審査不要で社内の業務用iPhone/iPadアプリを開発できる「Apple Developer Enterprise Program」の特徴と注意すべきポイント

iOS アプリを開発するには、App Store での一般公開だけでなく実機で検証する時点でも Apple 社の認証が必要になります。

開発者として Apple 社に登録申請を行うのが「Apple Developer Program(旧・iOS Developer Program)」ですが、スタンダードなプラン以外にも “Enterprise” というプランが存在します。

ADEP (Enterprise Program) は、

  • 電子マニュアル(テキスト+動画)
  • 勤怠管理
  • 各地を走る輸送車両の管理
  • 商談情報の管理(クローズドな SFA・CRM)

といったクローズドな業務アプリを開発し、社員に iPhone/iPad を配布して利用してもらうためのプランです。今回は意外に知られていない Enterprise プランの特徴や通常プランの違い、注意点などをまとめました。

通常の Developper Program との違い

規約として社外配布が不可=あくまで社内の業務改善を行う iPhone/iPad アプリでなければならない

iOS アプリの証明書には

  • 開発用 (Development)
  • テスト用 (AdHoc)
  • 社内限定 (In-house)
  • 一般公開 (App Store)

の 4 種類が存在します。この中で業務アプリに必要な “In-house” 証明書は、Enterprise プランでなければ利用できません

逆に Enterprise では App Store 公開=開発した業務アプリの社外配布によって利益につなげることができません。 過去に ADEP で開発したアプリを一般公開したものが広く普及したケースもありましたが、最終的には規約違反として削除という結末を迎えました。

参考;ある規約違反 iOS アプリが削除されるまでの4日間

App Store を介さないため、審査不要ですぐに社内配布できる

また、App Store に申請する際のような審査が不要なので、社内でのテストが終わればすぐに全社に公開・配布することができます。

App Store で管理される通常の iOS アプリでは審査基準があり、iOS 開発に慣れていないうちはリジェクトされることも少なくありません。ですが Enterprise であれば “作法” に沿っていない部分などがあってもそのまま社内で利用することができます(とはいえセキュリティ面には注意しましょう)。

登録申請できるのは法人のみ

通常の Developer Program では個人事業主でも登録できますが、Enterprise プランはクローズドな業務アプリを想定しているため、申請できるのは法人のみです。
小規模な企業・システムであっても個人の開発者に委託することは基本的にできません。

また、法人での登録の際は D-U-N-S Number というデータが必要になります(※後述)。

Apple Developer Enterprise Program で業務アプリを開発・運用するメリット

セキュリティ面で信頼できる

iOS Developer Enterprise を使うことで、ソースコードを公開する Web アプリ、App Store で配布する通常の iOS アプリとは異なり、自社の中だけで業務アプリを公開することが可能になります。

各端末を業務アプリしか起動できない “Single App Mode” にすることで、従業員の個人的な行動(危険な Web サイトの閲覧・メールの不審な添付ファイルのクリックなど)による情報漏洩を防ぐこともできます。

また、オープンソース戦略をとっている Android に比べて iOS はセキュリティを重視しているので、業務アプリで重要な顧客情報・個人情報などを扱う場合は単純に iPhone/iPad を利用することがセキュリティ施策の一貫になります。

台数無制限で、各社員(業務用の iPhone/iPad)に配布しやすい

Enterprise では台数に制限はありません。社員数が多くても端末さえ購入すれば全員に業務アプリを配布することができます。

社内サーバに配布用ページを立て、各端末でインストールさえすれば、事前にシステム管理者が利用端末をすべて登録するという手間もかかりません。

SaaS を複数利用したときの料金より安価になる場合も

通常の DeveloperProgram では年間 11,800 円(税抜)ですが、Enterprise では一定以上の規模の法人を想定しているため、年間 37,800円(税抜)になります。

Apple Developer Enterprise Program で社内アプリを構築する場合、コストとしては年間 37,800 円+社内の開発チームの人件費(+サーバー料金など諸経費)です。

もちろん大規模なシステムを構築する開発チームを自社で抱える場合はそれなりの投資が必要になりますが、社外の SaaS で自社の要件を満たすオプションを利用するとライセンス料金が大幅に上がってしまうケースもあります。

そういったコスト面を考えると、社内システムの構築・運用の際は自社で行うことも選択肢の一つになります。

Apple Developer Enterprise Program で業務アプリを開発する注意点(iOS アプリ開発の基本的なポイントです)

開発〜配布の流れは

  1. 開発したアプリを Xcode から ipa ファイルとして出力
  2. 社内サーバ(※ SSL 化が必須です)で公開
  3. リンクをクリックし、各端末にインストール

となります。Apple 社がセキュリティを重視するゆえにハマりがちなポイントもあるので、いくつか解説していきます。

Duns Number の取得

法人で iOS Developer Program を利用する場合、D-U-N-S Number を取得する必要があります。

DunsNumber は Apple DeveloperProgram のために割り当てられた番号ではなく、企業の識別情報として広く利用されているものです。業務アプリを開発する規模の企業の場合はすでに登録されている場合もあるので、新規取得が不要の場合もあります。

これから申請する際は下記の記事をご覧ください。

参考:【保存版】Apple DeveloperProgram 申請・登録方法と更新の流れ(法人の手順もあり)

複数人で iOS アプリを開発する際は “1 台目の Mac” で発行した証明書を共有していく

大人数で利用する業務アプリとなると、複数名のチームで開発することになります。
Enterprise でも通常の iPhone/iPad アプリ開発と同様に、複数名で開発する際は 1 台目の Mac(責任者の端末など)で p12 ファイルを作成し、各開発者の端末のキーチェーンに登録していく必要があります。

この手順に不明点がある場合、管理者の端末がわからない場合などは下記の記事をご覧ください。

参考:複数台のMacで実機テストを行なう方法(1台目が使えない・わからない場合の方法含む)

手動で、iPhone/iPad(Apple)にアプリ開発元(自社)を信頼させる設定

社内で用意した各端末に手動でアプリをインストールした場合、iOS ではまだ起動することができません。セキュリティを重視している iPhone/iPad では、Apple 以外が提供している(App Store で審査を通過していない)アプリは開くことができないシステムになっています。

業務アプリをモバイルデバイス管理 (MDM) でインストールした場合は対応が不要なので、Apple 社は MDM を推奨しています。

参考:iOS でカスタムのエンタープライズ App をインストールする(Apple 公式サイト)

手動で対応する場合、まずは iPhone/iPad の「設定」>「一般」>「プロファイル」または「プロファイルとデバイス管理」の順にタップし、「エンタープライズ App」という見出しの下に表示されている自社のラベルをタップして証明するという事前対応が必要です。一度設定をすれば、次に同じ社内で新しい業務アプリを開発してインストールする際には不要です。

注意点としては、Apple 社が定期的に通信をして証明を維持するため、オフラインで利用する業務アプリであっても、各端末をインターネットに接続しておく必要があります。 社内でのセキュリティ施策としてファイアウォールを使っている場合は、”https://ppq.apple.com” への接続を許可するように設定しておいてください。

アプリ配布用のサーバーは https: でなければならない(SSL 化必須)

iOS7.1(2016 年)から、iOS アプリを配布するサーバーは SSL 化が必須になりました。

イントラネットを使う場合は SSL証明書の取得が難しく、自己証明書を利用する際も各端末にプロファイルをインストールするといった対応が必要になることには注意が必要です。

参考:イントラネットでiOSアプリをEnterprise配布するときに気をつけたい3つのこと(株式会社アイソルート)

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