかかるの?」という相場も、企画段階の企業様からよくご相談を受けます。
そこで、今回は目標が定まっているという前提で、アプリをダウンロードしてもらうためのインストール広告および PR 施策それぞれの違いを紹介します。
やや複雑な話まで交えておりますが、「とりあえずアプリをつくって Web 広告を出そう」という温度感で動き出すのはアプリの会社として推奨できないので、特にはじめて iOS/Android アプリをリリースするという場合はご一読ください。
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1. アプリ事業では新規/リピートどちらにも Web 広告が有効
前提として、
- 既存の顧客に対するデジタル会員証、利用料金の明細確認など限定的な機能のみでリリースしており、大規模な新規集客やアプリ経由での売上をそこまで求めない場合
- 好立地で大勢と接触できる実店舗/施設や、大量のトラフィックを稼げるオウンドメディアなど、独自の集客手段がある
というケースでは、計画の中で広告費用を高く見積もっておく必要はありません。
ですが、単体での事業のカラーが強い場合や、独自の集客チャネルが無い・成長途上の間は、Web 広告とうまく付き合っていくことが重要になります。
アプリ事業における「集客」は、アプリをインストールしてもらうためだけでなく、休眠してしまったユーザーなどに対する呼び起こし施策も欠かせません。
「ディープリンク」という技術を使うことで、広告および自社のメルマガ・SNS から URL に誘導する際に
- 新規ユーザーであれば App Store/Google Play に誘導
- インストール済のユーザーはアプリを起動した上で、トップページではなく指定した画面に誘導
と分岐させることができます。ですので、新規向けと既存向けである程度は共通した宣伝ができます。
2. Web 広告の仕組み
Web 広告がマス広告や紙の広告と異なるのは
- ごく少額からでもお試しで出稿可能
- 配信するターゲットを細かく指定できる
- 配信後にも広告を修正・改善していきやすい
- 運用の良し悪しで費用対効果が変わる
という点です。数千円~数万円単位から始められるので、小規模なアプリ事業であっても利用できるのがメリットです。
2-1. 「総予算」を決めながら「入札」する?
Web 広告の費用のかかり方は
- インプレッション課金:広告が一定回数表示されるたびに支払う
- クリック課金:Webサイトやアプリに送客するたびに支払う
- エンゲージメント課金:アプリインストールなど、成果につながるたびに支払う
といったパターンがあります。予算の上限額を設定した上で配信し続け、消化するまで繰り返します。
iOS/Android アプリの場合は、実際にアプリをインストールしてくれた顧客の数 × 獲得単価、という金額を支払うパターンが一般的です。
自社が優先的に配信したいと思う場所やターゲットグループには、当然ながら競合他社も広告を配信していることが多いです。場合によってはオークションのように「入札」していく競争にもなります。
レッドオーシャンの場合は広告費用の相場も高騰する ので、まずはほどほどの予算・限度額で配信し、バナーやテキストなども調整していくのが定石です。
2-2. CPI と LTV を最適化していく
「ユーザーが自社のアプリをインストールするたびに課金」というシステムは費用対効果がわかりやすいのですが、CPI(Cost Per Install = インストール 1 件あたりの費用)は数百~案件によっては数千円と、見た目には高くなりがちです。
そして重要なことは、iOS/Android アプリ事業では、インストールしてもらうことがゴールではありません。継続的に利用してもらい、売上につながらなければ広告費用は無駄になってしまいます。
ですので、App Store/Google Play への広告を出す場合は、
- CPI が高くなりすぎない手段で配信する
- インストールした経路や配信グループごとに顧客の LTV のような指標(継続・優良顧客になってくれるか)を計測する
という二つの視点が非常に重要になります。インストール経路ごとのユーザー分析は専用の広告系ツールを利用することで可能になります。
3. 毎月の広告費用・運用コストは、事業目標からの逆算や最適化も可能
現在企画あるいは運用しているアプリが「お試し」目的や、定性的な目標を追うものであれば、CPI と LTV を最適化することで運用はスムーズに行えます。
しかし、iOS/Android アプリ自体を事業として捉える場合は、月ごとに
- アプリ経由での売上
- (リリースから一定期間後)投資の回収率
および
- 保守/運用コスト
- 新規ユーザーを獲得するための広告費用
のバランスを取っていくことが必要です。
まず考えたいのは、「アプリ経由の売上を確保するためにはどれだけのアクティブユーザーが必要か」 という視点です。
そして、
- 事業目標を達成するための AU(アクティブユーザー)数を設定
- 新規ユーザーの離脱/継続率を当てはめる(自社の知見あるいは一般的なデータ)
- 必要になる獲得数を計算し、PR 費用をかけて確保する
という流れになります。
もちろん、「新規ユーザーの継続率」「課金率/有料会員率」などは計画通りにいくわけではなく、仮の数値で計算するため、この目標値自体はあくまで目安となります。
ただ、AU の目標値を定めることで、「iOS/Android アプリをリリースした後に毎月かかる広告費用はいくら程度?」という目安/相場はある程度考えることができる ようになります。
4. それぞれのプラットフォームの概要
最後に、Web 広告を出すことができる手段について軽くご紹介していきます。
4-1. プラットフォームへの広告配信(Google, Yahoo, LINE など)
プラットフォームの中では、特に Google がポイントです。
出稿する広告主と親和性が高い Web サイトやアプリの中で広告を配信してくれるネットワーク型広告のほか、YouTube 広告や Google Play 上の広告も取り扱っています。またアプリをインストール済のユーザーを特定のキャンペーンページに誘導する「エンゲージ広告」もあります。
参考:モバイルアプリ インストール広告について(Google 広告 ヘルプ)
SNS 広告に比べると運用にかかる手間はやや少ないですが、ネットワーク広告においては配信先をコントロールしきれないことは一つのデメリットといえるかもしれません。
また、iOS アプリに関しては App Store でアプリを探しているユーザーに対して広告を出すことも可能で、インストールにつながりやすくなっています。
4-2. SNS(Twitter, Facebook, Instagram)への広告配信
SNS のタイムライン上に、バナー画像やサンプル動画などとともにアプリストアへのリンクを流す手法も一般的です。
当然、SNS にはそれぞれ特性があります。
- Facebook(40 代〜中心、地方にも強い)
- Twitter(20 代中心だが 30 代も増加中、荒れがち)
- Instagram(意外に幅広い層に普及、相性が重要)
各 SNS の特性を知り、文脈に沿った配信を行なうことで費用を抑えることができるので、日常的に使って理解を深めていくことが重要です。
4-3. メディア(インフルエンサー含む)への広告出稿
Web メディアの中にある記事と同じフォーマットで、コンテンツとして広告を出すという手段です。
専門メディアになるほど特定の属性のユーザーが集まっているので、ターゲティングがしやすいことが特長です。
近年では企業の大規模なサイトだけでなく、YouTuber・インスタグラマーや配信者などのインフルエンサーも一種のメディアとして捉えるようになっています。
コンテンツ型広告は、SNS 広告と違ってコンテンツが Web 上に残るというメリットもあります。メディア・インフルエンサー側とうまく連携できれば、広告でありながら長期的な PR・ブランディング効果も期待できます。
どちらかといえば雑誌・新聞広告に近く、SNS やポータルサイトへの広告のように “運用” する手間はかかりません。ただ、出稿時に費用を払い切ることが多いため、インストールのペースが悪い・費用対効果が高いからといって途中で微調整することはできません。また CPI を安定させづらい・予測しづらい という面もあります。
4-4. オフライン広告
新聞・雑誌・テレビなどへの広告出稿は、Web 広告では獲得しきれない顧客層に訴求できます。
とはいえ初期費用が高くなりがちで、CPI も安定しません。普段から Web/SNS にあまり触れていないユーザーでは定着率や LTV を高める点でも難易度が上がります。
ですので、主な用途といえば
- アプリ事業が順調に成長し、次のステージに伸ばしたいとき
- 職人向けサービスなど、Web 広告と相性が悪い事業
といったケースが中心になります。
スマホアプリ開発後の広告費に関するまとめ
- Web 広告は少額からでも出稿できるので、小規模に始めたアプリでも使える
- インストール 1 件ごとのコストだけでなく、獲得経路ごとのユーザーの違いまで分析必須
- かかる広告費用の目安を知るためには事業目標から「必要な AU」を推定する
- SNS 広告は、その SNS を日常的に使っているスタッフがいると考えやすい
- メディアの記事広告は単価だけ見ると見劣りしがちだが、他の Web 広告にはないメリットがる
アプリを開発・公開した後、まず事業として軌道に乗せるためのユーザー数を獲得するにはある程度の広告費が必要です。Web 広告は少額から始められる分、運用によって CPI、つまり費用対効果に大きく差がつきますので、まずはそれぞれのメリットを理解していきましょう。
とはいえ、アプリ事業はインストールしてもらうことだけでなく
- 継続利用してもらうこと
- ユーザーに支持され、App Store/Google Play のレビュー点数を高めること
が重要です。
アプリ自体の定着率が低い場合、どれだけインストール促進施策をしても「穴の空いたバケツに水を注ぐ」状態になってしまいます。
また、アプリストアのレビューの平均点が 2〜3 点に低迷すると、PR 施策でアプリストアに誘導しても DL 率が激減し、広告の効果が下がってしまいます。
ですので、アプリを開発する際、あるいは一度今の事業を見直す際は、
- 不具合や UX 上の問題点を解消(事前に対策)し、一定水準の品質を保つ
- 顧客分析、PUSH 配信やアプリ内メッセージなど、やるべき施策をしっかりとやり切る
- アプリストアでの評価を安定させる
- PR 施策に注力してインストール数、AU 数を増やす
という順序で進めていくことをおすすめします。
- 「組織体制も変わったし、ここで一旦仕切り直そう」
- 「いまいち戦略や目的がハッキリしていないから、見直したい」
といった状況にある方へ向けて、現在のアプリ事業を見直す際にチェックしたいポイントと手順を紹介したお役立ち資料を公開しています。