【アプリ事業を始める前に】失敗事例のパターンを学び、想定外のトラブルを防ぐ

モバイル経由でのアクセスが増えている時代、iOS/Android アプリを始めたいという企業様からのご相談は年々増えています。

しかし、アプリの開発/発注および社内運用に関しては社内に知見が乏しいという声も多く、事業を始めてから想定外のトラブルに見舞われるというリスクもあります。

アプリ事業が失敗してしまうパターンは、大きく分けて下記の 2 つです。

  1. アプリ運用・開発およびアプリそのものに関する知識の不足
  2. 開発または社外発注時の要件定義におけるトラブル(仕様の抜け・漏れ・曖昧およびベンダーの選定)

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要件定義も重要ですが、まずは iOS/Android のシステムとアプリ運用について正しく理解し、適切な人材・リソースを配分することから始まります。

そこで、本記事ではアプリ事業で失敗しないために知っておきたい4点をご紹介します。

また、「役割」「予算の組み方」に関する入門記事もあわせてご覧いただけますとより理解が深まります。

参考:

アプリ事業そのものの考え方と事業計画への落とし込み

大まかな役割分担としては

  • 他社のプラットフォーム:認知拡大・新規顧客の獲得
  • 自社の Web:新規顧客の接客・印象付け
  • 自社のアプリ:既存顧客の訪問頻度および単価等の向上

となり、iOS/Android アプリは既存顧客に好感を持ってもらい、ブランドのファンになってもらうための役割を担うことが多いです。

一方で、

  • iOS, Android の OS アップデート、および古い機能のサポート打ち切りに対応するためのシステム保守
  • プッシュ通知を使うための証明書の更新・管理
  • 継続的にインストール数やアクティブユーザーを増やすための PR・マーケティング施策

と、事業を推進する上でかかる費用と人的リソースは、Web/SNS 運用に比べて大きくなります。

ですので、iOS/Android アプリ事業を始める際は、ある程度の支出を想定しながらそれ以上の売上を立てるための施策を考えることになります。

十分な予算やリソースが割けない場合、かつ企画しているアプリが効果測定の難しい CRM(顧客管理)やブランディング色の強いものである場合は、LINE や Instagram などのプラットフォームのほうが適している場合もあります。

参考:

Web などの運用経験が生きる箇所、生きない箇所

アプリ事業においても、コンテンツを更新していく上では社内の Web/SNS の運用経験者が、アプリのデザイン・画面設計を考える上では社内のデザイナーの知見が生きることもあります。

とはいえ、iOS/Android アプリの運用・設計ではアプリならではのセオリーも存在します。

設計においては、紙や Web のフォーマットでデザイン指示書を用意しても技術的に実現できないという事態が起こる可能性があります。また、アプリは複数の画面を遷移して目的のページに到達およびアクションを起こしてもらうことがゴールなので、開発チームとの意思疎通が Web に比べて難しいという面もあります。

運用面においては、「休眠・復帰率」「ARPU」など、Web サイトおよびメディアではあまり馴染みのない指標が KPI として設定されることが多いです。

このように、社内のメンバーを巻き込んでアプリ事業を推進する場合は、その知見を活かしつつも最低限の知識を共有しておくことが重要になります。

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アプリ事業の KPI の考え方

アメリカでネイティブアプリの成功事例としてよく取り上げられている企業といえばバーガーキングが挙げられますが、彼らは成果を見るための評価指標を徹底的に考えています。

最近ではアプリ事業に関わらず評価の精度を高めていこうという流れで Google 発祥の OKR をよく聞くようになりましたが、アメリカでは KPI を考えるための NSM というフレームワークも普及しているようです。

■ 「Wapper Detour (寄り道ワッパー)」キャンペーンが、このような驚きの効果を得た主な理由に以下があります。

(1) 行動ターゲティングを行った事
一般的にターゲティングはデモグラで行いますが、バーガーキングは「ユーザー行動」でターゲティングを行いました。これにより効果の高いキャンペーン成果を得る事ができました。

(2) ノーススターメトリック (NSM) による指標設計
NSM フレームワークで設計した指標でキャンペーンの効果測定を行いました。NSM により、グロース運用に向けた KPI を設計する事ができ、ビジネス成長に向けた次の一手を早急に決定できるようになりました。
出典:https://note.com/amplitude/n/n403ce7d7d7b0

ここで重要なことは NSM という新たなワード・概念自体ではなく、彼らがいう 「KPI を考える際に(UU 数など事業者目線の数値ではなく)ユーザーエンゲージメントの評価を入れる」 ということです。

バーガーキングの場合は、高コストなアプリ事業を継続するための “売上” という絶対的な KGI を達成するために

  • アプリから発行されたクーポンをタップして注文した数
  • アプリ起動に伴うキャンペーン登録率
  • 初回注文後の再訪率
  • フリクションレスペイメントの向上

という KPI を設定しているとのこと。

もとよりアプリ事業においては「UU よりも AU (DAU/MAU) や LTV が重要」と言われてきましたが、単発イベントによる上下などノイズが多くなるという課題もありました。

バーガーキングの手法が絶対的に正しいというわけではありません。ただ、アクティブなユーザー数を KPI にするあまり大量の広告を投下したものの、UI やコンテンツに問題があって定着率が低くなり、「穴のあいたバケツに水を注ぎ続けている状態」になるといった悲劇も、他人事に感じられない人は多いのではないでしょうか。

少なくとも「ユーザーエンゲージメントを高く保つことで売上(KGI)が安定する」という考え方には見習うことが多そうです。

アプリ事業をやる上で効率化できる部分と注力すべき部分

iOS/Android アプリの必要性は理解されても、“お試し” で事業を立ち上げた際には専任の担当者が置きづらいという声も少なくありません。

リソースと予算が限られている中ではやりたいことをすべて実行するのは難しいため、投資対効果が高い業務に注力することが重要になります。

一般的に、アプリ事業では

  • アプリ内コンテンツの自社での更新はシステムや設計で効率化
  • アクティブユーザーを増やす PUSH 配信、離脱率・休眠率を下げるアプリ内メッセージやチュートリアル改善を優先

という考え方になります。視点を変えると、

  1. ユーザーが定着しない、再訪しない原因を特定(仮説を立てる)
  2. 全ユーザー対象の施策(コンテンツの更新)よりも個別のユーザーに最適化した施策(PUSH 配信、レコメンド、アプリ内誘導)で解決

という流れで、運用する担当者のリソースや保守・追加施策の予算を配分していくことになります。

「プッシュ通知があればどうにかなる」 “押し売り運用” の失敗

アプリ事業における PUSH 配信には

  • 上手く使えば売上や KPI 達成のために大きな効果をもたらす
  • 頻度が高いと PUSH の許諾率やストアのレビュー平均点が下がることもありますが、ただちに売上に影響があるとは限らない
  • ただし、“やりすぎた” 場合はアプリとしてのリカバリが難しくなる

という傾向があります。

プッシュ通知ではなく “Web 広告” 全体としての調査ですが、株式会社Macbee Planet 調べでは、ユーザーの約 90% は Web 広告というものを「好ましくない、表示してほしくない」と思っています。

ただし、40 %のユーザーは「興味がある内容ならばクリックする」と回答しています。ここから、「有益な情報が手に入るならばプッシュ通知を注視する」というユーザー心理が推測できます。

※EC アプリのプッシュ通知の許諾率もおよそ 40〜50% となっています

よって、iOS/Android アプリというものが Web に比べて「狭く、深く」であるものである以上、PUSH 配信は細かく数値を見ながらうまく付き合っていくことが重要になります。

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参考

「業界の定番」「競合と同じ機能」のアプリが自社でそのまま使えるか?

事業を始める上で、まずは「先行して成功している企業はどんなアプリをつくっているのか」という研究は欠かせません。

その一方で、「自社に必要なアプリはどんなものか」という視点も重要になります。

ほとんどの iOS/Android アプリは、単体で運用するというよりは実店舗や Web などと連動して運用することになります。つまり、アプリを自社の業務フローの中に落とし込む必要があるのです。

たとえば、アパレル業界ではよく BEAMS がオムニチャネル戦略の成功事例として挙げられてきました。

BEAMS は自社アプリで

  • 各店舗のスタッフがコーディネート例などを投稿
  • ブランドサイトと EC サイトを統合し、該当商品の詳細&購入ページに 1 タップで購入可能
  • スタッフの投稿経由での売上をある程度可視化
  • 商品が気になった顧客やスタッフのファンになった顧客はアプリから来店予約(試着や相談)が可能

という取り組みをはじめ、EC という事業の売上数十億円の約 6 割をスタッフの投稿から生み出すという成果をあげました。店舗スタッフにファンがつくことで来店数も増えたそうです。

しかし、これらはアパレル企業すべてに当てはまる「アプリの勝ちパターン」とは言い切れません。

主なターゲット顧客や自社のスタッフの属性、業務フローなどが異なる場合、「スタッフが思うようにコンテンツを投稿してくれない」「コーディネート写真や動画が顧客にあまり求められていない」「アプリ経由での売上を評価する制度がうまく設計できない」といった課題が発生することもあります。

コーポレートサイトやECサイトをリニューアルする企業が、ビームスのサイトを参考にするケースが増えているんですよ。なかには「ビームスのやっていることをそのままやりたい」っていう企業もありますからね。僕は、そういう企業に「ビームスを真似したら大変なことになりますよ」と言っています。
引用:https://netshop.impress.co.jp/node/5249

また、時代に応じてアプリやコンテンツの流行、顧客の行動パターンおよび支持されやすい UI/UX も変わってきます。

業界の定番や競合の分析からアプリの企画をある程度考えるのは重要ですが、運用開始後に顧客の反応や自社の運用体制を見てアップデートしていく という意識もアプリ事業には欠かせません。