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App Clipsとは? できることと、PWA、LINEミニアプリなどとの違いも理解しておこう

アプリのメリット/できること
2022.06.14
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    ※本記事は BizDev 向けです

    イチ企業が iOS/Android アプリをリリースしても、ユーザーにダウンロードしてもらうには意外に労力やコストがかかります。

    そんな普遍的な課題に対して、Apple は iOS 14 で「App Clips」を提案しました。

    App Clips (Apple developer Documentation)

    iOS16 では Google が主導する PWA に対して Apple がついにプッシュ通知に対応したことで、むしろそちらが盛り上がっています。

    とはいえ、「PWA」「App Clips」などはアプリの周辺領域として全体を理解しておいたほうが良いもので。そこで、本記事では BizDev の方が知っておきたい内容をまとめています。

    1. App Clips とは?どんなメリットがあるのか

    App Clips は、iOS アプリの任意の機能を、本体をダウンロードする前に “お試しで” 実行できる状態に加工する技術です。

    プッシュ通知は使えますが、複雑なものは作れず、15MB 以内に抑える必要があります。Database は Public のみ、Keychain はローカルのみという制限もあります。

    具体的には「カフェでの事前注文&決済」「レンタルサイクルの貸し出し処理」「美術館で解説を聞きたい作品の音声呼び出し」などのユースケースが提案されています。

    「新規顧客にいきなりアプリをインストールしてもらうのは難しい」という課題に対するアプローチのため、PWA のようにホーム画面にアイコンは作れず、あくまでお試し版という位置づけです。類似サービスとしては LINE ミニアプリに近いといえます。

    • Web アプリ = Web ブラウザ上で情報を見せるだけでなく、さまざまな機能を利用できるアプリケーション。インストールしなくても使えるが、顧客自身の端末にインストール(ショートカット作成)することも可能
    • PWA (Progressive な Web Apps) = よりネイティブアプリらしい UX を提供する Web アプリ
    • App Clips = iOS アプリをインストールしてもらうために Web 上で動作させている、ネイティブアプリの一部分(機能) ※スマホアプリが必須
    • LINE ミニアプリ = LINE の中でネイティブアプリに近い機能を提供できる Web アプリ

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    1-2. iOS 16 以降の Apple の対応

    Web PUSH への対応を発表した PWA に比べると、App Clips に関して劇的なアップデートはありません。

    • 容量を 10MB → 15MB に
    • Live Activities をサポート
    • マップ上の情報カードに紐づけて App Clips を登録すると、各ユーザーの Spotlight や Siri のウィジェットから位置情報に基づいておすすめされるように

    参考:What's new in App Clips (WWDC2022)

    2. App Clips を使うユーザー視点での流れ

    App Clips の起動フローは

    1. ユーザーが特定の URL を呼び出す(該当する機能 / 場所 / 機材・作品など)
    2. URL に紐づいたカード型のフロントページが表示される
    3. ユーザーが承諾した場合は、アクションボタンをタップする
    4. App Clip が起動する

    となっており、まずユーザーが App Clips を発見するためには

    • URL のタップ(Web サイト上のスマートアプリバナー、メッセージアプリで共有されるリンク、位置情報に基づく Siri からのサジェストなど)
    • NFC タグを読む
    • QR コードのスキャン

    のいずれかがトリガーとなります。

    また、App Clips はあくまで iOS アプリ本体の周辺領域なので、起動時には

    • ネイティブアプリも App Clips も DL されていない場合:App Clip を DL して開く
    • 該当する App Clip を一度利用している場合:App Clip をすぐに開く(※)
    • ネイティブアプリがインストールされている場合:アプリを優先して開く

    という分岐があります。App Clip で指定したタスクを完了した場合や複数回起動された際にはオーバーレイを提示し、本体の iOS アプリに誘導することも可能です。

    ※ DL 後の一定期間は端末のローカルに保存され、期間後に自動で削除される

    参考:

    2-1. App Clip は複数、かつ店舗や物品ごとにつけられる

    1 つのネイティブアプリに対しては複数の機能を App Clips 化することができ、それぞれに URL を割り当てることで「App Clip Experience」として管理できます。

    たとえば、カフェの iOS アプリに対して

    • 事前注文する(/order)
    • 席を予約する(/reserve)

    という 2 つの機能を App Clips Experience として用意しておくことができます。

    さらに複数の店舗をもつ企業の場合は

    • 渋谷店(/store/shibuya)
    • 新宿店(/store/shinjuku)
    • 千葉店(/store/chiba)

    と、複数の店舗に URL を割り当てることもできます。店舗ごとに固有の URL を割り当てることで、別の体験を設定することができます。

    また、上記のようなパラメータとしての使い方では、レンタルサイクルの貸し出しを行うための App Clips Experience(/rent)を

    • 1 号車を貸し出す(/rent?bikeID=1)
    • 2 号車を貸し出す(/rent?bikeID=2)
    • 3 号車を貸し出す(/rent?bikeID=3)

    というように、機材(ごとに装着した NFC タグ)に紐づけて処理できます。

    参考:https://developer.apple.com/videos/play/wwdc2020/10146/

    2-2. App Clip Experience ごとに設定できる「Card(フロントページ)」

    App Clip Experience の URL の割り当てと、URL ごとのデザイン・機能の設定は App Store Connect 上で行います。

    App Clips が呼び出されると、起動した際にカード型のページとして表示されます。

    img 出典:https://developer.apple.com/videos/play/wwdc2020/10146

    項目は

    • header イメージ画像
    • タイトル(18 字まで)
    • ディスクリプション(43 字まで)
    • アクション(View・Play・Open の 3 種類から選択)

    を指定します。

    また、実際の画面ではその下にネイティブアプリの紹介と App Store へのリンクが広告のように表示されます(あくまでネイティブアプリが本体であるため)。

    2-3. ソースコードの管理はしやすい

    App Clips は本体アプリと同じコードで管理できるため、開発面での準備はさほど負荷がかかりません。

    そのため、iOS 限定とはいえ「お試しで」作ってみることはできるといえます。

    参考:App Clipをざっくり把握しよう WWDC20報告会

    3. App Clips でできること

    Apple の公式ドキュメントでは、「App Clips はあくまで迅速にタスクを処理するものなので、複雑なことはフルアプリでやったほうがいい」と記述されています。

    具体的には

    • App extensions
    • In-app purchases

    など、そもそも App Clips では想定されていない機能も多く記されています。

    参考:Choosing the right functionality for your App Clip

    ※飲食店のモバイルオーダーなど、買い切り(入金)は問題なし

    3-1. プッシュ通知は制限あり

    UX を考えると、

    • 事前に注文した商品が完成した(引き取り可の状態になった)際
    • 借りた車両の返却期限が迫っている際

    などにはプッシュ通知を配信したいところです。

    デフォルトでは起動後 8 時間までの間にしかプッシュ通知を配信できず、もっと後に配信したい場合はユーザーに許諾を取る必要があります。ポップアップは通常の iOS アプリのものと同様です。

    さらに、ユーザーが通知を拒否した場合、App Clips 上でのデフォルトの(8 時間以内の)通知も無視されると書かれており、「本当に無制限の通知の許諾が必要か」は要検討といえます。

    If your app clip’s functionality spans more than a day, explicitly request the user’s permission to send notifications.

    However, carefully consider whether you should ask for this permission. Users could deny the request, overriding the app clip’s ability to receive and schedule notifications for up to 8 hours after each launch.

    出典:Enabling notifications in App Clips

    3-2. ユーザー認証(ログイン・決済)は Apple の規格を推奨

    App Clips 上では一つの機能をスピーディに実行してもらうことを求められるので、独自 ID を取得してログインする行為は推奨されていません。

    公式ドキュメントでも「もしユーザー登録必須の機能を実行させたい場合は、Sign in with Apple のように限られた情報量で(≒すぐに)ログインできるように」「アカウント作成をさせたい場合はタスクの完了後に」と書かれています。

    Avoid requiring people to create an account before they can benefit from your app clip. Creating an account is a complex task that takes time and effort. Consider not requiring an account, or think about asking people to create an account after they finish a task. If your app clip requires an account to provide value, limit the amount of information people need to provide; for example, by offering Sign in with Apple.

    出典:App Clips (Apple Developper)

    また、ユーザーがネイティブアプリ本体をインストールしてから App Clips を開こうとするとアプリ本体が優先されますが、その際にも再度(新しく)ログインさせないようにと書かれています。

    ここからは、Apple が「iOS アプリとは、Apple アカウントでログインし、Apple Pay で決済することが最もユーザーにとってストレスのない UX である」と提案していることが伺えます。

    まとめ:PWA の Google、Apple の App Clips、そして LINE のミニアプリ展開

    img

    Google は 2017 年に App Clips と似た「Instant Apps」を提供し始めました。ただ、あまり普及しているとはいえず、その後はむしろ PWA に力を入れている印象があります(アプリベース→Web ベースへのシフト)。

    今や、Apple の App Clips は「アプリの一部を Web で公開し、アプリの DL を促進する」路線で、Google の PWA は「Web 全体をアプリのように見せて UX を向上させる」と、対照的なアプローチになっています。

    結果的に、iOS と Android で共通のメリットや UX を提供することが難しくなっていることが PWA/App Clips 双方にとってネックになっています。

    App Clips の事例は今後増えてくるのか?

    有名な事例でいえば

    などがあげられていますが、未だに数は多くありません。

    App Clips を企画する際にネックになるのは、ユーザーに(アプリを使ってもらうために)「App Clips でなければ提供できない価値」を提供できるかという視点です。

    単に決済をするだけならば決済アプリを使えばいいので、「レストランのテーブルで NFC タグをスキャンして食事代を支払う」という例には疑問符がつきます。

    Coke ON では、App Clips(体験版)で貯めたスタンプは本体の iOS アプリをダウンロードすることで引き継がれる仕様になっています。このように、大きな事業としてアプリを展開する際にユーザーのダウンロードを促進する施策の一貫として配布するのが、現状では最も可能性がある使い方かもしれません。

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