「iPhone/Androidアプリの開発・デザインは外注?社内で?」制作会社に委託するメリット・デメリット

今や、どんなビジネスをやっている会社だとしてもモバイル施策は必須となり、サイトのスマホ (タブレット) 対応やメールマガジンの配信とともにアプリの企画・開発も無視できなくなっています。
しかし、自社にアプリエンジニアがいるわけでもないし、外注するのも不安がたくさん。何より、外注してしまうとその後の運用や更新にも逐一コストがかかってしまうというのが不安に思われがちです。
そこで今回は、アプリを開発する少し前の段階として、開発を自社でやる場合と外注する場合のメリットについてまとめてみました。
「iOS/Android アプリ開発を外注した際の費用の相場や目安」に関する記事もあわせてお読みいただくと、より理解が深まるかと思います。
参考:「iPhone・Androidアプリの見積もり額が平均的に高い」と感じるのは何故?外注・委託時の開発費相場と値段の内訳とは
この記事の概要
自社で開発チームを抱えるのが理想だが、採用・育成のコストが外注費用を超えるリスクも
アプリに限らず、Web サービス全般においていえることですが、デジタルサービスは組織としていかに迅速に動けるか、フットワークの軽さがとても大切です。
顧客向けのアプリはもちろん、社内の業務効率化アプリであっても、当然のことながら社内に開発チームがある場合、使っていく中で出てきたバグ・要望・改善点に素早く対応できることは大きなメリットです。そして、社内のチームで改善やトライを繰り返した知見が貯まっていくことは、事業や会社の将来につながります。
とはいえ、制作会社ではない一般的な事業会社に開発チームを置くには、超えなければならないハードルがたくさんあります。
アプリではなく Web でも同じことがいえますが、エンジニアやデザイナーの採用においては、数年前から
- 圧倒的な売り手市場(スキルがある人材は寝ていてもオファーが来る)
- 週5日勤務・正社員という働き方を望む人の減少(複業・フリーランス化の流れ)
- 人気企業への人材集中(待遇の良さに加え、成長の機会にも恵まれる)
という状況が続いています。スカウトサービスを使った一括メール送信のような手法も嫌われ、イベントや勉強会でのダイレクトリクルーティング(良いと思った人材を直接口説く)が最適な手法になりつつあります。このような採用の難易度の高さから、採用業務自体を社外に委託する企業も少なくありません。
また、良い人材を採用できたとしても、組織に定着して長く働いてもらうためにはさらに
- 評価制度の整備(技術力の向上具合など、売上以外の部分での評価基準の制定)
- 勤務規定の最適化(朝型・遅刻厳禁派と、夜型・遅刻許してほしい派に分かれがち)
- 勤怠管理(フリーランス・週2〜3日勤務のスタッフを使う場合)
という課題があります。
開発やデザイン系は営業系の職種のように『この数値を達成したら昇給』という制度が通用せず、CTO やマネージャクラスの定性的な評価に依存することが多いです。そしてエンジニアたちが働きやすい環境づくりにもノウハウが求められるため、モチベーションを維持できずに離職率が高くなってしまうという悩みはよく聞かれます。
ですので、事業会社の中にアプリのチームがあるという理想的な状態をつくるためには、超えなければならない課題がたくさんあります。社内でデザイン・開発すること自体にデメリットはありませんが、「外注せずにコストを抑えるはずが、デザイナーとエンジニアの採用でかなりの費用と労力がかかってしまった」「スピード感をもってまわしていくはずが、各部署で問題が起きてチームがうまく機能しない」という本末転倒な状況に陥るリスクもあることは念頭に入れておくべきといえます。
「iOS/Androidへの理解」「デザインの定義」制作会社には委託するメリットがある?
アプリ開発やその後の運用・プロモーションなどを外注するメリットは当然、社内でスキルの高い人材を採用し、定着してもらうという苦労がなくなることです。
とはいえ、今や制作会社であってもエンジニアやデザイナーの採用・定着は難しくなっています (私たち BackApp も苦労しています)。もし「せっかく発注したのに、品質の低いアプリを納品され、売上に全くつながらなかった」ということになると、外注費用以上の “負債” を抱えることにもなりかねません。
参考:
「とりあえず iPhone/Android アプリも出そう」から始まる失敗——星1つのひどいレビューは想像以上に売上に響く
また、iOS アプリは App Store、Android アプリは Google Play での公開レビューがあるため、ユーザーからのリアルな評価が誰でも見られるようになっています。制作会社が手がけたアプリを教えてもらえれば、どれだけユーザーから評価されているのか (失敗していないか) をある程度把握することができます。
以上の前提を踏まえた上で委託先の制作会社の選び方を考えると、やはり「専門家としての価値と信頼感」が鍵になるのではないでしょうか。デザイナー・ディレクター・プロジェクトマネージャなどに、自社ではなかなか採用・定着できないであろうレベルの人材がいれば、(有名な会社ほど相場は上がりますが)外注するメリットは出てくると思います。
見るべきポイントとしては
- iPhone/Android の最新バージョンまで対応した実績がある
- 初歩的なミス・不具合によってネガティブな公開レビューがつかないような品質管理体制が整っている
などが挙げられます。スマホアプリは一度ネガティブな評判がつくと回復にコストがかかるため、「開発者としてやるべきことをしっかりやれている」ということは重要なのです。
さらにデザイン面で
- スマホサイトのデザインとはまた違う「アプリの UI/UX デザインの事例・トレンド」を理解しているか
- Retina 対応、Android の dpi (必要な画像の種類とサイズ) などを理解しており、スムーズに開発に進めるか
- アプリという “狭く深く” の世界観で、優良顧客との良い関係を築けるような独創的なデザインを生み出せるか
- もしくは、デザイナーのエゴではなく、きちんとした根拠があって “売上につながるデザイン” を考えられるか
なども重要です。「デザイン(品質)にこだわる」と言うことは容易いですが、定義がぼやけたままただコストだけを割いているだけでは、思うような効果は出ません。
また、アプリも制作会社も決して万能ではないため、「お客様の現在の課題に対して何を提供し、何を解決するのか」をハッキリ定義しなければ迷走してしまいます。「アプリをつくることであれもこれもうまくいく」というメリットばかりを打ち出している企業には、しっかりと「何ができるのか」「弱い部分はどこか」と詳しく話を聞くことをおすすめいたします。
外部サービスの利用は費用の相場が安い分、スマホアプリ事業を試しやすいが…
Web サイトをそのまま表示するなどシンプルなつくりで安価にアプリを開発するサービス、必要な機能を選ぶだけで自社アプリが安価に提供してもらえるサービスなど、オーダーメイドではない簡易的なアプリを開発するサービスも増えています。
外部サービスは、自社で開発チームをつくったり、制作会社に頼んだりするよりは遥かにコストが安く抑えられることが最大のメリットです。デザインも素敵なテンプレートの中から選ぶことができるなど、費用対効果の面では一番いいと感じられるかもしれません。
外注費を抑えて安くアプリを始めてみるという選択は、自社の状況によっては有効となることもあります。ですので、制作会社と同様、外部サービスにおいても「最近の事例で、全体的にどれだけ高い評価を受けているか」を見てみることをおすすめします。
ただ、「今はあまりコストをかけられないし…」という状況でスモールスタートを切る際には、「そもそも今、アプリをやるべきなのか」という視点を一度持つことをおすすめします。 当然ですが、「iPhone/Android から自社の製品・サービスに触れている顧客」というスマホユーザー向けの施策としては、少額でアプリを開発するよりも、Web や SNS に注力するほうが売上に貢献できるということもあるのです。
“アプリ風 Web サイト”である「PWA」の台頭は外注・内製で悩む企業にとってメリットに?
近年では、Google が「Web サイトでありながらアプリのような体験ができる」ことをウリに提供している PWA に、iOS が少しずつ対応してきていることも注目が集まっています。
ただの Google 独自規格ではなく iOS/Android 両方の端末で使えるようになりつつあるので、「社内に知見のないネイティブアプリを開発(外注)する前に、まずは Web の改善として現行サイトの PWA 化(内製)を」と検討できる時代が来るかもしれません。
PWA および PWA 化しやすい SPA サイトの開発自体は経験者が少なく、内製するとしても労力はかかりますが、iOS/Android という二つの別技術を一から習得するよりは負担が少ないといえます。
現状は iOS でプッシュ通知が使えないなど大きなデメリットも抱えています。しかし、Web サイトでアプリの運用に近い経験が積めるようになると、外注するにしても内製組織を構築するにしても負担に耐えられるだけのビジネス規模に成長させてから臨むことができるようになるかもしれません。
参考
iPhone/Android アプリ開発の内製・外注それぞれのメリットまとめ
- 社内でアプリのデザイン・開発チームをつくるのがベストであることは間違いない
- とはいえ複業・フリーランス化の流れもあり、エンジニアやデザイナーの採用・定着は困難
- 外注できる箇所やフェーズに応じて他社の力を借りることで事業がスムーズに進むことも
- 委託先となる制作会社は「専門家としてどんな価値があるか」という視点で判断
- テンプレートでのアプリ提供サービスは、弱い部分やリスクも把握しておく
- アプリは「とりえあえずやってみる」で失敗すると大きな負債になりがちなので、外注先を選ぶ際や事業を始める際は慎重に
スマホアプリは、Web サイトや SNS と比較すれば開発にも運用にもコストがかかります。
制作会社がこういった話をすると「アプリは難しいからという理屈で、仕事をもらおうとしてるんでしょ?」と思われるかもしれませんが、言いたいことは「アプリ開発や、開発チームの内製化はタイミングが重要」だということです。
BackApp では、「アプリ事業は大手がやること (自社には関係ない)」という負のイメージを払拭し、アプリ制作会社として単なる “外注先” ではなく “ビジネスパートナー” として信用していただけるよう、企画・コンサルティングの段階からお力になれるよう努めております。
ご不明点、相談したい点などがありましたら、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。
BackApp のメルマガを購読しませんか
このような記事を定期的に読みたいと思っていただけましたら、ぜひご登録ください。
BackApp は、アプリ開発に特化して成長している組織です
「副業」を始めてみませんか?
BackApp では土日のみの副業・複業から社員、パートナー提携など、幅広い形態で開発体制を強化しています。ツールをフルに活用したフルリモートワークを実現しており、中には海外を旅しながら開発をしているメンバーも。コミットの履歴が残るエンジニアだからこそ、煩わしい「管理」から解放されます。
iOS/Android どちらも採用強化中ですので、ご興味のある方はご一読ください。
アプリ開発の各種相談承ります
「企画から開発までトータルで外注したい」「事業側は自社でやりたいので、開発のみ委託したい」など、御社の状況に応じてアプリの企画・開発を承ります。当社の開発事例や業界の傾向・最新事例なども含めてお話しますので、お困りのことがあればぜひ一度ご相談ください。
※働き方改革・リモートワーク推進企業のため、Skype, apper.in などオンラインでの商談も歓迎です