最近では初期費用を抑えて iOS/Android のネイティブアプリを開発できるサービスも増えており、企業が独自のアプリを公開するハードルは随分と下がったように感じます。
もちろん試してみること自体は悪くないのですが、アプリは Web にはないリスクも多くひそんでいます。そこで、今回は iOS/Android アプリ開発を手がける BackApp だからこそ伝えたい、「とりあえず、で失敗しがちなパターンと、その回避策」をご説明します。
また、もし現状のアプリの評価が低い場合に見直すべき手順とポイントもご紹介するほか、お役立ち資料としてまとめておりますので、ぜひあわせてご一読ください。
前提:スマホアプリは、ユーザーの評価が見えることで事業に影響を及ぼす
現在、ユーザーがアプリをダウンロードする際には必ず、アプリストアである App Store/Google Play を経由します。
アプリストアでは “およそのダウンロード数” と “ユーザーの評価” が可視化されています。ですので、顧客の一人ひとりが「このアプリはこれだけたくさんの人に使われていて、評価も高いんだな」「同じようなサービスの ◯◯ に比べると評価が低いということは、こっちは使わないほうがいいのかな」など、他のアプリとも比較しながらダウンロードするかを検討できます。
ここで注目すべきは “レビューの平均点” です。ダウンロードする前にはほとんどのユーザーがレビューを参考にするという調査結果もあります。多額の広告費用をかけても、レビューの平均点が低いと DL 率(CVR)が低くなり、費用対効果が下がってしまいます。
アプリのレビューを改善すると、ダウンロード率が上がる。ということは、レビューの平均値が「アプリのダウンロード数」にもインパクトを与える。
例えば、「★2」が「★4」に改善されると、ダウンロード率が5.4倍に上がる。(例えば、年20万ダウンロードされてるアプリが5.4倍になると、年108万ダウンロードに跳ね上がる)
引用:http://appmarketinglabo.net/appstore-review/
高いレビューをつけているユーザーは日常的にアプリを使ってくれる・購買行動にもつながっている “良い関係を築けている顧客” が多いといえます。アプリ事業では、ダウンロード数も重要ですが継続率、星5つや4つのレビューをつけてくれるユーザーの数や割合も事業の利益に直結します。
POINT 1. App Store や Google Play のレビューは、「アプリを使っている真っ最中」に生まれる
一般的なアンケート調査では、「◯◯ というアプリは使いやすいと思うか」という質問に対して「とてもそう思う」〜「全然そうだと思わない」の 5 段階で答える場合、1 や 5 を選ぶ人はごく少数です。
しかし、たとえば自分が使っている iOS/Android アプリのレビュー欄を見ても、面白いことに、強い言葉とともに星 1 つや 5 つをつけるユーザーがたくさんいると感じることはありませんか?
事前に予告されて実施するアンケート調査とは異なり、スマホアプリのレビューは締め切りもなく、書くタイミングがユーザーの判断に委ねられます。つまり、レビューを投稿したユーザーは、アプリを使っている最中に何か「レビューを書こう」と思うきっかけを得た場合が多いのです。
そして、アプリを使っているユーザーのきっかけの多くは、ポジティブな内容よりは「重い」「使いづらい」「クラッシュ・フリーズして使えない」「お金のやりとりが反映されていない」といったネガティブなものが多いのです。
ユーザーはどのようなときにレビューを投稿するのか。すごく多いのが「ポジティブな体験をしたあと」と「ネガティブな体験をしたあと」なのだとか。
「ネガティブな体験をしたあと」には、65%の人が(低評価の)レビューを書くことを考え、「ポジティブな体験をしたあと」には、49%の人が(高評価の)レビューを書くことを考える。
引用:http://appmarketinglabo.net/appstore-review/
POINT 2. iOS/Android アプリ開発の「やりがちなミス」を潰していくことで、レビューの平均点数を改善する
もちろん、ユーザー各自がイメージしている挙動と実際の仕様を 100% 一致させることはできないので、ある程度は「思っていたのと違う」「使いづらい」といった低評価のレビューがつくことは避けられません。
しかし、事前に対策しておくことで、“負の遺産” となる不満をある程度は減らすことが可能です。
低評価を防ぐには、「とりあえず」の安価な開発は危険
一般的に、ユーザーが iOS/Android アプリを継続的に使うかどうか判断する基準は、「初めてアプリを起動したとき」の影響が大きい です。
ですので、初回起動時に
- 動作が重い
- クラッシュした
- 何のメリットがあるアプリなのか伝わらない
- やりたいことがどの画面からできるのかわからない
- ログイン/新規会員登録が面倒、パスワードを忘れたなど
といった経験を減らすことが非常に重要です。
対策としては、設計あるいは開発のフェーズで「知見のある開発者やベンダーの力を借りる」ことが一番です。iOS/Android アプリの開発・運用経験が豊富な企業は、「アプリを公開する前に必ず確認・テストすべきこと」を認識しているので、初歩的なミスを防ぐことができます。
自社で開発・運用する体制を整えるか、外注するか、既存のサービスを使って初期費用を抑えるか、それぞれのメリットは下記の記事も参考になるかと思います。
アプリ内メッセージなどでレビューを促進することも大事
アプリストアでの自社の見え方を良い方向に維持するためには、高評価のレビューを増やすことも重要です。
前述のように、ポジティブな気持ちを抱いてくれたユーザーは「不満を書きたい」ユーザーよりもレビューを書いてもらいづらいので、アプリからポップアップを出すなど工夫する必要があります。
満足している人は「ああ楽しかった」でなにも言わずにゲームを終わる。だから、レビュー誘導をしないと評価が下がるんですよね。
実際、レビューへの誘導画面は、ゲームのデザインに合わせてつくって、ストアに遷移するようにしたら、★3.5は超えるようになりました。
引用:https://markelabo.com/n/ne07b3940b918
どんなアクションを完了したタイミングであればユーザーが高評価のレビューを書いてくれるかという傾向を(仮説→検証の繰り返しで)掴み、平均点を押し上げるための仕組みを構築することも重要になります。
また、「アンチに丁寧に対応するとファンになってくれる場合がある」という傾向を生かし、ストアのコメントや問い合わせに丁寧に返信するというカスタマーサポートの施策も有効なケースがあります。
POINT 3. ひどいレビューが多いときに現在のアプリを見直すべき手順
まずは
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体制/組織の課題(取り組みやすい)
- 運用が回っておらず、顧客に十分な訴求ができていない
- ツールの使い方の教育がされていない
- アプリの目的/役割が現場に伝わっていない
- どんな指標を追い、そのためにどんな施策をすればいいのかわからない など
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システムの課題
- 機能が足りない
- 動作速度・動作の安定性に問題がある
- 管理画面が使いづらい など
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文化の課題(解決が難しい)
- アプリの「成果」を正しく評価・認識してもらえないので、現場スタッフからすると運用するメリットがない
- 部署間で利益が相反するため、社内がアプリに協力的ではない(EC など)
に分解することをおすすめします。
解決の難易度が低い 1 の課題から順に着手するほうが、改善はスムーズに進みます。
1 の課題に対しては、知識をつけて体制を整えるために地道に労力と時間を割くことに尽きます。もし「必要な機能はシステムにインストールされているが、現場で運用できていない」ことが原因であれば、運用体制を改善するだけでアプリの評価は少しずつ改善していけます。
とはいえ、現行のシステムの品質自体が低いという場合は、やはりリニューアル・作り直しも視野に入ってきます。
そうなった場合は、社内である程度「今のツールの課題」「乗り換える際の優先事項」を整理しておくと、社内の開発チームや社外のベンダーとの打ち合わせがスムーズに進みます。
まとめ:iOS/Android アプリで避けては通れないレビュー点数との付き合い方
- アプリストアのレビューが低いと、集客のためのマーケティング施策にも悪影響
- アプリを使っていて不快な思いをした際には低評価のコメントが投稿されやすい
- 高評価のレビューは待っていても貯まりづらいので、工夫も必要
- Google Play や App Store にひどいレビューがついてしまったときは、ある程度の労力を割いて地道に対応することが一番
- 「未経験者がやりがちな失敗」を防ぐには経験者の知恵を借りるのが早い
我々は制作会社だからこそ、業界全体として「アプリは使いづらい」「Web サイトのほうがいい」と思われてしまうような失敗例を減らしたいと考えています。
アプリ開発を検討する中で不安なことがある場合、現状のアプリに対する疑問がある場合などは、ぜひお気軽にご相談ください。
- 「組織体制も変わったし、ここで一旦仕切り直そう」
- 「いまいち戦略や目的がハッキリしていないから、見直したい」
といった状況にある方へ向けて、現在のアプリ事業を見直す際にチェックしたいポイントと手順を紹介したお役立ち資料を公開しています。