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アパレル業界で企業アプリを開発するメリットとは?制作会社が考える、販売経路を広げる・強くするためのポイント

アプリのメリット/できること
2020.06.21
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    ディレクターの高橋です。

    先日、副業のほうでアパレル経営者の方々の座談会を取材しまして、記事コンテンツを制作しました。newspicks ではアパレル業界の方やブランド立ち上げ経験者の方からのコメントも集まりました。

    業界の理解を深めることができたので、Web やアプリの制作者としてもプラスになると思います。

    経営者 x 会計士 鼎談「アパレルブランド経営」の魅力と現実

    再注目される「D2C」による小規模販売と、大量生産によるコストダウンの二極化?

    オムニチャンネルや O2O という概念は数年前から浸透しており、アパレル業界といえばすでに Web(EC)を活用した販促に注力されている企業が多い状況です。

    しかし、経営者の方々いはく「アパレルブランドを立ち上げて数年間続けるのは、Web サービスや iOS/Android アプリよりも難しいのではないか」とのこと。聞けば、展示会に出すためのサンプルづくりや在庫管理など、1 年どころか 1 シーズンで企業のキャッシュ・フローを削っていく要素がたくさんあることを教えていただきました。

    立ち上げてから数年は小ロットでの生産になり、コストが高くつきがちなので、D2C モデルなどで販管費を抑えつつ売上を最大化できるように工夫することが鍵になります。一方、大企業になるとある程度のロットを生産することで原価を抑えられますが、その分顧客対応や競争が難しくなるので、施策として求められるものも変わってきます。

    前置きが長くなりましたが、Web/App のディレクターが改めて感じたことは、「アパレル業界のスマホアプリ施策は、ブランドのステージによって大きく二つに分かれる」ということです。中小企業と大企業でアプリ施策に求められるものが異なるのは当然ですが、アパレル業界では他業種のような中間層・グラデーションがほぼ存在しないと考えられます。

    スモールビジネスのアパレルアプリは現状「LINE の代替」、理想は「実店舗の代替」?

    今 D2C モデルが再注目されているのは、Instagram や note などを使ったストーリー重視のマーケティングが若年層に効果的なことで、新規顧客の獲得を(従来のような展示会ベースから)オンラインにシフトする動きが背景にあるそうです。実店舗への依存度を下げることで人通りの多い/アクセスの良い場所=家賃の高い場所で物件を探す必要がなくなり、資金繰りは楽になります。

    iPhone/Android アプリ上で新作発表や直接販売を行なうことで、デジタルストアという形で店舗に近いプラットフォームを持つことも可能になります。

    参考;インスタグラムにアプリ上で商品を購入できる新機能、ユニクロやディオールが導入

    とはいえ、メディアコマース自体はここ 5 年ほどずっと注目されてきました。そして「記事や動画を見たい気分」と「買い物をしたい気分」はタイミングが違う(シームレスでもない)ので理論上ほどうまくいかなかったという背景があります。Web メディアより没入度の高い Instagram でどうなるかは興味深い施策といえます。

    スマホアプリを制作する上で必要なコンテンツ

    アパレルアプリの役割としては、大きく分けて顧客管理(CRM)と販売(EC)に分かれます。小売業の中では実店舗での接客に力を入れている場合もありますが、服飾品であれば EC をやる会社は多くなる印象です。

    アパレル業界の場合、プッシュ通知(新作・セール品の案内)がユーザーから “期待されている”、つまりお得情報を目的としてインストールし、プッシュ通知を受け取る設定にしているユーザーが多くなります。 この傾向によって、ある程度の品質のアプリを開発し、うまく運用することで、店舗への来訪・再訪や EC 経由での売上を伸ばすことは可能です。

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    世界観・ブランディングが重要であるアパレル業界の泣き所は、既存顧客のリピート促進施策として有力な LINE 公式アカウント(旧・LINE@)が使いづらいことでしょう。つまりアパレル業界では、“ダサくない” 程度の雰囲気で、メルマガ以上に開封されるメッセージを配信できるというメリットによって、(パッケージサービスを使って最初は安価に)アプリを開発した企業が多いのではないでしょうか。

    ですので、立ち上げ期に近い企業の傾向としてはさほどコンテンツに違いはなく、ログイン/ログアウトや SNS より賢いプッシュ通知の配信、位置情報や決済など基本的なものになっています。

    「パッケージを比較してとりあえず導入」の動きはすでに落ち着き始めた

    iOS/Android アプリを安価に開発できるというサービスは数多くありますが、yappli 社はその筆頭といえました。

    ただ、「テンプレートの中で自分たちが好きなものを選べば(プログラミング不要で)iOS/Android アプリが制作できる」というパッケージサービスは、多くの企業から「自力ではなかなか難しい」というフィードバックがあったそうです。

    庵原:「君たちのアプリ、全然簡単じゃないよ」と指摘をいただき、ハッと気がつきました──中小企業にオンラインで自発的に使ってもらえるようなサービスではなかったのだと。そこで、断腸の思いでセルフサーブをやめることにしたんです。
    引用:https://www.fastgrow.jp/articles/yappli-ihara

    そして中小ブランドほど資金繰りがシビアで、人的リソースを割くことは難しい状況。スマホアプリを開発しても

    • コンテンツやデザインの更新
    • 新規会員の獲得(最初は実店舗での案内がメイン)
    • 既存会員へのメッセージ配信(新作/セール等)

    と、やることは少なくありません。

    そもそも、実店舗への依存度が低ければ CRM のために iOS/Android アプリを開発する意味は薄いですし、そもそもの売上規模が小さいうちは EC アプリを開発しても(EC 経由で伸びた売上以上の人的コストがかかる場合などがあり)メリットを享受しきれません。

    テンプレート(SaaS)のデメリットは「競合と同じようなものになってしまう」こと

    ある程度の予算をかけて CRM や EC アプリを開発する上では、先行者の模倣だけでなく “差別化” が重要になります。

    中小事業者にも裾野を広げたパッケージアプリは(Web も同様ですが)どうしても最終的なアウトプットが似てくるので、「外注で開発してみたら競合他社とほぼ同じようなものになった」ということにもなりえます。 WordPress で制作されたブログメディア、Wix やペライチで制作されたサイトを見ればイメージはつくと思います。

    もちろん “成功するアプリの共通点” という意味では、今や AI による最適化などもありますので、UI/UX がある程度似てくることは避けられません。ただ、独自性の強いブランドや競合が多い EC モールなどの場合、ユーザーの好奇心を満たすことも重要になります。

    大規模なアプリ(CRM の役割を含む)になるほど、アプリ単体での効果測定は難しくなる

    大きな販売経路が複数立っているような大手企業の場合、アプリのメリットを享受するためにはサービスの品質が重要になります。

    セール時に大量のトラフィックをさばけるサーバー側の処理、できるだけ途中での離脱を防ぐ UI/UX 最適化やオンライン接客など、より高度な戦略を描き、実現する必要があります。そして開発すればいいわけでもなく、開封率・CVR が高くなるようなプッシュ通知の配信など運用にも気を使う必要があります。

    ある程度の予算も必要となるので、効果測定をしっかり行ない、売上だけでなく “利益” が上がっているのかを注視したいところです。しかし、販売チャネルが増えるほど売上が発生した場合の経路をたどることが難しくなります。

    機械学習を使った Web 接客・最適化のシステムは日々進化していますが、やはり顧客一人ひとりの購買に至るまでの行動すべてに理由をつけることは現実的に難しいという課題があります(EC を見たが実店舗に来訪して買った / 実店舗で見たものを EC で買おうと思っていたが忘れてしまい、後日全く関係のない通知で思い出して買った etc...)。

    ですので、大規模なアパレルビジネスでアプリを活用する際は、アプリのメリットを細かく考えるよりも「アプリというチャネルを機能させることでビジネス全体を成長させられる」という全体最適化の目線で考えることが重要になるのではないでしょうか。

    とはいえ、事業成長のためには自社 EC への注力は欠かせない

    EC サイトはスマホブラウザでの閲覧に比べ、iOS/Android アプリを利用するユーザーのエンゲージが高くなることがよく知られています。

    ほとんどのアパレル企業はオンラインの販売チャネルを持つことになりますが、選択肢は自社の EC アプリと大手モールへの出店の二つがあります。この二つの販路は当然ながら共存もできますが、投資の割合は考える必要があります。

    大手モールの場合はユーザー獲得のコストが低い(※モール内集客という SEO・SEM のようなローカルなテクニックは学ぶ必要がありますが)ため、まずはここで売上規模を一段押し上げるのが常套です。

    ただ、オンワードが ZOZO から撤退したことは大きな話題を呼びましたし、楽天が出店企業に送料を負担させるることにロコンド CEO が反発という動きも見られます。

    アパレル企業がスマホアプリとうまく付き合う流れをまとめると

    足場を固める時期:
    極力コストを絞る。実店舗および展示会等のイベントへの出展はよく吟味してから。自社アプリというよりは Instagram や note、YouTube など各種 SNS および Web サービス(の iOS/Android アプリ)をいちユーザーとして活用する。

     ↑↓ 状況を見ながら行き来することも

    拡大を狙う時期:
    販路を拡大する。自社で直接商品を売ることができる EC の体制を整えながら、大手モールとの相性を探っていく。SNS など Web サービスにおいても自社のブランドと相性のプラットフォームおよびストーリーを探り、徐々に最適化していく。
    競合もほぼ同じ施策をやっていると考えられるため、差別化するポイントを考える必要がある。

    さらにその先:
    大手モールへの出展をなくすことは現実的には(ユーザーの利便性を考えて)難しいが、他社に依存しすぎないように自社プラットフォームに注力する。 SNS など Web サービスは新規の顧客層へのアプローチなども視野に入ってくる。

    余談:コンサルティングが強い事業会社(SaaS)か、品質が安定している制作会社か

    ある程度の予算がある企業の場合、iOS/Android 対応をする上での予算の振り分け先としては上記の二択になると思います。

    SaaS 企業が新規顧客を開拓し終えるとコンサルティング方面に舵を切ることが多いため、CS 担当がついて詳細なレポートをもらいながら戦略を考えることが可能になります。

    あえて欠点をあげるとすると、SaaS 企業は全体最適の開発をするため、顧客一社ごとに “かゆいところに手が届く” ような開発面でのサポートがしづらくなります。そういった機能面での要件を満たしたい場合は、受託でのアプリ開発を行なっている制作会社に分があります。

    最終的には、自社の状況を鑑みて「手厚い人的サポートと機能面(企画・要件定義含む)でのサポート、どちらを受けられるほうがメリットがあるか」という判断になるかと思います。

    制作会社の選び方も難しいところで、ネットには諸説ありますが、個人的には就職・転職活動と同じで「目を養う」「慣れていないうちは変に “見極められる” ものだと思わないほうが大怪我をしない」だと思っています。

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