ハイブリッドアプリ(webview)とネイティブアプリ、Web アプリ(PWA)の違い・各メリットとは?
アプリを開発・発注する際に情報を調べたときには、「ハイブリッドアプリ」と「ネイティブアプリ」という言葉が出てきます。
また、最近では Google 社による「PWA (Progressive Web Apps)」という、Web アプリでありながらモバイルでの閲覧時にはアプリのような UI/UX を実現できるフレームワークも普及しています。さらに iOS 14 では Apple 社が PWA とは対象的なアプローチとなる「App Clips」を発表しました。
iOS/Android アプリ事業を始める際には、アプリの構造だけでなくこれらの付帯技術も理解した上での企画・設計が求められる時代になったといえます。
そこで、今回はアプリ開発を検討されている企業のご担当者様向けに、それぞれを比較した際の違いと特徴をまとめました。
1. スマホアプリを企画する際に出てくる種類
簡単にまとめると
大枠では Web サイト
- Web アプリ = Web ブラウザ上で情報を見せるだけでなく、さまざまな機能を利用できるアプリケーション
- PWA = スマホで開くとアプリのように感じられる Web
- App Clips = アプリをインストールしてもらうために Web 上で動作させている、ネイティブアプリの一部分(機能)
大枠ではネイティブアプリ
- フルネイティブアプリ = Web ではなくアプリとして中身をイチから構築するアプリ
- ハイブリッドアプリ = 既存の Web サイトを活用しながら+α として独自の機能をネイティブで実装するアプリ
- WebView = ネイティブアプリの中で、既存の Web サイトを読み込む技術(複数種類あり)
という役割となります。
実際に企業内でネイティブアプリを企画されたときは、既存の Web サイトと連携することがほとんどです。
ですので、「特集ページなどは WebView で、商品検索はサクサク動くようにネイティブで作ろう」という風に、WebView で済ませる部分とネイティブで構築する部分が両方あることが多いです。
2. 「Webアプリ」と混同されがちな「ハイブリッド(webview)アプリ」とは?
ハイブリッドアプリは、一般的に言われる「iOS/Android のネイティブアプリ」と考えていただいて問題ありません。
打ち合わせの段階では「WebView ベースのアプリ」などと、一つの機能を指して呼ばれることが多いです。
いわゆる「ウェブビューのアプリ」とは、基本的には Web サイトと同じコンテンツをそのままスマートフォンやタブレットで読み込むために iOS/Android アプリ化するというものです。WebView とはスマホアプリ独自の統一ブラウザで、Google Chrome や Safari などとは違う仕様で Web サイトをレンダリングします。
加えて、ハイブリッドという名の通り、プッシュ通知・生体認証・VR/AR・NFC など、モバイル端末ならではの機能を実装して付加価値をつけることもできます。
「プッシュ通知で継続的に顧客と接点を持ちたい」という目的だけであれば、ほとんど WebView のみで構築したアプリでも達成できます。
既存の Web サイトの閲覧という行為をベースにしつつ、重要な部分はネイティブ(オリジナル)で開発することができるため、「ハイブリッドアプリ」と呼ばれています。 ただし、利用するためには必ず Google Play/App Store から各自が端末にインストールする必要があります。
3. ハイブリッドアプリ(webview アプリ)のメリットとデメリット
全国に店舗を展開する小売企業や飲食企業、店舗/施設でサービスを提供する美容・エンタメ・フィットネス企業などは、アプリを作る場合に WebView で既存のサイトと連携することが多いです。
ここで重要なことは、WebView で済ませる部分とネイティブで構築する部分の分担です。
3-1. WebView メインでも企業側はアプリのメリットを実感できる
「ただ Web サイトを見せるだけのアプリって、メリットはあるの?」と疑問に思われるかもしれません。
企業側は、ネイティブアプリでさえあれば、ログインしていない顧客でも(端末固有の ID によって)個別に識別して行動を分析できます。さらに iOS/Android 固有のプッシュ通知を配信し、継続的に接点を生み出せるというメリットもあります。
「ウェブサイトとアプリの両方を運用するなんて、とてもできない…」というお悩みはよく聞かれますが、大部分を WebView で済ませることでサイトの更新がそのままアプリにも反映され、運用を簡略化できます。
また、開発の仕様によっては、顧客もアプリ内で会員登録しなくても気になる商品や施設をお気に入り登録できたり、紙の会員証を紐付けたりできるようになります。最低限のメリットは提供できるのです。
3-2. WebView に頼りすぎると顧客に価値を提供しづらいのがデメリット
一方で、WebView の部分が多くなるほど、顧客にとっては魅力を感じづらくなります。
ブラウザで Web サイトを読み込むよりは快適になりますが、劇的に “サクサクと” 動作するわけではありません。商品を検索する EC サイト、コーディネート例やスナップ写真を検索するアパレル・インテリア系のサイトなどは、肝となる部分はネイティブで(アプリ独自のものとして)構築することが多いです。
さらに、実際の事例では「顧客にメリットを提供できなければダウンロードしてもらえないだろう」と、AR/MR を使ったアイテムの試着コンテンツや、アニメーションのある抽選・ガチャ、診断・エンタメコンテンツなどを企画〜実装する企業様も多いです。
つまり、ハイブリッドアプリを作る上では、WebView 以外にネイティブで構築する機能で顧客にメリットを提供し、競合と差別化するというパターンが一般的といえます。
また、アプリ化の最大の焦点となる PUSH 配信に対しても、企業様ごとに「自社の EC や基幹システム・会員データベースと連携してプッシュ通知を送りたい」という声が多く、システムを作り込むケースが多いです。
4. iOS/Android のフルネイティブアプリとは
ネイティブアプリとは、“ネイティブ(本来の)” という言葉の通り、アプリ内に独自のコンテンツとシステムをつくるものです。
そもそも Web サイトのアプリ化ではなく、ソーシャルゲーム、専門的サービス、加工用カメラなど、単体で事業・サービスとしてリリースされているものを思い浮かべていただくとわかりやすいかと思います。
すべてをゼロから構築するフルネイティブアプリは、WebView で効率化するハイブリッドアプリと比べて開発コストが高くなります。さらに、単体の事業として勝負する場合、アプリはインストールしてもらえなければ売上を生み出せないため、多くの場合は Web サイト/SNS も同時並行で運用することになります。
ですので、フルネイティブアプリは、
- 資金調達をしたり、上場/バイアウトを視野に入れているスタートアップ(大規模)
- 既存のブランド・サービスの魅力を伝えるため、限られた機能だけを持たせたエンタメコンテンツ(小規模)
のどちらかで開発されることが多いです。
5. PWA とは? 通常の Web サイト・ハイブリッドアプリとの違い
PWA を一言で表すと “パワーアップした Web アプリ” です。
iOS/Android アプリ(ハイブリッドアプリ&ネイティブアプリ)を開発する前の段階の、Web サイトに対するソリューションです。
Web アプリを PWA 化することで、iOS/Android 固有のプッシュ通知やバックグラウンド同期、オフライン起動といった “アプリのような UI/UX” を実現できます。
5-1. PWA は Apple のスタンスと相反する?
発表された当初は話題になりましたが、2022 年になっても PWA はまだあまり普及していません。
最大のデメリットは、Apple が PWA に対してあまり積極的に対応してこず、iOS ではプッシュ通知やオフライン同期が使えないことです。
さらに、Apple 社は iOS 14 の新機能の一つとして「App Clips」を発表しました。
App Clips 自体は iOS アプリありきのマーケティング施策の一種なので詳しくは下記の記事を参照していただければと思います。しかし、ここで重要なことは、Apple はあくまで iOS アプリ(App Store)を中心に事業を考えていることです。
(追記)iOS 15 では Apple が PWA 対応を進める旨を匂わせていますが、両者のスタンスの違いは無視しづらいといえます。
参考:
- Googleが推すPWAにiOSもそれなりの対応?メリット・できないことを改めて整理
- iOS14 の「App Clips」から見る Apple 流の UX──事業者は PWA、LINE ミニアプリなど周辺領域との違いを理解しておきたい
ハイブリッド(webview)アプリとフルネイティブアプリ、Webアプリ(PWA)の違い・メリットまとめ
- ハイブリッドアプリ=ネイティブアプリの一種で、WebView を活用したもの
- ほとんどを WebView で構築するだけでも、企業側は iOS/Android アプリのメリットを受けやすい
- WebView メインのハイブリッドアプリは顧客にメリットを提供しづらいため、ある程度の売上(貢献)を狙うなら独自の工夫も重要
- ゼロからすべてを構築するフルネイティブアプリは限られたケースで開発される
- PWA が普及すれば iOS/Android アプリの出番は減るかもしれないが、現時点ではその未来は遠い
アプリ開発においてはどうしても聞き慣れない単語が多いため、「ネイティブとハイブリッドどちらがいいのか」という枝葉の議論になってしまいがちです。
しかし、BackApp では「お客様の事業形態や状況という根本的な部分をしっかりとヒアリングしなければ、どちらが良いともいえない」と考えています。
ご不明な点などありましたら相談に乗らせていただいますので、お気軽にお問い合わせください。

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