(2023 年 10 月更新)
アプリ事業で利益を出すには、気に入って使ってくれる顧客をある程度の人数集めることが必要です。そのためには広告・宣伝に人手やコストをかけることになります。
そこで、今回は iOS/Android アプリの宣伝方法を整理し、それぞれのメリット・特徴をまとめました。また、集客戦略を考える上で非常に重要な「前提」もご紹介します。
アプリを企画している、あるいは運用で悩んでいる際はぜひご一読ください。
アプリダウンロード数の目安について
アプリダウンロード数の目安は、企業やアプリの性質によって異なります。以下に一般的な目安を示しますが、これらはあくまで参考値であり、個別の状況に応じて変動します。
スタートアップ企業:
新興企業の場合、アプリのダウンロード数はまず1万以上を目標にしたいところです。ストアに表示されるダウンロード数(Android のみ)やレビュー数が少ないと宣伝の効果も上がらないので、初期段階ではまずアプリの知名度を向上させることが重要です。また、新興ブランドの場合は、LINE公式アカウントなど、自社アプリ以外の施策のほうが効果的なこともあります。
中堅企業:
安定した収益があるEC企業、数十店舗を運営する小売企業など中規模の企業は、アプリのダウンロード数が1~10万程度になることが一般的です。
大手企業:
大手企業や国際的なブランドの場合、アプリダウンロード数は100万を超えることも多々あります。
とはいえ、中堅~大手ブランドのアプリの場合、ダウンロード数のみを目標とすることはありません。アプリの目的はあくまでリピート促進など顧客のロイヤルティを高めることであり、実際のアプリ事業ではインストール数だけでなくアクティブユーザー数・アクティブ率・課金ユーザー率・購買単価などを KPI とします。
参考記事
アプリの代表的な宣伝方法をご紹介
本章では、ユーザーに自社アプリをより多く認知・ダウンロードしてもらうための、効果のあるマーケティング施策についてご紹介していきます。
前提1. 店舗/施設や Webサイト/SNS からの誘導はすべての基本
自社の店舗や Web/SNS/メールマガジンなどからは、広告・宣伝費用をかけずにアプリに誘導することができます。また紙のチラシ配布や POP も有効な手段の一つです。
デジタルツールの中では、運用スキルがあればお金をかけずにフォロワーを増やすこともできる Twitter はスモールビジネスと相性が良く、リスクはあるものの SEO に注力することでコンスタントに集客ができる Web サイトは大規模なアプリ事業では不可欠といえます。
技術として
- スマホブラウザの画面に固定されるバナー
- URL をタップした際にアプリの特定画面を起動する(未インストールならアプリストアに誘導する)ディープリンク
といったものは必須といえるので、事業部門の中でも理解を深めておくのがおすすめです。
前提2. Web 広告は効率が悪くなる?
オフライン広告のデメリットと Web 広告のメリットが浸透した結果、ここ数年はアプリ広告においてもまず Web を中心にインストール数を伸ばして事業を成長させるという考え方が主流でした。
しかし、SNS広告の平均CPCがここ3年で約2倍に高騰しているため、新規獲得やリピート促進を Web 広告に頼るのは事業モデルとしてリスクがあるといえます。
もちろん広告が必要なくなるわけではありませんが、これまでの宣伝施策を考え直すタイミングにはあるといえます。
前提3. 集客経路ごとの費用だけでなく、LTV も重要
アプリをリリースする前やリリース直後では、「とりあえず○万人のユーザーを集めよう」と宣伝・PR 施策に注力することも多いです。
このとき、つい「1人あたりの獲得単価が低い宣伝手段があれば、そこに PR 予算を集中したい」と考えがちですが、これはありがちな失敗パターンです。
アプリの目標はあくまでユーザーに定着してもらい、購買行動など売上につなげることです。獲得単価が低くても、その経路から訪問したユーザーの離脱率が高かったり購買単価が非常に低かったりすると、ベストな手段とはいえません。
ですので、理想としては分析ツールなどを導入し、集客経路ごとにユーザーをグループ分けして
- アプリに定着してくれやすいか(親和性が高いか)
- 購買/有料会員登録など、アクションを起こしてくれやすいか
- どれくらいの金額を使ってくれるか
といった視点で比較した上で、広告・宣伝費用の振り分けを考えることが重要です。
1. ポイント・クーポン・友人紹介など直接的な施策
チラシ(初回 DL でのクーポンなど特典付き)の配布
チラシの配布は、特に飲食や小売(EC 前提)では「アプリを DL すると、その場で使えるお得なクーポンがもらえる」と訴求するパターンが多くなっています。
また、チラシは手元に残り、クーポンのお得さや操作方法などをマニュアルのように伝えられるというメリットもあるので、デジタルツールを使い慣れていない層への訴求も効果的です。
特に都市部の駅前や大型モール内など、人通りの多いエリアに店舗/施設を構えている場合は、デジタル広告よりも費用対効果が良くなるケースもあります。
インストールやアプリ内でのアクションに応じてポイント付与(ポイ活の文脈)
アプリをインストールして、コメントの書き込みなど特定の行動をした際に楽天などのポイントを付与するという手段も一般的です。
主婦層など、「ポイ活」をしている層にはメリットが伝わりやすく、DL を増やしながらアプリを盛り上げるには有効な手段といえます。
デメリットとして、ポイント付与がスムーズにいかなかったり、「ポイント目当てで DL したけど条件が複雑で…」と、App Store/Google Play に星 1 のレビューを投稿されてしまうこともあります。
SNS シェア・友達の紹介(インセンティブを付けない場合も)
アプリを Twitter などの SNS でシェアしたり、紹介コードを発行して友人が同じアプリをダウンロード(チュートリアルなど一定のアクションを完了)した際に特典を用意する手段もあります。
もちろん、クーポンやポイントなどの特典をつけず、コミュニティとして魅力を訴求するケースもあります。
なお、アプリ内に SNS シェア機能を実装する際は、プラットフォーム各社ごとにシェアできるコンテンツに違いがあるため、仕様を把握して企画することが求められます。
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2. デジタル広告:小規模な施策から始められ、効果が見えやすい
Web 上の広告のメリットは、
- アプリのインストール 1 件ごとにいくらかかったのかが明確
- 1 日ごとの予算を決め、上限に達した時点で打ち切ることが可能なものもある
- 複数のバナー画像やキャッチコピーを試しながら効果が高いものを見極められる
といった特徴により、予算を含めて宣伝・PR 施策として管理しやすいことが挙げられます。ですので、小規模に始めたアプリ事業であればまず Web 広告を試してみるのが主流といえます。
デジタル広告の種類、広告費用の目安、アプリ事業の企画時に運用コストを想定するための手順などはこちらの記事でまとめています。
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SNS 広告(投稿型広告・カード型広告・動画広告)
SNS のタイムライン上に、バナー画像や PR 動画などとともにアプリストアへのリンクを流す方法です。
当然、主流となる Facebook、Twitter、Instagram にはそれぞれユーザー属性に特徴があります。SNS の特性を知り、文脈に沿った配信を行なうことで費用を抑えることができるので、日常的に使って理解を深めていくことが重要です。
Web プラットフォームへの広告出稿(インフィード広告・バナー広告・動画広告)
Yahoo や Google といった大手プラットフォームへの広告出稿は、より多くの見込み顧客に訴求できます。
特に Google は YouTube や Google Play 内にも出稿できるので、利用するケースが多いといえます。
LINE も Twitter/Instagram のような SNS に比べて幅広い世代に広く普及しており、プラットフォームといえる規模になっています。LINE × アプリ広告はまだゲームが中心といわれていますが、今後は要注目かもしれません。
メディアでのコンテンツ型広告
自社のアプリの見込み顧客が多そうな Web 媒体に直接依頼して、コンテンツ型のタイアップ広告を出すという手段です。ある程度の費用が必要になり、費用対効果が明確ではなくなるので、どちらかといえばマス広告に近い施策です。
ただ、iOS/Android アプリは、バナー画像からアプリストアに誘導するだけではインストールまで到達しづらいため、コンテンツ型の広告で利用メリットをしっかり伝えた上でストアに誘導する手段が有効になるケースもあります。
インフルエンサーマーケティング
近年では、企業色が強いメディアよりもインフルエンサー(特定の SNS 上で大きなフォロワー数と影響力を持つタレント)に自社の製品を宣伝してもらう手法も流行っています。
アプリの場合は、to B ではなく若年層の C 向けの「インフルエンサーマーケティング × コンテンツ型広告」で、人気 YouTuber にアプリを実際に使ってもらうという動画広告コンテンツなどが一般的です。
特に人気 YouTuber とのタイアップコンテンツ型広告はノウハウが必要ではありますが、
- アプリを理解してから DL されやすい(テキスト記事よりも伝わりやすい)
- コンテンツが残り、新規登録ユーザーが過去の動画までチェックするので継続的に観られやすい(Web メディアでは少ない行動パターン)
という強みが注目されています。
3. オフラインでの広告:費用がかかるが、訴求できる層が広い
リアルでの施策は新聞・雑誌などの紙媒体やマス広告、イベント出展などが挙げられますが、
- メリット:幅広い層に接触できる
- デメリット:費用が高くつくが、コストパフォーマンスが判断しづらい
という点は共通しています。
iOS/Android アプリに限らず、企業の宣伝・PR 施策は年々 Web が優先されてきています。しかし、依然としてオフラインでの宣伝効果は無視できない(≒Web には限界がある)ため、事業を拡大するフェーズでは避けて通れないものです。
交通系広告
交通広告には、バス車内のシール広告から電車の中釣り広告や都心の駅構内にある大きな看板まで幅広い広告枠があります。
こちらも地域に密着したビジネスとは親和性がありますが、
- Web に比べると契約期間(掲載期間)が固定される
- iOS/Android アプリで複雑なアクションをし慣れている層ではない
ということは念頭に置いておきましょう。
イベント出展
B向けであれば最新技術・トレンドの見本市のようなイベント、C向けであれば顧客が集まるようなイベントに協賛し、ブースを出展して来場者に直接アプローチするというやり方もあります。
ただし、アプリの場合は会場で初めて知ったという人にその場でインストールしてもらうというのはかなりハードルが高いです。ですので、出展料に見合う PR 効果を出すには事前準備がとても大切になります。
マス広告(新聞・テレビ)
広告費の桁が変わってきますが、事業規模が拡大したときにはマス広告も重要になります。
サラリーマン向けであれば新聞広告、主婦や学生向けであればテレビ CM などを使うことで、より多くのユーザーを獲得できます。ただし、Web 広告とはまた違った独自のノウハウが必要なため、テレビ CM を打った際には大きな効果が出る場合も効果が出ない場合もあります。
チラシのポスティング
Web・SNS が普及している現代でも
- 新聞への折り込み広告
- 住居へのポスティング広告
- 街頭で配布するティッシュの広告
といった紙のチラシ・ビラは多くの企業に使われています。これらのポスティング施策でも、多くの場合は初回利用で使えるクーポンなどの特典をつけるのが一般的です。
特定地域への広告配信は Web でも可能ではありますが、当然ながら精度はオフラインのほうが高くなります。
人口・駅からの距離など立地条件を指定できるので、仮説を元に検証するという使い方も可能です。
まとめ
アプリの宣伝方法には上記のようにさまざまな方法があり、
- SNS や実店舗/自社サイトなど、お金をかけずにアプリに集客する手段も重要
- Web 広告のコストは年々高騰しているので、依存しすぎるのはリスク
- ある程度の規模のアプリ事業では、アプリのダウンロード数だけを追うべきではない
といった点がポイントになります。
アプリ事業では、ダウンロード数だけでなくアクティブ率やレビュー点数も重要です。アプリストアのレビューの平均点が 2~3 点に低迷すると、PR 施策でアプリストアに誘導しても DL 率が激減し、結果として広告の効果が下がるという落とし穴もあります。(詳しくは以下の記事をご覧ください)
上記を踏まえて、自社に合うアプリの宣伝方法を考えると同時に、ユーザーに “使い続けてもらえる” アプリ開発を日々追求していくことも大切です。
当社ではアプリの宣伝前に気を付けるべきこと、効果的な宣伝方法なども経験豊富なスタッフがトータルでご相談に応じております。 アプリ開発についてお困りごとがありましたら、ぜひお気軽に弊社へご連絡ください。
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- 「いまいち戦略や目的がハッキリしていないから、見直したい」
といった状況にある方へ向けて、現在のアプリ事業を見直す際にチェックしたいポイントと手順を紹介したお役立ち資料を公開しています。